第二話ふたつめ、しるすこと 「相撲部員 山尻精介の日之許国への迷い込みに就いて記す事」其の二十 精介の奥苑へと導かれるに就いて記す事

第二話ふたつめ、しるすこと

「相撲部員 山尻精介の日之許国への迷い込みに就いて記す事」

 「其の二十 精介の奥苑へと導かれるに就いて記す事」


 精介の様子に結三郎は首をかしげつつも、取り敢えずは高縄屋敷へと歩き続けた。

 それから更に暫く歩いていると、祥之助が何となく落ち着かない様子で精介の押している自転車をちらちらと見始めていた。

「どうしたんスか?」

 祥之助の視線に精介が気付き、傍らを歩く祥之助へと顔を向けた。

「あー・・・もうちょっとだけ自転車に乗れたら、と思ったんだがなあ。明春や子供達には悪ぃかなとも思ってな・・・。」

 精介に尋ねられると、流石の祥之助も子供達への遠慮があるのか一応は申し訳無さそうな表情で逆毛頭を掻きながら答えた。

「俺は別に乗ってもらってもいいっスけど・・・。」

 精介はそう言いながら、自転車を押す手を止めると許可を求める様に結三郎の方を見た。

 先を歩いていた結三郎は精介と祥之助を振り返ると軽く溜息をついた。

「仕方無いな・・・。ちょっとだけだぞ。急いでいないと言っても限度があるからな。」

「有難うよ! 流石心の友よ。」

 結三郎の許可に祥之助は調子良く持ち上げ、笑顔を浮かべた。

「じゃあ、さっきの感じで座って下さいね。」

 精介が祥之助の横へと自転車を寄せようとすると、祥之助は頭を横に振った。

「いや、今度は自分だけで運転してみたい。――あ、そうだ。精介、ちょっとだけ見本を見せてくれないか。乗ってるところを見てから試してみたいんだ。」

「え・・・。でも・・・いきなりは転んだりとかしますよ?」

 祥之助の希望に精介は戸惑いの表情を浮かべた。

「子供等の前だったから自分だけで乗るのは遠慮してたけど、別に少々の怪我は構わねえよ。」

 しかしそんな精介の心配を祥之助は笑い飛ばした。

「それはまあ・・・。」

 確かに普段の相撲の稽古を考えると、自転車で少々転ぶ事とは比べ物にならない位の強い当たりを受けたり怪我をしたりというのはよくある事だったので、精介としても長屋の子供達に対しての様には祥之助の怪我を心配してはいなかったが・・・。

