辺境の田舎にあるオールー公爵領を治め、世間からは『地味豚公爵』と馬鹿にされているヴィクトル。そんな彼の元に王国一の美女エレーナ公爵令嬢が嫁ぎにやってきた!
生活魔法しか使えず、過去に婚約者を弟に寝取られ、自己評価が大変低い彼は、面識のなかったエレーナとの突然の婚約に大混乱。しかし、このヴィクトル、本人が自覚しないところで実は数々の偉業を成し遂げていた。
領地の治水、永きに渡る魔族との対立を解消、日常に役立つ数々の魔道器を発明……これだけのことをやっているのに、いつもオドオドしているヴィクトル。しかし彼が自信なさ気な分だけ、ヴィクトルの素晴らしさを誇らしげに語ってくれる領民たちの姿が大変心地よい。婚約者のエレーナもヴィクトルのことをしっかり理解して、才女らしい聡明な視点で彼をサポートしてくれて大変魅力的。ときどき危ない面も見せるけど……。
これまでの数々の辛い目にあわされてきたヴィクトルだが、その分だけ、物語の最後で過去の出来事すべてにしっかりケリをつけてしっかり報われる、読んでいて気持ちがいいストーリーの作品だ。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎憲)