第1章 ②歪み始めた人生

第6話 世界観の説明は実際必要

第6話


『あ〜疲れてる所に悪いのだが………』

「ん?何だ、藍月?」


疲れてる所に悪い?


そう思うなら、少し黙っててくれ。


俺は本当に疲れてるんだ………


『餓龍も付けろ、痴れ者が。いや、そんな事は良い。』

「何が言いたいんだ?」

『追手がそろそろ来る頃だろう。捕まったら面倒だから、其処の女を連れて逃げろ。』

「なっ、それを先に言えよ!!」

『前置き時点で会話を止めようとしたのはお主であろう?』


そうだったな!!


ちっ、まだ身体に鞭を打たなきゃ駄目なのかよ、こんちくしょうめ!!!


「ほら、逃げるぞコスプレ嬢ちゃん!!」

「へっ!?………あっ、は、はい!!」


☆☆☆☆☆


「はぁはぁ、着いた………」

「はぁはぁ、此処がお兄さんのお家………」

『ふむ、良い家だな。築何年だ?」


知るか、俺の死んだ爺さん(享年75歳)に聞いてくれ!!


「ただいま、竜崎!」


あれ?返事が無いな………


何か有ったのだろうか………


「竜崎、とは誰ですか?」

「ちょくちょく俺の家に出入りしてる知り合いだ。何故か懐かれてな………」

「へぇ、そうなのですね………」

『恋物語の波動がするな!』


しねぇし、生まれる訳がねぇよ………


────そもそも、恋愛なんてもう懲り懲りだ。


をする位ならな………


「ん?何だ、コレ?書き置きか?」


無駄に広い家の中を探そうとしていると、リビングに置いてあるテーブルの上に紙が置かれてあった。


其処に書いてある文章を読むと………


『遅い!貴方は何でお使いすらマトモに出来ないの?そのせいで貴方に夜ご飯が作れなくなっちゃったじゃない!まぁ、急用のせいで家に帰らなくちゃいけなくなっただけなんだけど。ごめんなさいね、約束破っちゃたわ。

後で埋め合わせはちゃんとするから、待っててね♪追伸、横着してカップラーメンとかを食べない様に、栄養バランス大事!!』


な、長い………


説教の部分を全部抜いた後の内容だけで充分だろ、コレ………


しかし、色々と巻き込まれたせいで、食材を全く買えてないんだよなぁ………


────アイツから、どう誤魔化せば良いのだろうか?


「コレ、通い妻の方からの手紙ですか?」

「はぁ?んな訳ないだろ。そもそも、俺は生涯独身を貫くつもりだ。」

『若いのに擦れてるのう………』


はっ、交尾すら出来なさそうな刀は黙っとけ。


「まぁ、今回は非常事態だ。カップラーメンで済ますとしよう。」


絶対にバレて怒られるんだろうけど、その時はその時だ。


「さて、直ぐにお茶を出すから、リビングで待っててくれ。」

「は、はい!」


☆☆☆☆☆


「ふぅ、やっぱりカップラーメンは美味い。世界に誇るべき日本の遺産だな………」

「は、初めて食べましたけど、美味いんですね、カップラーメンって………」

『この様な蕎麦が有るとはな………』


カップラーメンを初めてとか、良い所のお嬢様なのかな、コスプレ嬢ちゃんは?


というか、カップラーメンを蕎麦って表現する奴は初めて見たよ、餓龍藍月………


お前、相当古い時代の奴だな?


『塩辛い蕎麦か、世の中は我が居た頃からどんどん進んでるのだな………』

「味、理解わかるのか?」

『お主の認識は我の認識となる。つまり、お主の味覚で味わってるのだ………』


へぇ、そうなのか………


まるで、取り憑かれてるみたいだ………


『実際、それが一番当て嵌まる言葉だろう。お主はもう我の所有者。お主が死なない限りは、何処へ行っても我はお主を追いかけ続ける。』


怖ぁ、ストーカーかよ………


「まぁ、良い。俺に色々と教えてくれよ、お前の事を。コスプレ嬢ちゃんの事、化け物の事、陰陽集とやらの事、咎人の事をな。」


マジで聞きたいよ、ここら辺は………


正直、厨二病が好きそうな言葉のオンパレードにしか聞こえねぇもん………


「はいはい、私も教えます!」

「うん。まぁ、君もお願いね………」

「はい!そもそも、この世界には怪異と呼ばれる存在が居ます!!」

「怪異か………妖怪じゃないのか?」

「それは別名ですね!海外ではモンスターとか、フェアリーとか言われています!!」


よくある設定っぽいな、今の所………


まぁ、モノホンの化け物を見た後だし、信じるしか無いんだが………


「で、それを退治する者を日本では陰陽師と呼び、それ等が所属している組織を陰陽集と呼んでいます!!」

「へぇ、妖怪物とかでありそうな奴だな。」

「はい!私もそう思いました!後、個人的には鬼道衆の方が良いと思います!!」


ゲ×3の鬼◯郎じゃねぇか………


いや、俺も世代だから気持ちは理解わかるんだけども………


「そして、咎人とは主に2つの存在を意味します!」

「2つ?」

「はい!1つ目は人間と怪異が融合した怪物の事を。2つ目は私達の様な怪異の血を受け継ぐ存在ですね!」

「それ、コスプレじゃなくて本当の狐耳って事か!?」

「そうです!………触りますか?」

「触る!!」


うわっ、フワフワ………


柔らかくて、気持ち良い………


「あっ、きゃっ、うっ♡」

「何だコレ、ずっと触ってられる………」

『盛るな、お主等。』


盛ってはねぇよ!?


そもそも、こんな触り心地の良い耳が悪いんだ!!


俺は悪くねぇ!!俺は悪くねぇ!!!


「おっ、おっほん。で、では、本題を話しますね。お兄さんを選んだ刀は『餓龍藍月』。妖刀と呼ばれる、咎人によって作られた最強の武具となります。」


続く

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