「まあ、本人がこう言ってるし、いいんじゃないか?」

 結三郎も、どうせ言い出したら聞かないのだろう、と祥之助の事を止める気持ちは薄い様だった。

「は、はい・・・。いいッスけど。」

 祥之助に乞われるまま精介は自転車に跨ると、取り敢えずゆっくりとした動作で漕ぎ出して二、三十メートル程走るとまた元の場所へと戻ってきた。

「ふむふむ。」

 相撲の取り組みの時の様に意外と真剣な、集中した様子で祥之助は精介が自転車で走る様子を観察していた。

「よし!」

 何を見極めたのかは結三郎と精介にはよく判らなかったが、祥之助は何事か納得した様子で大きく頷くと自転車から下りた精介と交代してサドルへと跨った。

 きりっと前を見据え、力強くペダルを踏み締め自転車を前へと進ませた――ものの。

「・・・っと・・・!」

 一、二メートル程進んだ所ですぐに車体がふらつき始め、無理矢理更に進もうとしたがずるっとタイヤが横倒しに道の上へと滑ってしまった。

「――っぶねええ。」

 祥之助は何とか反射的に足を突き出して立つ事で車体を支えて、完全に転ぶ事は防げたもののやはり乗りこなす事は出来なかった。

「・・・・・・だ、大丈夫か?」

「・・・・・・怪我は無いッスか?」

 結三郎と精介が顔を赤くしながら目を逸らし気味に祥之助へと声を掛けてきた。

「ああ。何ともねぇけど。――?」

 自転車を起こしながら祥之助は答えたが、二人の様子に首をかしげた。

「着物が乱れてるからちゃんとしろ。」

 祥之助が疑問に思っている様子に気が付き、結三郎がぶっきらぼうに指摘した。

 転びかけた時に祥之助の着流しの前の袷が大きくはだけて開けっ広げになって帯も緩んでおり、裸の胸板や太腿、褌が露わになってしまっていたのだった。

「あー、悪ィ悪ィ。」

 ちっとも悪いとは思っていない様子で、祥之助は笑いながら自転車のスタンドを立てると、帯を一旦解いて着物を羽織り直し始めた。

 日之許では塔京の町中でも母親が道端で座って赤子に乳を含ませたり、褌一丁の人足達が作業を終えたらそのままの格好で飲み屋に繰り出すという事も珍しくはなく――往来での裸に対してはまだまだ大らかな意識や価値観ではあった。

 ではあったものの――とても好ましく、憎からず思っている者のあられもない格好というのは、結三郎と精介にとっては目の保養であり目の毒でもあった。

「何かなあ・・・。着物の裾がこの鎖の綱?みたいなのに絡まりそうでやりにくかったな。」

「あー。確かに。」

 祥之助が自転車のチェーンを指差しながら言う様子に精介も納得した。

「運動の得意な者なら暫く練習すれば乗れるとは思うけど、日之許の人間には衣装の問題があるなあ。精介はズボンだからいいけどな。」

 着物の前を合わせながら祥之助は、精介の穿いている制服の濃い紺色のズボンへと目を向けた。

 何となく、祥之助の事だから今ズボンを脱いで貸してくれ、とでも言いそうだ――と精介は警戒しながら祥之助の様子を窺っていた。

「よし、もう一回だけ。」

 そう言って祥之助は、前を合わせて帯を締め掛けていた着物を再びはだけるとさっとその場に脱ぎ捨てた。

「おっ、おい!」

 褌一丁になった祥之助へと結三郎は咎める様に声を掛けた。

 しかし祥之助は結三郎の声を気にした様子も無く、そのまま自転車のサドルに腰を下ろした。

「何だよ。着物が鎖に絡まると邪魔だからな。これなら問題無いだろ。」

「問題あるぞ! 何て格好で自転車に乗ってるんだ!」

 幾ら日之許の価値観が大らかとは言っても、無闇矢鱈に裸を晒してもいいという訳では勿論無かった。

 結三郎は呆れて思わず少し声を荒げてしまっていた。

「正直ちょっと見てみたいッスけど、やめた方が・・・。」

 僅かに本音を漏らし、祥之助の脱ぎ捨てた着物を拾いながら精介も祥之助を止めた。

 風紀や怪我の心配もあったが、しかし何よりも結三郎の機嫌を損ねたくないというのが精介の一番の本音ではあった。

「ほら下りろ。高縄屋敷に急ごう。いつまでもだらだらしている余裕は無いんだ。これじゃいつまで経っても屋敷に辿り着かんぞ。」

 何となく聞かん坊の子供に言い聞かせるかの様な雰囲気を感じさせつつ、結三郎は祥之助の露わになっている尻を軽くぺちぺちと叩いた。

「何でだよー。飛脚だって褌一丁で町中を駆け回ってるじゃねえか。大体、俺達だって相撲取りだし、マワシ一丁であちこちうろうろする事もあるじゃねえかよ。」

 不満気に口を尖らせ、祥之助は渋々と自転車を下りた。

「屁理屈を言うな。」

 結三郎は溜息をつき、精介の持っていた着物と帯を手に取ると祥之助へと押し付けた。

「へいへい。」

 祥之助は仕方無く着物と帯を受け取ると、自転車を名残惜しそうに見ながらもさっさと身に着けていった。

「全く・・・。ほら、行くぞ。」

 結三郎はまた溜息をつくと祥之助と精介を促した。

「うーん・・・着物を尻まではしょるんなら、まあ出来ん事も無いか・・・。それかやはり農作業の時のモンペか、細身の袴とかかな・・・。」

 精介の押す自転車の隣をのろのろと歩きながら、祥之助は自転車に乗る為の衣類をあれこれ考えて始めていた。

 祥之助の独り言を聞きながら、日之許にもシャツやズボンがあるのだから杜佐藩邸に関わりのある衣服の商人の伝手か何かでズボンを入手すればいいのに――と精介は思ったものの、それを口にすると試着だとか何とか言って今すぐズボンを脱がされそうな予感もあったので、そのまま黙っている事にした。



