第10話 リアたちのお礼

「お母さん、お父さんは!?」

「リア? それにアルフィさんまで!? こんなに朝早くからどうしたんですか?」


 朝早くにやって来たからか、リアのお母さんが目を白黒させているけれど、リアがお構いなしに家の中へ入って行く。


「お母さん。アルフィ様がお父さんの病気の薬を持って来てくれたの!」

「えぇっ!? ほ、本当ですかっ!?」

「うんっ! これ……アルフィ様がさっき持ってきてくださったの!」


 リアがお母さんに、緑色の液体が入った小瓶を渡したけれど、困惑している様子なのでちょっと落ち着かせてあげようか。


「昨晩、街で購入したウェーストニール病を治す薬です。それを旦那さんに飲ませてあげれば、きっと良くなりますよ」

「そうなのですね! ありがとうございます!」


 興奮して早口になっているリアとは逆に、何をどうして欲しいのかをゆっくり説明すると、理解した様子のお母さんが頭を下げて、家の奥へ。

 俺とリアも、お母さんの後に続いて寝室へ行くと、


「うぅ……」

「あなた……アルフィさんがお薬を持ってきてくれましたよ。飲んでくださいね」


 苦しそうな表情を浮かべるお父さんに、ゆっくりと薬を飲ませる。

 日本で薬を処方された時の感覚だと、飲んでゆっくり眠ると良いと思うのだが……うなされていたリアの父親が、静かに眠り始めた。

 これは、流石に飲んですぐに病気が治った訳ではないとおもうのだが、回復を促す為に鎮静剤とか睡眠薬の効能も入っているのだろうか。


「お父さんの顔が穏やかになった!」

「えぇ、本当ね……アルフィンさん。ありがとうございます。今まで、眠っている間も苦しそうだったんです」

「きっと、ゆっくり休めば良くなると思います……そうだ。それから、これを」


 ドロシーに用意してもらったメジャーな市販薬が入った箱を近くのテーブルに置くと、それぞれの効能を説明する。


「……という訳です」

「あの、アルフィ様。このお薬は……?」

「リアが、この村に薬が足りていないって言っていただろ? だから、村の方に何かあったら遠慮なく使って欲しい。もしも使って無くなった薬があれば、また買ってくるからさ」

「あ、アルフィ様……あ、ありがとうございますっ!」


 いやあの、リアは何かある度に抱きつき過ぎではないだろうか。

 しかも母親の見ている前なのに。

 とはいえ、リアが俺を信頼してくれているという事を母親にアピール出来たのではないだろうか。

 そろそろ村長的な人に俺を紹介してくれないかな?

 ちょっと期待しながら、チラッチラッと母親の様子を伺っていると、


「アルフィさん。リアと夫を助けていただいた上に、村の事まで……大したお礼は出来ないのですが、せめてお食事でも。腕に寄りを掛けて作りますので」

「あ、では折角ですので、いただかせていただきます」

「本当っ!? お母さん! 私も一緒に作るっ!」


 お母さんが朝食をご馳走してくれる事になり、リアも一緒に作ると言って、二人で別の部屋へ行ってしまった。

 くっ……やはり種族が違うからだろうか。それとも街に家があるからか?

 村長に紹介とかはしてくれないらしい。

 いっそ、全員奴隷にしてしまって……いやいや、それじゃあ、TEのアルフと同じじゃないか。

 イライザが魔王化していない事から、TEはまだメインストーリーの前半のはずだ。

 慌てずじっくり攻めていこう。次の手はもう用意してあるし。


「アルフィ様っ! お待たせしました! パンは、村で栽培している小麦から作っていて、野菜も村で採れたものなんです」

「へぇー……うん、美味しい!」

「えへへ、嬉しいですっ!」


 これはお世辞でも何でもなく、本当に美味しいので感想を言っただけなんだが、リアが凄く喜んでくれた。

 やっぱり村の事を褒められると嬉しいのだろうな。

 まだ村に誘ってはもらえなかったが、この食事だけでも十二分にありがたいと思いながら完食すると、


「あ、アルフィ様。ご存知の通り獣人族は身体能力に優れた種族です。もし宜しければ、お礼と言えるかわからないのですが、私と一緒に稽古……こほん。一緒に身体を動かして汗を流しませんか?」

「ん? そう……だな。じゃあ、お願いしようかな」

「本当ですかっ!? えへへ、嬉しいですっ!」


 リアが何かに誘ってきた。

 獣人族のスポーツとかだろうか? TEに獣人族の情報が少なすぎて何の事かはわからないけれど、好感度を高める為にも一緒にやってみる事にした。


「リア。本気……なのね? わかったわ。お父さんが良くなったら、お母さんから経緯は話しておくから……頑張ってね」

「うん。ありがとう、お母さん」


 いやあの、母娘で真剣な表情で何か頷き合っているけど、健康体操とかジョギングとか、そういうのじゃないのか!?

 俺は一体何をやらされるんだ!?

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