第5話 悪役貴族と爆乳双子メイドラゴン
古城の地下の宝物殿。
アオイたち曰く、宝物殿にあるお宝は彼女たちが住み着く前からあったもので、昔のこの城の持ち主が趣味で集めていたものだろうとのこと。
ああ、罠の類いは一切無かった。
やはりこの古城はボス戦のステージでしかなく、ダンジョンは危険地帯そのものみたいだな。
俺たちは特に問題なく宝物殿に足を踏み入れる。
「うわあ、すっごー」
宝物殿には色々なものがあった。
やたらと頑丈そうな鎧や奇天烈なデザインの服が沢山だ。
古城の主がどういう趣味嗜好をしていたのか、とても気になるね。
「うーん、『あれ』があったら良いけど……」
アオイ、アカネと手分けして宝物殿を漁る。
意外だったのは、宝物殿という割には金銀財宝が無かったことだろうか。
あるのは絵画や珍しい装備など、装飾品やよく分からないものが多い。
「お、強そうな剣!! ……なんか呪われてそうだし、触らんとこ」
かっこ良い装飾の施された剣があったけど、凄く禍々しい雰囲気を漂わせていた。
触った瞬間に呪われそうなので、そのままにしておく。
「ご主人様、ここにある品のほとんどは呪われていますね」
「みたいだね。浄化魔法は神官の使う魔法だし、門外漢だからなあ。そういうものは無視しよう」
「あら? ご主人様ぁ、これ何かしら?」
「ん? そ、それは――ッ!!」
そこには人類の叡智があった。
いや、別に俺はそこまで思い入れのあるものではないのだが、前世の友人に『それ』をそう呼ぶ奴がいた。
「メイド服、か」
白と黒を基調にした、よくあるイメージのメイド服だと思う。
ロングスカートタイプとミニスカートタイプのメイド服が一着ずつ、祭壇のような場所に飾られていた。
他の呪われているアイテムと違って、普通のメイド服のようだが……。
「ん? これ、何かの
人体に有害なものを
俺は鑑定魔法でメイド服にかかっている
名前:女神のメイド服(最高品質)
備考:伝説の裁縫師が拵えた究極のメイド服。あまりの究極っぷりに女神すら着たら立派なメイドになってしまう逸品。
効果:装備すると所作は完璧なメイドになる。
ロングスカートタイプとミニスカートタイプのメイド服には同じ
うん。うーん、うん。
まあ、大体想像はしてたけど、やっぱりネタ装備みたいだね。
それにしても、メイド服かあ。
前世の友人に秋葉原のメイド喫茶を制覇したガチモンのメイドオタクがいたけど、元気にしてるかなあ。
「ご主人様、メイド服とは何でしょうか?」
「え? えーと、従者が着る服かな。あ、そうだ。二人ともこのメイド服、着てみてよ」
実を言うと、人化したアオイとアカネは真っ裸だった。
まあ、ドラゴンだった時点で裸だったし、人に近しい姿になったからと言って無から服が生まれるわけじゃない。
ぶっちゃけ目の前やり場に困ってたし、メイド服があって良かった。
二人が言われるがまま、メイド服に身を包む。
アオイがミニスカートタイプで、アカネがロングスカートタイプのメイド服だった。
「不思議です。今なら料理も洗濯も完璧にできそうな気がします」
「うふふ、本当ねー。服って動きにくくなるだけだろうし、人間が着てる理由って分からなかったけど、可愛くて意外と良いわねー」
「お、おお、す、すごい!! 似合ってる!!」
メイド服を着たアオイとアカネは、何と言うか、凄かったです。
クールな雰囲気のアオイが丈の短いメイド服を、ゆるふわな雰囲気のアカネが丈の長いメイド服を着こなす姿はピッタリだった。
それにしても、やっぱり二人ってスタイルが良すぎるな。
ボンキュッボンどころじゃない。
ドゴーン、シュッ、ドーンの抜群のプロポーションである。
双子の爆乳ドラゴンメイド、いや、爆乳双子メイドラゴンか。
この最高の肢体を持つ爆乳美女二人を、自分の自由にできると思うと……。
「はっ、いかんいかん。そういうのは後。目的のものを――発見!!」
俺は宝物殿の中から、ある一つの仮面を引っ張り出す。
一見すると不気味な仮面だが、この仮面にかかっているのは
「隠者の仮面!! 全クリ後にやり込み用ダンジョンを制覇したら手に入るアイテム!!」
早速、鑑定魔法を使ってみよう。
どうか、どうかこの隠者の仮面が本物でありますように!!
名前:隠者の仮面
備考:かつて名を馳せた英雄が己の姿を隠すために作らせた仮面。
効果:装備者の正体を隠す。
よし!! 本物だ!!
