第12話 片車輪

第12話


『────炎陣全壊大車輪!!』


奴がそう叫んだ瞬間、周囲の熱気が増していくのを感じた。


それと同時に奴は高速回転を始める。


アレ、目を回さないんだろうか?


『だから、呑気な事を考えるな!!大きい一撃が来るぞ!!』


いや、それは理解わかってるんだけどさ、何か気になって………


『お主、重箱の隅を突つきまくる嫌なタイプだな?嫌われるぞ!!』


いや、酷くない?


そんな奴等、ネットじゃ溢れまくってるぞ?


『ネット?ああ、あの薄い箱で見れる物か。確かに悪意は渦巻いてそうだったが………』


そうそう、それ。


しかし、一目見ただけで悪意が渦巻いてそうとか理解わかる物なんだな………


酷い所は現代版蠱毒だからな………


『余所見をしている暇はあるのか、咎人!!』


あっ、ヤベっ─────


☆☆☆☆☆


『ふはは、どうだ我が炎は!一度マトモに喰らえば、骨も灰塵になるからな!!』

「へぇ、そりゃ怖い………」

『────ほう、我が炎を喰らって無事とはな。驚いたぞ、咎人よ………』


いやぁ、めっちゃビビったわ………


車輪状のデカい炎の塊が目の前まで来てたから、とっさに藍月を振って正解だった。


綺麗に炎を斬り裂いて、横に弾いてくれたからな………


まぁ、周囲の熱で焦げるかと思ったが………


『ふむ、火力では我の負けか………』

「みたいだせ?アレが最大火力なら、俺には通じない。」

『油断するな、藍青。速さなら、圧倒的に奴の方が上だ。』


理解わかってるさ、藍月………


バイクでギリギリ追いつける速さのアイツに追い付くなんざ、無理な話だ。


今の内に近付いて、斬り殺さないと────


『────ッ!?藍青、避けろ!!別の奴が凄い速さで来てる!!』

「なっ!?」


藍月がそう叫んだ瞬間、俺の目前に炎の塊が降り注ぐ。


あっ、危ねぇ………


藍月が警告してくれなかったら、俺はこんがりよく焼けたステーキになってた所だ………


『見つけたぞ、輪入道!!』


この声の主が、が俺の目の前に炎を飛ばしてきた別の怪異か!!


一体、どんな奴が………


「────女?」


いや、唯の女ではなかった。


炎を纏った木製の台車らしき物に乗った女だったのだ。


何で燃えないんだろう、アレ?


しかも、よく見ると車輪が片方しか無い。


よくアレで人を乗せて動けるな………


『────片車輪かたわぐるまだな。』


────ああ、車輪が欠けているから片車輪なのか。


でも、今じゃって差別用語らしいぜ、藍月?


『そうなのか?なら、別名の片車輪かたしゃりんとでも呼ぶがいい。』


そうするよ、色々と聞かれたら面倒そうだからな。


『ちっ、また貴様か!性懲りもなく、また敗れに来たか!!』


どうやら、あの片車輪は輪入道の知り合いの様だ。


────まぁ、仲良しという訳じゃ無さそうだが。


『お前が逃げてるの間違いだろ!!さぁ、決着を着けようぜ!!』

『鬱陶しい、炎陣八つ裂き大車輪!!』

『ぎゃふん!?』


そ、即落ち2コマ!?


もうそうとしか言い様がない勢いで、吹き飛ばされていく片車輪。


何しに来たんだろう、アイツ………


『余計な邪魔が入ったな。さぁ、戦いを続けるとしようか、咎人!!』


えぇ、この壊れた空気でそれを言うのか?


────俺、もう愉しめる気がしねぇんだけど?


『さぁ、逃げられるかな、炎陣網!!』

「うおっ、炎の網かコレ!?」


こんな物、簡単に斬り裂いて────


『それは囮だ、藍青!!』

「えっ────」


藍月の言葉が頭に響いた瞬間、俺の身体は衝撃と灼熱に襲われる。


あ、熱ッ────


焼ける、身体が焼けていく────


「はぁはぁ、コレが本当に炎を喰らった時の火傷の痛みか………」


何かに轢かれた様に燃えた痕が付いてるって事は………


『お主はあの速さで繰り出される、単純な体当たりを喰らったのだ。』

「最早、突進かすてみタックルだろ………」


痛い、痛いなぁ………


成る程、あの速さから繰り出される攻撃は厄介だなぁ………


前言撤回するよ、輪入道………


────ちゃんと、愉しくなってきた。


『ははは、炎陣網!!』


また炎の網で来るか!!


おそらく、あの網は先程みたいな囮だろう。


だが、防がなければ、ソレ+体当たりが飛んでくる。


全く、選択肢を増やしやがって………


「まぁ、防ぐしかないよな………」


先程と同じ様に炎の網を切り裂く。


そして、その瞬間に────


『なっ!?』

「よし来た!!」


、奴は体当たりしに来てくれた。


俺は其処を狙って、刃を置いておくだけで良い。


さぁ、自らの速さで切り裂かれろ、輪入道。


『くっ、そう上手くは行かんぞ!!』

「ちっ、熱ッ!?」


あの野郎、直前で炎をジェットエンジンみたいに噴射しやがった!?


『くぅ、痛い………痛いぞ、咎人ォォ!!』

「はぁはぁ、なら大人しく殺されてろよ、輪入道。」


そっちの方が安らかに眠れただろうぜ?


────さて、どうした物か。


あのカウンターモドキはもう通用しないだろうし………


何か良い手とかある、藍月?


『自分で考えろ、最後までな。』


厳しいねぇ………


────まぁ、そっちの方が愉しいもんな!


「来いよ、輪入道。次はどんな手で俺を愉しませてくれるんだ?」


続く

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