第9話 外道魔法の移動方法
翌朝。目が覚めると、机の上に液体の入った様々な小瓶が置かれていた。
その傍に手紙が添えられており、小瓶に貼られたラベル名と、何の薬かが書かれている。
どうやらドロシーがここまで準備してくれたらしい。
うん。入ったばかりの新人で、一番動き易そうだ……という理由だけで選んだのだが、思った以上に出来る子だったようだ。
「アルフ様……まだ全快ではないのですね?」
TEが日本のゲームメーカーが作った物だからか、文字も日本語そのままなので、ドロシーの説明を読んでいると、突然背後からセシリアの声が聞こえて来た。
「せ、セシリア!? いつからそこに!?」
「いつも通り、アルフ様がお目覚めになられる前から待機しておりました」
「えっ!? いつも通り!? 目覚める前から!?」
「はい。しかしながら、普段は私が起こさなければ絶対に目覚めないアルフ様が自ら起床され、一目散に薬を探されるなんて……」
いやあの、元々のアルフはセシリアに何をさせているんだよっ!
流石に朝くらい自分で起きれば良いと思うのだが。
「アルフ様。本日はゆっくりお休みくださいませ。お昼に様子を見に来るまで、この部屋には誰も入れないようにしておきますので」
そう言って、セシリアがいろいろと勘違いしながら部屋を出て行く。
俺は単に薬の説明文を読んでいただけなんだが……しかし、この展開は願っても無いチャンスだ。
ひとまず着替えて……って、昨日も思ったけど、アルフの趣味って悪いよな。
派手な服ばっかりなんだが、とりあえずクローゼットにある中では一番地味だと思える服に着替えると、机の上の薬を適当な箱に入れて抱える。
そして、
「≪奴隷召喚≫……≪反転≫」
昨日ドロシーとの実験で試した、奴隷を自分の許に召喚する魔法を反転させ、俺がリアの許へ召喚される。
という訳で、一瞬で獣人族の村へ移動したのだが……何故かリアの家ではなく川のすぐ傍に立っていた。
一歩前には、流れは緩やかなものの、幅はそれなりの川があり、茶髪の美少女が全裸で水浴びを……
「えっ!? あ、アルフィ様っ!? いつの間に……」
「す、すまない! まさかリアが水浴びをしているとは思わなくて!」
リアに呼ばれて目が合い、大慌てで背を向ける。
くっ……好感度を上げて村に住まわせてもらおう作戦が、早くも瓦解してしまうっ!
それより、どうしよう。リアが水浴びを終えるまで待つのは当然として、結果的に水浴びを覗いてしまい、ダダ下がりになった好感度をどうやったら取り戻せるんだ!?
そんな事を考えていると、背後からパシャパシャと水の中を歩く音が聞こえてくる。
「アルフィ様。気になさらないでください。い、命の恩人ですから、ご覧になりたければ幾らでも……」
「いや、本当に違うんだ。リアのお父さんの病気を治す薬が手に入ったので、少しでも早く渡そうと思ってリアを探して居たら、偶然川に出てしまって……」
「えぇっ!? アルフィ様! お、お父さんの薬が手に入ったのですかっ!? あ、ありがとうございますっ!」
余程嬉しかったのか、リアが背後から抱きついてきたけど……は、裸のままなのかっ!?
いや、俺の理性がもたないから、服を……服を着てくれっ!
話は衣類を整えてからという事にして、目を閉じて直立不動で待っていると、
「お、お待たせしました。アルフィ様」
リアの声が聞こえてきたので、声がした方に目をやる。
……うん。早くお父さんの所へ向かう為、物凄く急いだんだね。
殆ど身体が拭けていない上に、昨日と違って薄い服だから、濡れた肌に服が張り付いて、ほぼ透けている。
何故か全裸よりもエロく見えてしまうのは何故だろうか。
「こ、こほん。じゃあ、お父さんの所へ向かおう。歩きながら説明するよ」
好感度を下げないようにするため、出来るだけリアの方を見ないようにして、ドロシーに用意してもらった薬について説明していく。
今回のメインとなる病気の特効薬に、体力を回復させる滋養強壮ポーションや、毒消しに風邪薬、ケガに使う消毒薬などと、幾つかの薬について説明したところで、リアの両親の家に到着した。
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