危険地帯を突破したら、古城でこの仮面が手に入るのは知っていた。
こいつがあると魔王軍の残党に襲われなくなるから便利なんだよなー。
ここにあるのがゲーム通りで良かったぜ。
「これがあれば街に行けるし、早速城の修繕ができそうな人を探しに行こう!!」
「ご主人様、お供します」
「うふふ、坊や――じゃなくて、御主人様。当然、私も行きますよー。メイド服を着てたら人間たちの作るものに興味が湧いてきちゃいましたし♪」
俺たちは宝物殿を出て、飛翔魔法で危険地帯の手前にある街に向かう。
サムライグマに襲われなかったら、俺はその街を拠点に危険地帯の魔物を延々と狩る生活を送るはずだった。
この世界、奴隷の首輪とかあるしね。
街で俺に取り付けて、死ぬまで戦わせるつもりだったのだろう。
革命軍を率いた勇者は殺さないことで慈悲をかけたつもりだろうが、むしろ更に酷い気がしてくるよね。
まあ、そもそも勇者の役割は革命軍を率いることだけじゃない。
勇者は女神から、復活した魔王を倒し、人々を救うのが仕事だ。
アインザッツ王国での反乱やイヴの辺境送りは、いちイベントの結末に過ぎない。
その後の事を気にしている余裕など、勇者には無いのだろう。
そこで俺はあることに気付く。
アオイとアカネが俺の音速に近いスピードに余裕で付いてきたことだ。
「二人とも、めっちゃ速く翔べるね!!」
アオイとアカネが竜の翼を広げて、凄まじい速度で移動する。
二人に無理している様子は無かった。
「流石はご主人様です。我々は結構本気なのですが、まだまだ余裕がありそうですね」
「ご主人様ぁ、疲れちゃうからもっとゆっくり行きましょうよぉー」
「えー? でも半壊した古城で雨ざらしのまま寝食を過ごすのは嫌だし。一秒でも早く街に行かないと」
俺たちすぐ目的の街、フロンティナに到着。
人目につかないよう、少し離れた場所で着地し、俺は隠者の仮面を装備した。
この街は危険地帯を攻略するために集まった冒険者と商人たちが作った大きな街で、その人口はアインザッツ王国の王都に匹敵する。
という設定だったはず。
ここならきっと城の修繕に関する知識を持った人がいるだろう。多分。
「おお!! 意外と人が多い!!」
「まるで蛆虫のように沢山いますね。まとめて焼き払ってしまいたいです」
「絶対やったら駄目だよ」
至って真顔で怖いことを言うアオイを宥め、フロンティナに入る。
街には問題無く入ることができた。
入る直前であることに気付いて心配だったが、大丈夫そうだった。
アオイとアカネは一目見れば人間ではないと分かる。
角や尻尾、翼が生えているからな。
しかし、この世界には竜人と呼ばれる人種がいる。
数は少なく珍しいが、人里で全く見かけないという程ではない。
竜人は蜥蜴っぽい見た目から人間に近い見た目まで、その姿は大分個人差がある。
角や尻尾、翼のある竜人がいてもおかしくはないのだろう。
むしろ衛兵たちは、アオイとアカネの美貌に見惚れて驚いているようだった。
うん、やっちまったな。
次に街へ来る時は、二人は連れて来ない方が良いかも知れない。
二人が絶世の美女すぎて余計な注目を集めかねないし、今後はもっと気を付けて行動するようにしよう。
そんなことを考えながら、俺は巡回していた衛兵に声をかける。
「すみません、衛兵さん!!」
「おや、なんだい坊っちゃん」
俺が王都で悪逆の限りを尽くしていたイヴだとは露知らず、衛兵は子供に声をかけられたと思って笑顔で対応してきた。
まあ、イヴって十二歳の子供だからな。
隠者の仮面で正体が分からない以上、そういう対応になるのは不思議ではない。
「ご主人様を子供扱いとは無礼ですね。この場で焼き殺し――」
「実は職人を探してるんです!!」
女神のメイド服の効果で所作は完璧になったアオイだが、発言は過激そのものだった。
俺はアオイを遮って、衛兵に心当たりが無いか訊ねてみる。
「壊れたお城を修理できるような人を探してるんです。知りませんか?」
「え? 城の修理? うーん、流石に分からないなあ。あ、そうだ。職人ならガンテツ工房に行ってごらん」
「ガンテツ工房?」
「ガンテツっていう腕のいい職人がいてね。鍛冶師としても大工としても有名な人だし、このフロンティナを囲む壁を設計したのも彼らしいしね」
早速有益な情報、ゲットだぜ!!
俺たちはその足でガンテツ工房に向かい、そのガンテツに会って城の修理をお願いしてみたのだが。
「城の修理を手伝ってやるのは構わんが、そこそこの額を取るぞ?」
「ですよね!!」
俺は何事も、世の中はタダではないと思い知るのであった。
――――――――――――――――――――――
あとがき
爆乳×双子×メイド×ドラゴン、妹は超過激イエスマンで姉はドS。属性もりもりなヒロインたちだ。反省も後悔も無い。
作者のモチベーションに繋がるので「面白い!!」「アオイコワイ」「いいぞ作者もっとやれ」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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