第4話 悪役貴族はドラゴンたちの名前を考える



 前回のあらすじー!!


 ドラゴン二匹を勢いでボコったら、なんか下僕にしてとか言われて困ってまーす!!


 どないせえっちゅうねん。


 しかし、俺の前で頭を垂れて懇願してくる二頭の目は本気だった。

 冗談や気の迷いではなく、仲間になりたそうな本気の目で俺を見ている。



「えっと、別にそういうのは求めてないかな」



 ドラゴン二匹とか目立つし。


 俺を移送していた兵士たちが、そろそろ馬車を探しに戻っている頃だろう。


 当然ながら、そこに俺の死体は無い。

 生きている可能性があるとして、追っ手がかかるかも知れない。


 要するに俺はこれからお尋ね者になるわけだ。


 ただでさえ目立ってはならないのに、ドラゴンを連れていたら絶対にアウト。

 また勇者パーティーと戦闘になって負けるかも知れない。


 そうなったら、今度こそ俺は終わりだろう。



『我々は必ずお役に立ちますっ』


『うんうん!!』


「いや、そう言われても……」



 ……待てよ?


 この二人を仲間にしたら、勇者パーティーとか余裕のよっちゃんで撃退できそうじゃない?



「二人は何ができるの?」



 俺は戦闘力的な意味で二人に訊いてみる。


 すると、二人から返ってきた答えは俺の思っていたものと少し違った。



『料理……は無理ですね。洗濯も……無理です』


『お掃除なら得意よ!! ブレスでちょっと消し飛ばせば良いだけだもの!!』


『っ、流石は姉様です。ご主人様、我々は掃除が得意ですっ』



 いや、そういう意味で聞いたわけじゃないよ。


 大体ドラゴンに料理とか洗濯とかさせるわけがないでしょ。



「えーと、そういう意味じゃなくてね?」


『ああ、なるほど!! そういうことね!! 安心して、坊や!! 私たち二匹とも健康なメスだから、坊やの赤ちゃんはしっかり孕めるわ!!』


『っ、そ、そちらの意味でしたか……』


「ちゃうわい!! 大体どこの世界にドラゴンとそういうことする輩がいるの!!」



 いや、日本なら変態紳士の一人や二人、探せばいるだろうけどさ!!



『ご安心を。我々は人の姿になることもできます』


『ちょっと待っててね、坊や。――えいっ!!』



 次の瞬間、二体を魔力の光が包み込む。


 その光が収まると同時に、脳に直接響くような声ではなく、普通の声で誰かが言葉を発した。


 間違いなく、人の言葉だった。



「このような姿で如何でしょう?」



 そう言ったのは、おそらく青色の巨竜だった者だろう。


 絶世の美女だった。

 淡い水色の髪と黄金の瞳をしており、顔立ちは恐ろしく整っている。

 キリッとした印象の吊り目で、クールな雰囲気を漂わせていた。


 しかも、メリハリのある身体だ。


 モデルみたいに背が高く、胸はスイカ並みに大きくて腰は細く締まっており、安産型のお尻で太もももむっちりしていた。


 男ならば誰もが視線を釘付けにされるような美貌とスタイルを兼ね備えた美女である。



「うふふ、この姿になるのは何百年ぶりかしら?」



 次いで姿を表したのは、おそらく赤色の巨竜だった者だろう。


 こちらもまた絶世の美女だった。

 ピンクブロンドの髪と黄金の瞳を輝かせ、顔立ちは精巧な人形の如く美しい。

 優しそうな印象を受ける垂れ目をしており、ゆるふわ感がある。


 そして、こちらもまたナイスバディーだった。


 妹の方と比べると身長こそ低いが、その胸は普通のスイカではない。

 夏場に売ってる大玉スイカである。


 腰は細く、お尻は大きく、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる抜群のスタイルだ。



「お、おお……。色々と凄いな」



 ただ、二人が人間ではないと一目で分かる。


 大きな二つの角と、力強さすら感じさせる雄々しい翼。

 尾骨の辺りからは太く逞しいドラゴンの尻尾が生えていた。



「この姿であれば、ご主人様のお子種を賜ることに支障はないかと」


「うふふ、たっぷりサービスしちゃうわよ♡」


「……ごくり」



 こんな爆乳美女二人にイロイロな事ができると思ったら、無性に意識してしまう。


 いや、まあ、ねえ?


