第13話 妖着

第13話


『これならどうだ、炎陣八つ裂き大車輪!!』


ふん、その程度なら幾ら放っても意味は無いぞ、輪入道!!


『か〜ら〜の〜高速回転だ!!』


なっ、俺の周囲を回り始めたぞ、コイツ!?


いや、そういう事か!!


『単体なら簡単に防がれるだろうこの技も、四方八方からお前を襲えば脅威だろう!!』


全く、グウの音も出ねぇ………


今は普通に対処できるが、少しずつ俺の体力は削れていくだろう。


唯でさえ、本来ならカウンター等の搦手じゃないと捉えられないスピードなのだ。


必ず、俺にあの炎の鋸が当たる時が来る。


そして、それが俺の終わりを告げる鐘にもなるだろう。


はぁ、参ったな………


心底愉しいじゃねぇか、輪入道!!


「近付いてみるとか、どう思う藍月?」

『────無駄、だろうな。距離をあの速度で取られ、同じ攻撃をしてくるだろう。』


だよなぁ………


────詰みだな、コレ。


俺の鈍さで、どう輪入道の速さを攻略した物か………


『どうした、どう足掻いてみせるんだ、咎人よォォォ!!!』


煩いなぁ、もう………


今必死に考えてるんだから、余計なノイズを走らせてんじゃねぇよ………


「ちっ、ダメ元でやってみるか!!」


コレで駄目なら、死ぬまで別の作戦を考えよう!!


『ふむ、そう来るか!!』


あっ、逃げやがった!!


ちくしょう、やっぱり速い────


「くそっ、待ちやがれ!!」

『くははは、鈍い!鈍いぞ、咎人!!その亀の様な鈍さでは一生我には追い付けぬぞ?』


あの野郎、俺をおちょくってやがる!!


もういっその事、バイクに乗って追いかけるか?


いや、俺の自慢のバイクが酷い有り様になるな、うん………


『ははは、亀め。諦める事を勧めるぞ?』


ちっ、あの輪っか爺め………


速すぎて追いつけねぇ………


そのせいで言い返せないのが、余計に腹立たしいぜ。


『────また来るぞ、奴が。』

「えっ、また?」

『見つけたぞ、輪入道!!』


マジで来たな、アイツ………


『ふん!!弱い癖にしつこいぞ、片車輪!!』

『がはっ────』


あの怪異、また吹き飛ばされてるな………


速さ自体は輪っか爺と同じなのに、火力が足りていない。


同じ炎を纏った車輪なのに、何が違うんだろうな………


『はぁ、もう面倒だな。余興は終わりだ、全てを燃やし尽くしてやる!!』


ちっ、またを飛ばしてくるつもりか!?


『炎陣全壊大車輪!!』


ふん、それ位なら何度でもぶった斬ってやるぜ、輪入道!!


『そんな炎、俺が掻き消してやるわ!!』


まだ居るんだな、アイツ………


多分、押し負けて死ぬよな………


────仕方ないか、うん。


『お人好しだな、お主………』

「────目の前で死なれるのが嫌なだけだ。」


────目の前以外で死ぬのなら、助けねぇよ、基本。


☆☆☆☆☆


『さて、どうなったかな?まぁ、あの咎人は生きてるんだろうが………』


ああ、その通りだぜ、輪入道。


『片車輪の方は死んでくれてるとありがたいな。最も、奴の火力で我が攻撃を防げるとは思わんが?』


何だと、輪入道!!


いや、当然だろ………


どういう意味だ、咎人!!


そのままの意味だよ………


はぁ!?


ああ!?


────アレ??

────アレ??


「『どうなってるんだ、コレ!?』」


何か俺の頭の中に藍月以外の声が聞こえるぞ!?


俺の頭の中に、何故か周りをウロチョロしてた咎人の声が聞こえるぞ!?


『お主が片車輪を纏ったからな………』

「『はい!?』」


どういう意味なんだ、それ!?

どういう意味なんだ、それ!?


『まぁ、お主等単体じゃ勝てそうにないからな。どうせ、藍青が助けたんだ。そのお礼としてこき使っても構わんだろう?』


確かに!!

文句あるに決まってるだろう!!


『それが我の使える妖着という術だ。まぁ、せいぜい上手く使え。』


了解だ、ありがとうな藍月!!

おいコラ、勝手に進めるな!!


「『格好良いな、コレ。藍月が爪仕様になってやがる………』」


しかも、身体の奥底から熱い物を感じる。


もしかして、炎を使えるのか?


「『おお、炎が出る!!』」


ふふ、どうだ凄いだろう?


おお、めっちゃ凄い!!


それに………


「『お前の速さなら、輪入道に追いつけるだろう?』」


は、速い!!


めっちゃ速いな!!


バイク並の速度だな!!


お前、バイク持ってるのか?


おう、持ってるぞ。


なら、後で取り憑かせて貰えるか?


おう、あの輪入道を倒したなら!


ふっ、なら文句など今は取り下げよう。


「『行くぞ、輪入道!!』」

『なっ、姿が変わった!?何が一体────』


よし、当たった!!


やっと、マトモに当てれたぞ、輪入道!!


『な、何故なんだ、その速さは!?どうして、俺よりも速く動けるんだ!?』


さぁな?

さぁな?


唯、1つだけ言うとするなら………

唯、1つだけ言うとするなら………


「『お前が鈍いんだよ、亀にでもなったか、鈍間入道?』」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る