囲について

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【みとし村事象についての報告】

(1939.6.2)

 みとし村の神:おみとしさま

 特徴:村人を見ている


 みとし村には【囲】という奇妙な風習があり、村人は死後、おみとしさまになってもそれを続けている。


 囲は、1年ごとに村人が投票で1人を選び、迫害するというもの。


 迫害の対象者が出た家は、次の投票が終わるまでの1年間、対象者を座敷牢に閉じ込めなくてはならない。これは対象者を、村人とおみとしさまから守るためと伝えられている。

 対象者が家の外に出てしまった為、村人から暴行を受けたり、おみとしさまの精神干渉を受けて錯乱した事例が、いくつか記録に残されていた。


 たとえ、対象者に身寄りがなくても、対象者が幼児や病人を抱えていて、他に世話ができる人間がいなくても、家の外で村人に会えば危害を加えられ、おみとしさまと目が合えば精神が侵される。


 囲が生まれた原因には、村人が不平不満の捌け口を作ろうとしたことや、対象に選出される恐怖により、治安を維持しようとしたことなどが考えられる。


 しかし、選ばれる人間は、孤児だったり、高齢者だったり、病人だったりと、社会的に弱い立場なことが多い傾向にある。



(追記)

 1960年までに囲は廃止され、対象者は選出されなくなり、囲に関するおみとしさまの精神干渉も報告されなくなった。


 しかし、村民達は無意識のうちに対象を作り出してしまっている。方法は間接的な陰口や陰湿な嫌がらせなどに変わり、対象者を精神的に追い詰めている。村民達は対象を攻撃することで団結力を高めているようだ。


 加えて、一年という区切りがなくなったため、対象は不規則な周期で入れ替わっている。

 こうした風習がなくならないのは、みとし村が山間部にあり、世間から隔絶されている為か……。


 今後、交通手段や情報伝達手段が増えることで、村民が新しい価値観を取り入れ、囲に基づいた風習がなくなっていくことを期待する。




(追記)

 2010年。囲を下敷きにした風習は、洗脳のような形で残っている。違和感を感じる村人もいるようだが、村の仕来りとして不満を呑みこんでいるようだ。



(追記)

 2015年。風習途絶えず。


 村は過疎化が進んでいる。みとし村事象の調査頻度を増やす必要がある。


 おみとしさまへの信仰が途絶える前に、神虫をこの村にお招きする。

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