 二人は結構強いみたいだし、ここで仲間にしてしまうのも手かも知れない。

 決して二人の身体を好き放題できるという誘惑に屈したわけではなく。


 あくまでも今後、勇者に見つかって戦闘になった時、強い味方がいたら俺の逃げる時間を稼いでくれる可能性もあるわけで。


 断じておっぱいに負けたわけではない。



「分かった。よろしくね、二人とも」



 俺は二人の申し出を了承した。


 すると、青色の巨竜だった美女がその場で片膝を突いて頭を垂れる。



「ご主人様に、私の全てを捧げます。この城も、私の血肉も、魂すらも」


「私もー!! 坊やに全部あげちゃうっ!!」


「……姉様。ご主人様はすでに我らのご主人様です。言葉遣いは改めるべきかと」


「えー? うーん、そうねー。坊や呼びは失礼かしら?」


「別に気にしなくてもいいよ。ええと、二人の名前は? 俺はイヴだ」



 名前が分からないと不憫だからな、しっかり聞いておかないと。



「我々に名前はございません。そもそも名前という概念が魔獣にはありませんので」


「そうなの?」


「そうよー。まあ、親子兄弟姉妹みたいな、強い血の繋がりがあると直感的に分かるというか、少し説明しづらいわねー」


「ご主人様。我々に名を与えていただけないでしょうか?」


「え、俺が考えるの? 俺のネーミングセンス、結構微妙で評判なくらいだよ?」


「ご主人様のお考えになられた名前であれば、それは至上至高の名でございます。微妙などと思うはずもございません」



 うーん、名前か。急に言われてもなあ。


 双子のドラゴンだから、ドラ子とゴン子とかどうだろうか。


 ……流石に駄目かな。うーん、ここは無難に色合いから取って……。



「アオイとアカネはどうかな?」



 妹の方は青色の鱗だったからアオイ、姉の方は赤色の鱗だったからアカネだ。

 安直な気もするけど、ドラ子とゴン子よりは良いだろう。


 俺は二人の反応を見る。



「アオイ……なんと素晴らしい名前でしょう。私は今日からアオイと名乗らせていただきます」


「うふふ、アカネ。とっても素敵な名前ねっ。ありがとう、坊や」


「……姉様」


「あら、うふふ。申し訳ありません、ご主人様」



 ぱちっとウィンクするアカネ。


 可愛いけど、この子って弱い相手を甚振ろうとするから怖いんだよね……。


 でもまあ、頼れる仲間になったと思っておこう。



「あー、別に言葉遣いとかは気にしないよ?」


「いいえ、ご主人様。上下関係はしっかりしておくべきことです。そうでなければ、ご主人様が己の群れのメスも従えることの出来ない劣ったオスだと周囲に教えるようなものです」



 感覚が野生動物的だなあ。



「ご主人様が圧倒的に優れたオスであることは紛れもない事実ですが、それを理解できない低能の猿がいることも事実です。どうかご留意を」


「ねぇ、猿って人間のこと? 俺も一応人間なんだけど……」


「いいえ、ご主人様はご主人様でございます。他の劣等オス猿共と違い、強く逞しく、この世のメスを従えるに相応しい――」



 アオイが自らの歪みに歪みまくって直角になってそうな思想を淡々と語る。

 アオイの方はアカネよりはマシと思っていたが、全然違う。


 アオイもアオイで結構ヤバイ子だ。



「うふふ。ではご主人様、早速貴方様のお子種を賜ってもよろしいかしら?」


「え?」


「姉様、私が先です」


「ちょ、待っ」


「あらあら? こういうのは年長者が手本になるものよ? 貴方は処女なのだし、ここはお姉ちゃんにお譲りなさい」


「いや、だから」


「姉様も処女でしょうに。大体年長者と言っても私と姉様は双子。姉様は卵から頭を出したのが数秒早かっただけではありませんか」


「ちょ、ストーップ!!」



 俺は二人の間に入って、言い争いを止める。



「っ、申し訳ありません。こういう事はご主人様が決めるべきことでした。どうかお許しを」


「あ、いや、別に怒ってないよ」


「あらあら……。ならご主人様はアオイと私、どちらに種付けしたいですか?」



 種付けって。言い回しがいちいち野生すぎる。


 いや、実際に野生のドラゴンだったわけだし、当たり前だろうけどさ。



「ご主人様。姉様と私、どちらに種付けなさいますか?」


「いや、そうじゃなくてさ。まず散らかっちゃったお城を修理しないと。野晒しでエッチなことするのは……いや、それはそれで悪くないかもだけど。屋根が無いと不安でしょ」


「……そう、ですか?」



 野生で生きてきたアオイたちには分からないみたいだけど、少なくとも俺はそうだからね。


 まあ、古城を壊したのは俺だけどさ。


 問題はどうやって古城を直すかだよなー。

 人手は土魔法でゴーレムでも作って用意するとして、城の修繕に関する知識が必要だ。


 当然ながら、普通の魔法使いである俺にはそのような知識が一切無い。


 困ったな。



「うーん。街に行けたら知識のある人を呼べるかも知れないけど、今は街には近寄りたくないしなあ。せめて顔を隠せたら……」


「ご主人様。お困りのようでしたら、城の地下にある宝物殿をご覧になられては? お役に立つものがあるかも知れません」


「え? あ、そっか」



 この古城の地下にはお宝がある。


 本来ならばアオイとアカネを倒したら手に入るはずだったアイテムだろう。


 ゲームでは二人が登場しなかったので、危険地帯の魔獣を倒しながら古城に辿り着けばタダで手に入るものだが。


 もしかしたら、地下の宝物殿に俺の知ってるアイテムがあるかも知れない。


 よし、見に行こう!!



「それでご主人様。私と姉様、どちらに種付けなさいますか?」


「それ今決めないと駄目かなあ!?」


「大事なことですので」



 ドラゴンにとっては大事なことらしい。


 俺は悩みに悩む。その末に出した答えは、我ながらどうかと思うものだった。



「じゃあ、二人とも一緒で」


「……なんと……」


「あらあら、うふふ」



 アオイが目を見開いて、アカネが微笑む。


 俺は何かまずいことを言っただろうか。



「流石はご主人様です」


「とっても素敵ね」


「? えっと、ありがとう」



 俺は首を傾げながら、古城の地下にある宝物殿へと向かった。







――――――――――――――――――――――

あとがき

ドラゴンの生態

群れのボスと最初にまぐわったメスがそのボスの正妻になる。


作者のモチベーションに繋がるので「アオイがヤバイ」「アカネもヤバイ」「メイド服はまだか!!」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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