 祥之助の自転車試乗で少し時間を取られてしまったものの、それからすぐに結三郎達は高縄屋敷の正門が見える高縄の町の大通りまで戻ってきた。

「じゃあ、気を付けて帰れよ。」

 結三郎が祥之助にそう声を掛けた後、正門の方へと精介を促した。

 しかし祥之助はそのまま結三郎の横を歩き続け、

「いやいや、まだ帰らねぇって。ついでだし、精介の迎えが来るまで博物苑で茶でも飲みながら宴会二日目をだな・・・。」

 結三郎達の困惑を気にせず無邪気な笑顔で正門へと足を向けた。

「え、いや、その・・・。」

 奥苑に精介を連れて行く事を祥之助に説明する訳にもいかず、結三郎は言葉に詰まってしまった。

 どうしたものかと困惑し、断る口実を思案しながら結三郎が屋敷の正門へと歩き続けていると、往来の向こうから一人の老人が正門に向かって足早に歩いてくる様子が目に入った。

 日之許ではまだ見慣れない、すっきりとした細身で動き易そうな赤い衣服――ジャージの上下を身に着けた彼は、結三郎達の姿に気が付くと笑顔を浮かべながら近付いて来た。

「島津様! 此度は祥之助様がお世話になり申した!」

 どなただろうか――と結三郎が尋ねるまでも無く、老人の赤いジャージの胸元には「杜佐藩相撲部門総監督・朝渦浅右衛門」と白い字で刺繍が施されていた。

「げっ!」

 結三郎の隣で祥之助は思わぬ浅右衛門の出迎えに後ずさり始めていた。

「拙者、杜佐藩の相撲部門総監督、朝渦浅右衛門と申す。此度は我が甥の不始末に巻き込んでしまい大変申し訳ございませんでした。島津様におかれましては甥と祥之助様の両方が大変お世話になり、何と感謝して良いやら・・・。」

 年下である結三郎を侮る事無く丁寧に礼を述べ、浅右衛門は深く白髪頭を下げた。

「それに、甥からの走り書きの手紙ではありましたが、何でも証宮離宮殿の図書館の書物を御贈り下さったとか。証宮の図書は神々から賜った知識を書き記した物。我々杜佐の相撲取りにとってはこの上も無く有難い事ですので、必ず礼を言わねばと思うておりました。」

 相撲と相撲取りをこの上も無く愛しているが故に、それを穢された怒りによって現在にまで至る呪詛を杜佐の土地神は杜佐の民へと施していた。

 しかしそれは一面では土地神と深く結び付いてもいる証でもあり――杜佐の相撲取りは、他の土地の相撲取りよりも相撲が神事である一面を日頃から意識していた。

 そんな彼等にとって、杜佐の土地神ではなくても、相撲に関する知識を神々が書物の形で与えてくれたというのは大変に有難く思い、大きな感謝を抱く事柄なのだろう。

「いえ、私は大した事はしていません。御礼は実際に書物を探して下さった図書館職員に御願い致します・・・。それに、探せばまだ相撲に関する書物が他にも見つかるかも知れませんし・・・。」

 浅右衛門達杜佐の相撲取りの考え方を一応知ってはいたが、杜佐藩の相撲に関する長老格の浅右衛門がこうも丁寧に感謝するとは思ってもいなかったので、結三郎は少し圧倒され戸惑ってしまっていた。

