第2話 始まりの悪夢

第2話


「はぁ、眠い………」


俺の名は龍崎りゅうざき 藍青あお


どこら辺にも居る普通の高校生だ………


────ライトノベルの主人公みたいな詐欺じゃないからな?


「くそっ、変な夢を見たせいだな………」


変な夢を見たせいで、俺は眠気に襲われ続けていた。


その夢はというと………


☆☆☆☆☆


(────を取れ。)


何だ、此処は?


(────んを取れ。)


しかも、何なんだよ、この声は?


(────剣を取れ。)


剣?


剣なんか何処に………


(────剣を取れ、■■!!)


だから、その剣は何処に在るってんだよ!!


(────剣を取れ、■■!!)


ちっ、話が通じねぇ!!


本当に剣が何処に在るって────は?


(────剣を取れ、■■。取って、戦うのだ!!)


眼の前には、真っ赤な鞘に収められた日本刀らしき物が突き刺さっていた。


もしかして、剣とはコレの事か?


でも、いつの間に俺の眼の前に現れたんだ?


いや、そんな事を考えるよりも前に………


(────取ったな、■■。)


────俺は言われる通りに剣を取ってしまった。


俺の手によく馴染む………


────一体、何で?


まるで、長年この剣を使ってきた様な感じじゃねぇか?


いや、そんな訳はない。


そもそも、俺の剣経験は体育の剣道の授業で竹刀に触れて何回か振った位だ。


それなのに、それなのに………


(────来るぞ、■■!)


はぁ?


一体、何が来るって………


『キシェェェェアア!!!』


うおっ!?


な、何だコイツは!?


『人間、人間、人間だ。餌、餌、餌、やっとありつけるゥゥゥゥゥゥ!!』


ば、化け物だ………


────少なくとも、俺はそう思った。


俺の眼の前には幻想を体現したかの様な存在が立っていた。


涎を垂らし、俺を獲物としか見てない様な目でしゃぶり尽くしてくるコイツを、どうして化け物以外の表現が当てはまると言うのだろうか?


(戦うぞ、■■!!)


はぁ!?


戦うって、この化け物にか!?


む、無理だろ!!


どうやったら、こんな刀だけでこの化け物を殺せるんだよ!!


巫山戯た事を言ってると、この刀を叩き折るぞ!!


って、なっ!?


『ガハッ、こ、コレはヨヨヨヨ妖刀ゥゥ!?』


か、身体が勝手に動いた!?


凄い達人みたいな動きで化け物を斬り伏せやがった………


でも、妖刀だって!?


この刀、あの妖刀村正とかいう奴と同じ類なのか?


『お、お前、ひ、人じゃないィィィのかァ?まさかァァァァ、咎人ォォォ?』


咎人?


犯罪者って事か?


いや、生まれてこの方、犯罪なんて犯した覚えは無いんだが………


『半端者、この世にィィィ在ってはいけない怪物めェェェ!!』


くそっ、どいつもこいつも話が全く通じねぇなぁ、おい!!


さっきから、どっちも何を言ってるのかすら理解わからねぇ!!


というか、怪物はそっちだろ!!


『滅びろォォォ!!』

(滅ぶのは貴様だ、■■■■!!)


────何かが聞こえた気がした。


1つだけ確かな事は、そう叫んだ瞬間に化け物が完全に真っ二つになった事だけだ。


俺は一体、何をして────


『お前のせいィィィで、世界は滅ぶゥゥゥ。その破滅はァァァ、直ぐ其処にィィィ!!!』


☆☆☆☆☆


「何だったんだろうな、マジで………」


しかし、何で見知らぬ化け物に恨み節を聞かされなきゃならねぇんだ?


しかも、変な単語ばかり出てきた上に、所々聞き取れない場所も有ったし………


「疲れてんのかなぁ………」


最近はバイトも忙しかったし、ソレのせいかもしれねぇなぁ………


「でさ、そういう事があって………」

「ん?」


この声は………


「マジ?何それ、ウケるw」

「でしょ?あの時は本当に────」

「───────────────ちっ。」


何でこんな時に、こんな場所でコイツに会うんだよ………


「何、赤朱あか?知り合い?」

「えっ、あっ、うん。ちょっとね………」


────サボるか。


コイツに会ったせいで、気分が不快一色になっちまった。


もう学校に行く気分にすらならねぇ………


「あっ………」


後ろに振り向いて帰ろうとした瞬間、そんな声が聞こえてきた。


その時に一瞬だけ見えた顔は悲しそうで、声にもそんな感情が籠もっていた。


何で………


何でお前がそんな顔を、声が出来るんだよ!?


────しやがって、馬鹿にしやがって!!


「巫山戯んじゃねぇよ、クソ女が………」


あの時を思い出しただけで、腸が煮えくり返りそうになる。


あの時ほど惨めで、怒りを覚えた日は無かった。


それ程までに、あの時は地獄としか言い様がない。


「どうして、俺と─────」


緩んだ口から、とんでもない言葉が漏れそうになる。


もう終わった事なのに、まだ俺は────


「ついてねぇなぁ、今日は………」


────全く、なんて日だ。


続く

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