第3話 同級生と買い物と不審者
第3話
「ふぁぁ、今度はよく寝れた………」
あの後、サボったは良い物の、何もやる事が無かった俺は直ぐに寝てしまった。
まぁ、有ったとしても、やる元気の方が無かったから、同じ結末になりそうだけど………
「今度は変な悪夢は見なかったな………」
その事に、心底安堵した。
昔から悪夢を見ると、次に寝た時に同じ悪夢やその続きを見る質だったので、何度か苦しむ覚悟は出来ていた。
杞憂で良かったよ、本当………
〔ピンポーン♪〕
「ん?チャイム、誰だ一体………」
俺の家に用か有る奴なんか、もう居ない筈なんだが………
────いや、居たな。
思い当たる奴が1人だけ………
〔ピンポーン♪ピンポーン♪♪〕
「はいはい、今行くよ………」
少し面倒に思いながらも、玄関へと向かう。
そして、扉を開くと案の定な奴が立っていた。
「よぉ、竜崎。何か用か?」
「何か用、じゃないわよ!!貴方が急にサボるから、私がわざわざプリントやノートを渡しに来たのよ!!」
コイツの名は
まぁ、俺が高校生になってから知り合った変な奴だ。
何かやたら構ってくるし、目茶苦茶距離が近い謎の女なんだよなぁ………
友達はちゃんと居るのに、俺を優先してる感が強いし、何がしたいのだろうか?
「成る程、わざわざサンキューな。」
「ふん、感謝しなさいよね!こんな事をするのは貴方だけなんだからね!」
「だな、いつも感謝してる。」
「そ、そう?なら良いのよ………」
「じゃあ、またな!明日サボる気がなかったら、学校で会おうな。」
さて、コレを全部見た後は直ぐにまた寝ようかな…………
「ちょっと待ってよ、藍青!それだけなのは可笑しいでしょ!!」
「えぇ………」
いや、アレ以上俺は何をすれば良いんだ?
もっと、感謝すれば良かったのか?
う〜ん、
「私を家に上がらせてって言ってるの!!どうせ、そのザマなんだから、昼ご飯もちゃんと食べてないんでしょ?私が作ってあげるわ。だから、上げなさい家主!!」
「────いや、全くそう言ってなかったのに、
コイツの料理は好きだし、ご厚意に甘えるとするか………
「ほら、上がれ。食材はまだ有る筈だから、美味しいのを頼む。」
「ふふ、任せなさい!!」
と、ドヤ顔しながら我が家のキッチンへと一直線に向かっていく彼女………
最早、我が物顔だな………
勝手知ってる他人の家ってか?
「あっ、私が料理を作ってる間に課題とかをやっときなさいよ?」
「へいへい………」
ちっ、面倒だなぁ………
「返事はちゃんとしなさい!」
「はいはい………」
「はいは一回!」
「────はい。」
「宜しい!ちゃんと頑張ってね♪」
「────おう。」
仕方がない、やるか………
怒られるのは面倒だしな、うん………
☆☆☆☆☆
「はぁ、あの女め………」
作ってくれた昼飯分を食べた後、俺は彼女から………
「全く、食材が少なくなってきてるわよ?早く買ってきなさい!今日は私が夜ご飯を作ってあげるから、出来るだけ沢山にね♪」
────と、言われた。
申し訳ないと断ったのだが、頑固なのか拒否するのを拒否された。
こうなると意地でも撤回しないので、俺が折れてやるしかない。
そうしないと、前みたいにずっと居座って泊まりかねない………
あの時は色んな意味でヤバかったなぁ………
「しかし、何を買おうか………」
また、唐揚げでも作ってもらうか?
いや、酢鶏か?
う〜ん、親子丼も良いかもしれない。
「まぁ、そこら辺は店に着いてから考えるとするか………」
今の内に考えても、イヌ科の皮算用になりかねないからな………
「はぁはぁ………」
「ん?」
この声は………
「はぁはぁ、き、キツい………」
誰かの疲れた様な声が聞こえてくる。
その声が聞こえた方を向くと、女の子らしき存在が息切れをしながら、路地裏で座りつくしていた。
おいおい、そんなで座り込むとか危ないぞ?
「はぁはぁ、休憩なんてしてる場合じゃなかった!早く逃げないと………」
そう言いながら、走り去っていく彼女。
変な奴だなぁ、あの子………
しかし、何から逃げてるんだろう?
「少し、気になってきたな………」
────この時の俺は、そう思っていた。
普段の自分ならこんな事はしないのだが、俺は無償に彼女の事を追い掛けたくなっていたのだ。
まるで、甘い蜜に引き寄せられる虫の様に、思考を誘導されている気分だった。
「………すまん、竜崎!」
ほんの少しだけ寄り道をする俺を許してくれよ!!
ちゃんと、買い物は必ず果たすからな!!
「────はっ、どうやら今日は悪い事ばかりじゃなさそうだ。」
これから何か楽しい事が起きそうな予感を感じながらも、彼女が消えていった方向へと俺は走り出す。
「よし、見つけた!」
はてさて、鬼が出るか蛇が出るか………
個人的には、蛇よりも鬼が見たいがな………
しかし、そんな事よりも………
「まだ春とはいえ、フード付きのジャンバーを着てるのは熱くねぇかな?」
続く
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