 結三郎の言葉に浅右衛門は頭を上げ、にこやかに笑いながら声を上げた。

「そうですな! 図書館! そうじゃそうじゃ。一般に開放されていると聞いた事があります。そう――図書館に出掛けて相撲の書物を探す! それもまた面白そうじゃ!」

 赤いジャージ姿で腕組みをして浅右衛門は何度か頷いた。

 新しい物好きでもある浅右衛門の関心が証宮離宮殿図書館に移っている内に、祥之助はそっとその場から離れ、高縄屋敷正門の中へと近寄り駆け込もうとしていた。

「――む。」

 祥之助のその様子に浅右衛門は気が付き、鋭い眼光を向けたと結三郎と精介が思った瞬間――祥之助のすぐ前に立つ浅右衛門の姿があった。

「このまま博物苑とやらに行かれるおつもりでしょうが、そうはこの爺やが許しませぬぞ。」

 祥之助の行く手を阻み、にこやかに笑いながら浅右衛門は祥之助の両肩に手を置いて、祥之助の動きを抑え込んでいた。

「うっ・・・。」

 浅右衛門の言葉に祥之助は俯き、呻く様な声を思わず漏らしていた。

 浅右衛門はどうやら祥之助がまだ杜佐藩邸に戻るつもりが無いというのを見透かして、高縄屋敷に戻って来る頃合いに合わせて出迎えに来たと言う事の様だった。

「いや・・・その・・・。」

 流石の祥之助も浅右衛門には逆らえず、助けを求めて結三郎と精介の方へと顔を上げた。

 しかし結三郎は微笑みながらその様子を見守るだけで、何も手出しはしようとはしなかった。

 杜佐藩邸で相撲の稽古に励む事は良い事だし、精介を奥苑に連れて行くのに祥之助を同行させる訳にもいかず、浅右衛門の出迎えは結三郎にとっては丁度良かった。

 精介の方も、結三郎の隣で自転車を停めて戸惑いながら、祥之助と浅右衛門の様子を見ているだけだった。

「甥の事や相撲大会の話も聞きたいし、何より藩邸での稽古が暫く休みになっておりましたからな。そろそろ真面目に稽古に励んでもらわなければなりませぬ。よろしゅうございますな。」

 にこやかな表情でありながらも、有無を言わせない圧力は流石というべきなのか――浅右衛門の強く言い聞かせる様な言葉に、祥之助は全く逆らう事は出来なかった。

「朝渦殿の御出迎え、丁度良うございました。先ずは此度の事は武市殿から御聞き下さい。わたくしも後日改めて御挨拶に御伺い致します。」

 そこへ更に駄目押しの結三郎の言葉だった。

「ゆ、結三郎! おまっ・・・! ひどっ・・・!」

 微笑みを向けて来る結三郎に、祥之助は絶望に青褪め恨めし気な表情を返した。

「御気遣いかたじけのうございます。――さ、祥之助様、帰りましょう。」

 浅右衛門は深々と頭を下げて結三郎に礼を述べると、祥之助の肩を軽く叩いて促した。

 とうとう諦めがついたのか――見えない綱に引かれるかの様に最早逃げ出す事も無く、祥之助はとぼとぼと浅右衛門の隣を歩き、杜佐藩邸へと帰り始めた。

 そこまで藩邸での稽古が嫌なのか――結三郎には不思議だったが。それはそれとして、幾ら祥之助が親しい間柄とは言え、流石に奥苑の本当の様子を見せる訳にはいかなかったので今日のところは余計な事は言わず見送る事にした。

 とはいうものの――。

 こちらを振り返りもせず大きく肩を落として帰っていく祥之助の後ろ姿は、自業自得とはいえ何ともひどく憐れみを感じさせるものだった。

 丁度良かったと浅右衛門に押し付ける様に祥之助の事を送り出してしまったが――自覚は薄くとも祥之助に惚れた弱みもあって、結三郎は何とも可哀想で落ち着かない思いをいつの間にか抱いてしまっていた。

 この一週間、共に毎日照応寺に通って春乃渦部屋の手伝いをしたり、相撲大会を観戦したり、泣き喚く自分の姿を晒してしまったり、身の上話をしてしまったり――その時々、共に在った祥之助の姿は、結三郎にとっては忘れ難く慕わしいものとして記憶に刻まれていた。

