傷付いた狐娘を助けたら、化け物になってしまった件〜気が付いたら第３勢力扱いされていました〜

第5話 俺が咎人で高校生

第5話

「なんて、言ってみたのは良い物の………」

『待て、待て、待てェェェ!!!』

「それと同じ位に怖いなぁ、もう!!!」

俺は全速力で逃げていた。

というか、逃げないと殺されたアイツ等みたいに一瞬で消し飛ばされるわ!!

正直、立ち向かったとしても瞬殺される自信有るね!!

いやぁ、勝てる気がしないから化け物なんだなぁ………

『ちょこ、ちょこ、猪口才なァァァァ!!!』

「猪口才で結構だ!!お前から逃げ切れるならなぁ!!」

いや、まぁ、無理だとは思うけどな………

巨大の癖に、凄い速さだ。

クマかよ、クソ化け物め………

俺のスタミナが尽きた瞬間、皿に並べられる未来しか見えねぇよ………

（────を取れ、■■。）

「ちっ、コレも夢と同じかよ!!」

またもや、変な声が聞こえてきた。

この声は、あの変な悪夢で聞いた物と同じ物だ。

全く、さっきから何が何やら………

「お兄さん!!」

「ああ？」

────そんな中、女の声が響いた。

お兄さんって俺の事か!?

ていうか、何でこんな時に………って!!??

「何で此処に戻ってきたんだ、コスプレ嬢ちゃん!?」

お前もこの化け物に殺されちまうぞ!?

「助けに来たんです、お兄さん!!喰らえ、〔木枯らし手裏剣〕!!」

「うおっ!?」

彼女が変な言葉を叫んだ瞬間、彼女の手から木の葉みたいな物が銃弾の様に飛んで行った。

────いや、手裏剣と言っていたから刃物なのか？

『こざ、こざ、こざ、小賢しい真似をしやがってェェェ!!』

「そんな、効いてない………」

「即落ち２コマやめーや!!」

このポンコツコスプレ嬢ちゃんめ!!

余計に手間が増えたじゃねぇか!!

「ほら、逃げるぞ!!」

「きゃっ、手を握って!?」

「恥ずかしがってる暇はないだろ!!」

恥ずかしがったせいで死ぬよりは、１０００倍もマシだろうが!!

「しかし、お嬢ちゃんや死んだ奴等、あの化け物も何なんだ!?」

「わ、私は咎人で、私を追いかけていたのは陰陽集の陰陽師達です。そして、現在進行形で私達を追いかけてきているのは怪異と呼ばれる存在です!!」

「そうか！陰陽師しか理解（わか）らん!!」

聞いた事がある言葉も一応は混じってるが、俺が思ってる奴と当て嵌まってるかも疑わしいし、何が何だか………

まぁ、超常的な物なのは理解（わか）ったよ………

（────剣を取れ、■■!!）

くそっ、まただ………

「剣を取れって、剣が何処に在るんだよ!!」

「えっ、剣？」

「少し変な話をする事になるがな、さっきから変な幻聴が聞こえてくるんだよ。剣を取れとかさ………」

「そ、そんな、ま、まさか………」

「なっ、おい!?何で急に止まって────」

止まったら、直ぐにあの化け物に追い付かれちまうぞ!!

「出会えた………やっと、出会えた!!」

「出会えたって、誰にだよ!?」

「お兄さん、貴方にです！やっと、この刀を託せる人に出会えた!!」

「はぁ!?刀って────」

彼女が懐から出してきた剣を見て、俺は固まってしまった。

こ、コレは………

────あの悪夢で見た刀!?

な、何で、コレをこのコスプレ嬢ちゃんが!?

「さぁ、早く抜いてください!!この刀は、お兄さんを選んだんです!!」

「いや、そんな事を言われても………」

「早く!!」

「くっ………ああもう！理解（わか）ったよ、こんちくしょうが!!」

訳が理解（わか）らない事だらけだが、抜いてやるよ!!

それで何が起こっても、俺は知らん顔するからな!!

『────やっと抜いたな、藍青。』

何で、俺の名を────

『喚べ、我の名を。叫べ、我の名を。我が名は────』

その先の言葉は聞こえなかった………

────だが、俺は直ぐにコイツの名を理解した。

よく理解（わか）らない感覚だった………

────まるで、魂が叫んでいるかの様な感覚だ。

そして、ソレはこう叫んでいた。

「『餓龍藍月（ガリュウランゲツ）』!!」

「す、凄い。本当にあの刀の力を………」

その名を喚んだ瞬間、激しい力の奔流が俺の身体中に沁み入っていった感覚がした。

何だ、コレ………？

何となくだが、目茶苦茶強くなった気がしてしまう………

────俺は一体、どうなってるんだ？

『この、この、この、力は咎人ォォォ!?』

あっ、ヤベ。

凄い体験をしてたせいで、うっかりコイツの事を忘れかけてた。

────待て。

もしかして、この刀を使えば………

『左様。さぁ、振るえ。今は唯、奴に目掛けて刀を振り下ろすだけで良い。』

成る程、了解。

刀を振るった経験なんてほぼ無いからな、楽で良いわ………

『死、死、死、死ねぇェェェ!!』

「やだね!!」

迫り来る化け物に目掛けて、真っ直ぐに刀を振り下ろす。

その瞬間────

『死、死、死』　『死、死、死ィィィ？』

この化け物は綺麗に両断されていた。

おいおい、強過ぎだろ？

「さ、流石です、お兄さん!!『餓龍藍月』に選ばれただけはありますね!!」

「よ、よく状況が呑み込めねぇが、助かったって事で良いんだな？」

「はい！」

そうか、助かったか………

「つ、疲れたぁ………」

色々と聞きたい事、知りたい事は沢山ある。

だが、今は………

────助かったという事実を噛み締めておこう。

────何となく、そう思った。

続く