第6話 獣人族の村に住む作戦
「リア。少し外へ出ても大丈夫か?」
「はい、勿論です。ご案内致しますね」
TEに名前すら出てこない獣人族の村でモブとして暮らしていく為に、まずは村の規模を知ろう。
そう思ってベッドから降りて……くっ! 脚に力が入らないっ!?
「アルフィ様っ! だ、大丈夫ですか!?」
倒れる……と思った時には、リアが俺を抱きとめてくれていた。
流石は獣人族といったところか。
自分よりも遥かに背の高い俺を軽々と支えるなんて。
「す、すまない」
「いえ。それよりも、ベッドに戻られますか?」
「いや、ゆっくりで構わないから、外が見たいな」
「では、私が支えますので、ゆっくり参りましょう」
そう言って、リアが俺の腰を抱きしめるようにして歩く。
何だか介護されているみたいなんだが……まぁ今は仕方が無いか。
リアに支えてもらいながら外へ出ると、木で作られた小屋が六つ程ある。
家の周りには小さいが畑があって、野菜が育てられていた。
「いい……のどかでとても良い村だ」
「ありがとうございます。数年前に皆で移って来たのですが、ここは作物も良く育ちますし、近くに川もあるので、とても住みやすいんです」
なるほど。獣人族は、どこかから移り住んできたのか。
人間に発見されたら移るのか、それとも定期的に移り住むのかはわからないが、今はまだ深い部分には触れないでおこうか。
「……って、村の中で作物を作っているのに、どうしてリアは森の中に居たんだ?」
「それが……実は私の父が病に倒れておりまして。獣人族は身体能力に優れる反面、魔法が使えない種族の為、薬草を探すしかなくて……」
「なるほど。リアは薬草を探して森の奥に居たのか。お父さんの容体はかなり悪いのか?」
「薬があれば治るかもしれないのですが、診断が出来ないので何の薬が必要なのかわからず、それがわかったとしても、街へ行く事も出来ないので……」
話を聞くと、リアは獣人族が怪我をした時に使う、痛み止めの効果がある薬草を探していたそうだ。
そこで魔物に遭遇してしまい、逃げる事が出来なかったのだとか。
「俺をお父さんに合わせてくれないだろうか。もしかしたら、必要な薬がわかるかもしれない」
「アルフィ様は治癒師様なのですか!?」
「いや、そういう訳ではないんだけど、ちょっと可能性があってさ」
そう言うと、リアが隣の家に俺を案内してくれた。
中へ入ると、リアのお姉さんかと思ってしまう程に若い獣人族の女性と、ベッドで苦しそうにしている男性が居た。
「お母さん。さっき話した、私を助けてくださったアルフィ様です」
「まぁ! この度は、娘を助けていただき、本当にありがとうございます!」
「いえ。人として当然の事をしたまでで……それより、旦那さんの様子を見せていただいても良いですか?」
ひとまず、リアのお母さんに断り、男性の許へ。
当然、医者でも何でもない俺に病名などは分からないが、
「……≪隷属≫」
小声でこっそり隷属魔法を使用し、リアの父親を奴隷にする。
勿論、苦しんでいるリアの父親を奴隷として扱う訳ではないのだが、体力の無い今の俺では、リアを助けた時と同じ方法を取る事は出来ない。
俺がする事は、TEでアルフが使っていた外道魔法だ。
「……≪奴隷鑑定≫」
自分の奴隷状態にある者にしか使えないが、俺の視界にTEのステータス画面が表示され、リアの父親の事が事細かく記載されている。
歳は三十六で、猫耳種という獣人族の種族。本来の筋力や体力といったステータスは、魔力を除いて軒並み高いのだが、病気のせいか大幅にマイナス補正が掛かっていた。
そして、肝心の病名だが……これか。
「ウェーストニール病? ……聞いた事はないが、後で薬屋にでも聞いてみるよ」
「アルフィ様! それがお父さんの病気なんですかっ!?」
「あぁ。数日……いや、なるべく早く薬を手に入れて来るよ」
「えっ!? あ、アルフィ様……私の命を助けてくださっただけでなく、お父さんまで!?」
「気にしないでくれ。さっきも言った通り、俺はこの村が気に入ったんだ」
ここは、リアのお父さんも治して、是非とも気に入られたい。
何とか獣人族と仲良くなっていき、いつの間にか村に住みつき、街から仕入れた薬を売ってモブとして生きる……うん、完璧だ!
リアが俺の乗って来ていた馬も村へ連れて来てくれていたので、早速馬に乗り……ここで馬を走らせられれば格好良くキメられたんだろうけど、ゆっくり屋敷へ向かう事にした。
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