「――しょ、祥之助・・・殿! ・・・また、な!」

 憐憫の感情に結三郎は思わず名前で声を掛けてしまったものの――何か言いたい事がある訳でもなく、気の利いた言葉も思い付かなかったので、ありきたりな別れの挨拶の言葉を掛けるだけになってしまった。

 だが念願の結三郎からの名前呼びに、祥之助は驚きつつも何とも嬉しそうに目を潤ませて結三郎を振り返った。

「おうッ!! またな! あ、精介もな!」

 機嫌良く笑みを浮かべ、軽く手を上げて応えると、祥之助は先刻までの落ち込みとうって変わって軽やかな足取りで歩き始めていた。

「は、はい! また!」

 精介も慌てて挨拶を返した。

 そんな祥之助の様子に苦笑しながら、浅右衛門も結三郎と精介をもう一度振り返り軽く会釈をすると、祥之助と共に杜佐藩邸へと帰っていった。

 祥之助と浅右衛門の帰っていく様子を結三郎と見送りながら、現金な祥之助の姿に精介は軽い苦笑を浮かべてしまった。

「何か、俺、オマケっぽかったッスね。」

 あっと言う間に機嫌を直した祥之助の様子に呆れつつも、少し残念そうに精介は溜息をついた。

 一途に結三郎に好意を向ける祥之助に対して――結三郎も祥之助の事を憎からず思っているのは精介にも判っていた。

 ――精介も祥之助の事は、結三郎程ではないにしても憧れ、好意を抱いてはいたのだったが。

 結三郎へ向ける好意には敵わなかったと残念に思いながらも、今からの博物苑・奥苑での事については自分と結三郎だけの秘密であるのだから――と、祥之助に対してのささやかな優越感が精介の胸に湧いていた。

