第1章 ③爆走!炎輪バイク!!

第11話 輪入道

第11話


────これは少し先の未来の話。


「くそっ、待ちやがれ!!」

『くははは、鈍い!鈍いぞ、咎人!!その亀の様な鈍さでは一生我には追い付けぬぞ?』


ちっ、あの輪っか爺め………


速すぎて全く追いつけねぇ………


『見つけたぞ、輪入道!!』

『ふん!!弱い癖にしつこいぞ、片車輪!!』

『がはっ────』


あの怪異、また吹き飛ばされてるな………


速さ自体は輪っか爺と同じなのに、火力が足りていない。


同じ炎を纏った車輪なのに、何が違うんだろうな………


『はぁ、もう面倒だな。余興は終わりだ、全てを燃やし尽くしてやる!!』


ちっ、またを飛ばしてくるつもりか!?


『炎陣全壊大車輪!!』


☆☆☆☆☆


あの窮鼠とかいう化け鼠を倒した日の後日、俺は疲れきっていた………


「うぅ、何であんなに怒ってたんだ、竜崎の奴は?」


次の日、俺の部屋で目を覚ました竜崎は、リビングのソファで寝ていた俺を叩き起こし、顔を洗わせた上に歯を磨かせ、作った朝食を食べさせた後、物凄い剣幕で狐の事を問い詰めてきた。


全てを話した後、プルプルと震え始めて完全にフリーズした………


────かと思った瞬間、急に顔を真っ赤にして怒り始めた。


顔が怖かったせいで、殆ど何を言っているのか聞き流してしまったが………


「何でなのでしょうか?」


狐の奴も理解わからないのか?


なら、迷宮入りだな、こりゃ………


『鈍感主と鈍感従者め………』


誰が鈍感だ、こら………


この一辺で、俺ほど敏感な奴は居ねぇぞ?


『────そういう事にしておこう。』


おいおい、何だよその含みのある様な言い草は………


────まぁ、良いか。


『────ん?珍しくな、こんな時間に現れるとは………』


そんな風に言うって事は………


『日が完全に出ている刻だが、怪異が現れたぞ藍青。だが、少し遠いな………』


遠い、遠いのか………


なら、を使うとするか………


よし、直ぐに車庫へ行くとしよう!!


『車庫?馬車でもあるのか?』


はは、それよりも速くて安全な物があるんだよ、藍月。


『ほう、それは是非見てみたいな………』


ふふ、見たら驚くぜ?


そんな事を思いながら、車庫へと走っていく。


重いシャッターを開け、其処に置いてある愛機へと目を向ける。


ふふ、どうだ藍月?


『────コレは何だ?鉄の馬か?』


もしかして、バイクを見るのは初めてか?


『バイク?』

「現代の移動手段だ。目茶苦茶に速いぜ?」

『成る程、かなり進んでいるのだな、今の時代は………』


まぁ、お前がいつの時代の奴かは知らねぇが、時代はどんどんと加速する様に進んでいくからな………


たった数年でDSやWiiが淘汰され、Switchに一新される位にはな………


「バイクの免許、持っていたのですね、お兄さん。」

「まぁな。有ると便利だと思ってな………」


最近行ってなかったし、怪異を倒したらツーリングにでも行くかね?


「確か、鍵は………在った!」

「そんな所に置いてあるんですね、覚えておかないと………」


何で覚える必要があるんだ?


お前も乗りたいのか?


免許持ってるなら、俺が必要な時以外は乗っても良いけどよ………


「じゃあ、行ってくる。家の事を頼んだぞ、狐。」

「はい!」


はてさて、どんな怪異が居るのやら?


────愉しくなってきたな、藍月!!


☆☆☆☆☆


「ここら辺か、藍月?」

『いや、違う。どうやら、既に遠くへ行っている。』

「またか!どうやら、件の怪異もバイク並に速いらしい………」


先程から、藍月が掴んだ位置に辿り着いても、件の怪異が速すぎて逃げられるの繰り返しだった。


ちくしょう、厄介だな………


これじゃ、イタチごっこだぞ?


『────むっ、奴が此方に来ている!!気を付けろ、藍青!!』

「成る程、了解!!」


はてさて、鬼が出るか蛇が出るか………


────まぁ、速いから蛇かもしれねぇがな。


『ふははは、貴様が最近生まれたとかいう咎人か!!』


そんな感じで高笑いしながら現れた怪異を見て、俺は思わず固まってしまった………


おいおい、何だその姿は………


「輪っか爺?」

『輪入道じゃ。いや、そう言いたい気持ちは解るがのう………』


火が付いた輪っかの真ん中に、爺の顔が張り付いていた。


────いや、爺の顔というか頭から輪っかが生えてるのか?


しかし、輪入道か………


坊主みたいな顔だから、輪入道なのか?


『まずは小手調と行こう!!炎陣八つ裂き大車輪!!』


輪入道がそう叫んだ瞬間、奴が高速で回転しだす。


そして、鋸状の炎を奴は飛ばしてきて………


「いや、これ唯の炎版八つ裂き光輪じゃねぇか!?」


いや、いっぱい飛んできてるから、ウルトラギロチンかも?


『何変なの事を考えている!!早く防がないとナマスみたいに斬られるぞ!!』


はっ、しまった!?


サンキュー、助かったぜ藍月!!


「おお、凄いな藍月!普通に炎を弾けてるじゃねぇか!!」


正直、怪異の炎だから溶かされる心配をちょっとだけしてたんだよ………


『はっ、これしきの炎では我を溶かせんよ。我を溶かしたいなら、鳳凰レベルの灼熱を持って来い!!』


へぇ、鳳凰も居るんだな………


『むぅ、難なく防ぐか!なら、この技を喰らうが良い!!』


ちっ、今度は何を飛ばしてくる気だ!!


『────炎陣全壊大車輪!!』


続く


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