 ただ、祥之助とももっと仲良くなりたいという気持ちもあって、罪悪感が同時に精介の胸に湧き起こって入り混じっていたが。

「いや、オマケって・・・。あいつの事だから大した考えは無いと思うぞ。別に山尻殿の事を仲間外れとかそんなつもりは無いだろう。」

 精介の言葉に結三郎は苦笑しながら説明した。

「あ、まあ確かに。」

 精介は大きく頷いた。一週間のまだ浅い付き合いではあったが、精介も祥之助の性格は大分理解出来る様になっていた。

 それからもう少しの間、去っていく祥之助と浅右衛門の後姿を見送っていたが、彼等の姿がすっかり遠くなったところで結三郎は高縄屋敷正門へ入るべく精介を促した。

「少し手間取ってしまったが、やっと本題だな。――さ、博物苑に行こう。」



 精介には自分の後ろで待ってもらい、正門の門番に結三郎は客人を招いた事を説明した。

「私と義父上の客人、山尻精介殿だ。義父上が、彼の所有する珍しい乗り物を見たいというので本日来ていただいたのだ。」

 結三郎が説明している後ろで精介は、高縄屋敷の正門を物珍しそうに見上げていた。

 大きな鉄の外枠と鋲とで補強された分厚い樫の門扉は固く閉ざされており、開いた事等今まで一度も無いかの様に精介には思えてしまった。

 チョンマゲでこそなかったが門前に立つ二人の門番の姿も時代劇そのままに、薄い紺色の羽織袴に六尺棒を構えて通用口を塞いで立っていた。

 大柄で厳めしい顔付の門番達ではあったが、流石に屋敷の主の息子である結三郎には丁寧に対応し、すぐに道を開けてくれた。

 精介の押す自転車を見て門番達も大きく頷き納得している様だった。

「自転車ですか・・・。殿が喜び過ぎて舐め回す様子が目に浮かぶ様でございます。」

 苦笑交じりの表情で門番の一人が軽口を叩いた。 

 それにやはり博物苑を擁する高縄屋敷の門番というべきか、彼等は自重はしつつも精介の自転車を興味深そうに目を輝かせながら眺めていた。

「そうだな・・・。多分、想像通りに舐め回すと思う。」

 結三郎も門番達にそう言って笑い、精介と共に通用口を潜って屋敷の中へと入っていった。

「ど、どうも・・・。」

 自分よりも遥かに大きな体格の門番達を怖々と見上げつつ、精介は軽く挨拶をして結三郎の後に続いた。

 門の中に入ると屋敷の正面玄関まで続く玉砂利を敷き詰めた道が伸びており、その両脇をツツジ等の花木が玉造に仕立てられて並んでいた。

「おおー、マジ武家屋敷って感じッス!」

 精介は初めて見る本格的な和風建築に感嘆の声を上げた。

 元の世界とは恐らく細かい部分では様式等は違うのだろうけれど、如何にもな和風の庭園と邸宅は時代劇のセットに迷い込んだかの様な感覚を精介に抱かせていた。

「屋敷の案内はまた後日にしよう。あ、今日のところは博物苑の見学もお預けだな・・・。」

 観光客の様に敷地のあちこちを物珍し気にきょろきょろと見回しながら歩く精介に、結三郎は微笑みながらも残念そうな目を向けた。

「そうッスね。今日は色々と立て込んでるし――また今度、御願いします!」

 日之許にまた来る事が出来るし、結三郎が精介の世界に遊びに来る事も出来る――。

 当初思い込んでいた様な、元の世界に帰されてそれっきり日之許と――結三郎や祥之助達と縁が切れてしまうという訳ではないのだ。

 また今度――次の機会があるという事が、こんなにも嬉しく楽しみであると言う事を精介は初めて知った。

 結三郎に案内され、精介は砂利敷きの地面に手こずりながらも何とか自転車を押していき、敷地の奥へと向っていった。

「――結三郎様、お帰りなさいませ。」

「――あら、なかなか素敵な自転車ですね。」

 途中、結三郎が出掛けていた事を知っていた屋敷の侍達や使用人達に、声を掛けられたり自転車や精介の着ているシャツやズボンに軽い驚きの目を向けられたりはしたものの、然程奇異な目で見られる様な事は無かった。

「また殿が御取り寄せになられたのかしら? あたくし達も乗ってみたいわね。」

 年嵩の作務衣姿の女性の鳥飼部達が庭園の通路を通り掛かり、結三郎と精介への挨拶の後に好奇心に目を輝かせて言葉を交わし合っていた。

 精介の制服姿や自転車に多少驚きながらも、むしろ興味深そうにしたり――或いは逆に、また殿の学問研究の一環か、と、さして興味を抱かず受け流す者も意外と多く、そうした高縄屋敷の者達の様子に精介は却って驚いてしまっていた。

「・・・力士長屋に飛び込んだ初日はみんな大騒ぎだったんスけどね・・・。」

 この世界にやってきた初日の事を思い出していた精介の呟きが聞こえ、先導していた結三郎が振り返った。

「ああ、普通の町中だと自転車とかシャツやズボンはまだまだ珍しいものな。」

「ですよねー。」

 結三郎の言葉に、精介は高縄屋敷の者達への自分の印象がそうおかしいものではないと知り、ほっと息を吐いた。

「ええとそれで――この高縄屋敷についてだが、佐津摩藩の別邸で、前藩主島津茂日出公が様々な学問の研究を行なう為に、博物苑という施設を屋敷の中に構えていて・・・。」

 そうしてまた博物苑へ続く庭園の通路を歩きながら、結三郎は観光案内の様な調子で精介へと高縄屋敷の事等を説明し始めた。

「――博物苑は国内外の様々な動植物を集めて飼育したり栽培したり、他にも色々と書物や物品を集めて研究したり・・・。証宮離宮殿に下ろされた神仏や精霊達からの知識や技術を研究したりと、兎に角学問に関する様々な事を行なっている所なんだ。」

「へええ・・・って、神仏?」

 自転車を押しながら結三郎の解説を聞いていると、精介の方の常識には馴染みの無い言葉が聞こえてきた。

「ん?」

 精介の疑問の思いが結三郎にも判った様で、結三郎は立ち止まって精介を再び振り返った。

「あー、すんません。学問の研究とかと、神様仏様の事がイマイチ結び付かなくて。」

 精介は坊主頭を掻きながら結三郎へと申し訳無さそうに頭を下げた。

 日之許の世界では恐らくは最先端の学問の研究等を行なっていると思われる博物苑の様子と、神仏や精霊と言ったものがどう関わり合っているのか、精介の世界の常識では理解出来ない事だった。

「いや別に謝らなくとも。――そう言えば神仏や精霊の在り方も、世界によっては随分と違うと聞いた事はあったな・・・。」

 精介には精介の世界の常識というものがあり――結三郎は自分の方こそ、日之許での常識に縛られていたと反省した。 

「ええと、世界によっては神仏や精霊が物理的に存在していたり、していなかったりしているらしくて、人間社会にも影響を与えたり与えなかったりと実に様々らしいのだが。――というか、山尻殿の世界は一応、日之許と様子が似ているらしいと奥苑の者達から聞いたのだが、神仏の概念自体は一応ある・・・よな・・・?」

 説明をしようとして、そもそもの前提条件等がどうなのかというところまで心配になってしまい、結三郎は恐る恐る精介へと問い掛けた。

 精介も自転車を押す手を止めて立ち止まり、慌てて頭を大きく縦に振った。

「はい! 俺はよく判んねえッスけど、ちゃんと俺の世界にも寺とか神社とかあるし、そこに神様仏様は祀られてるッス。」

 精介の答えに結三郎も安堵の息を吐いた。取り敢えずは神仏の話をしてもそれなりに通じそうでよかったと安心した。

 結三郎は精介と共に再び歩き始め、説明を再開した。

「この日之許の世界では実際に神仏や精霊が存在していて――私は見た事も会った事も無いのだが、受肉と言って生身の肉体を神々がこの現世に作り出したり、証宮離宮殿で帝が神降ろしの儀という儀式を行なったりした時等に顕現したりして・・・まあ、特定の条件の時だけ人間と神々が交流する事が出来る・・・らしい。」

「はい・・・。」

 結三郎自身が充分には理解出来ていない事だったので、何処か曖昧な説明になってしまい、精介も言葉通りに聞きながらもやはり何となく判った様な判らない様な、そんな曖昧な返事を口にするだけだった。

「まあ、義父上は若い頃に佐津摩の土地神様に会った事があるというし、今日は帝もおいでになっておられる筈だから、きちんとした説明はそちらの方々から聞いた方がいいと思う・・・。」

 精介にきちんとした説明をしてあげようと、結三郎は傍らを歩く精介へと生真面目な表情を向けた。

「あー・・・まあ、そこまで専門的な話は聞かなくても大丈夫っス。」

 自転車を押しながら精介は軽く頭を横に振った。

 神仏や精霊の事はよく判らなかったものの、自分の身に異世界転移というよく判らない事が起こった位なので、神仏がどうとか言われたところで今更の事ではあった。

 そんな話をしている内に庭園の通路が行き止まりになり、簡素な竹垣が巡らされた一角に結三郎と精介はやって来た。

 結三郎にとってはいつもの見慣れた小振りの茅葺の庭門の前に立つと、精介を中へと促した。

 門の横には「佐津摩藩 博物苑」と太い筆文字で書かれた看板が掛けられており、精介はしげしげと看板や庭門を眺めた。

「ここからが高縄屋敷の博物苑の敷地になる。――ようこそ、博物苑へ。」

「は、はい。お邪魔します・・・。」

 結三郎に促され、精介はそう言って自転車を押しながら庭門の中へと進んでいった。



 庭門から先の敷地――博物苑・表苑も基本的にはそれまでの庭園とそう大きな違いは無く、丁寧に手入れされた木々や草花が植えられ、暫く歩くと竹垣で囲われた中に兎やアヒル等の小動物が飼育されている区画があった。

 精介の印象としては元の世界での動物園や公園を思い出させるものだった。

 一応は一般客への開放もされているとはいえ、佐津摩藩別邸の中にあると言う事で敷居が高く思われており見学者は殆ど全く居らず、表苑を行き交う者達は作務衣姿の鳥飼部達ばかりだった。

 鳥飼部達と挨拶を交わしながら歩みを進めていたが、やはり精介の格好や自転車については興味深そうな目を向けられはするものの、力士長屋の者達の様に物珍しいものとして騒がれる事は全く無かった。

「ええと、この辺りまでが見学者というか観光客向けの、花や葉っぱの綺麗な薬草を観賞してもらったり、気性の大人しい小動物と触れ合ってもらったりする区画で、ここから先は檻等に入っている動物を見学してもらう区画になる。」

「へえ・・・。ホント、俺の世界の動物園とかみたいな感じなんスね。」

 結三郎の説明を聞きながら、竹垣で囲われた中でのんびりと餌を食べている兎や山羊の姿を精介は眺めていた。

「あ、こっちの世界にもリクガメが居るんスね。」

 兎や山羊達から少し離れた場所で甲羅の上に柴犬の仔犬を乗せて、大きなリクガメがのそのそと歩いていた。

 そこに箒と塵取りを手にした小柄な坊主頭の少年――安吉が、いつもの白い作務衣姿で竹垣の中へと掃除をしに入って来た。

「あ、結三郎様! 殿の御用事でお出掛けになられていたと伺っておりましたが。」

 結三郎達の姿に気が付き、安吉はにこにこと目を細めて笑い会釈をした。

「ああ。先程戻ってきたところだ。」

 結三郎も安吉へと笑い掛けた。

 箒を手にしたまま安吉が結三郎達の方へと来ると、仔犬もリクガメから下りて走って付いて来た。

 誰が名付けたのか日出丸(ひでまる)と書かれた小さな木の名札が首元に括り付けられていた。

「暫く勤務予定が合わず御無沙汰でございました。奥苑の御仕事の方は如何ですか? また殿に振り回されておられるのではありませんか?」

「まあ、相変わらずの感じだな。」

 冗談交じりに安吉が結三郎に話し掛けると、結三郎も苦笑を浮かべながら答えた。

 それから結三郎は隣に居る精介を示し、安吉へと紹介した。

「山尻精介殿だ。」

「よ、よろしく・・・。」

 精介は安吉へと頭を下げて挨拶をした。

 安吉が挨拶するよりも先に仔犬――日出丸が格子に組まれた竹垣の間から顔を出して精介のズボンの裾の匂いをふんふんと嗅いでいた。

「宜しくお願い致します。北別府安吉(きたべっぷ やすきち)と申します。――これ、日出丸!駄目ですよ。」

 安吉も精介に会釈をし、それから日出丸を引き離そうと手を伸ばした。

 しかし意外とすばしっこく日出丸は安吉の手を逃れ、軽くその場から下がって助走を付けると軽々と竹垣を飛び越して結三郎の横へと着地した。

 結三郎や鳥飼部達関係者以外の来客が珍しいのか、日出丸は精介と自転車の周囲を歩き回り、興味深そうに何度も匂いを嗅いでいた。

「も、申し訳ありません・・・。」

 竹垣の向こう側で安吉が大きく頭を下げて謝った。

「あ、いえ、大丈夫ッス。犬は別に苦手じゃないんで。」

 精介はそう言って自転車のスタンドを立てた後屈み込み、日出丸の鼻の近くへとゆっくりと手を近付けた。

 精介の手の匂いをゆっくり嗅いだ後、日出丸は機嫌良さ気に尻尾を振りながら自転車のすぐ横に行くと、そこでお座りの体勢になった。

「日出丸も自転車が気になる様でございますね。」

 日出丸の振舞いに溜息をつきながら、しかし安吉の方も自転車が気になる様で興味深そうな目を向けていた。

「ああ――ええと、義父上が自転車を見てみたいというので、彼の所有している自転車を持って来てもらったんだ。」

 安吉の視線に気が付き、結三郎は今更ながら一応の言い訳を口にした。

 結三郎の言葉に安吉は何度か頷き、

「成程。わたくしも証宮新報の記事で挿絵を見ただけですが、大した御品ですよね。車輪が縦に並んでいるのによくも転倒せずに走るとか。曲芸師みたいでございますね。」

 感心しながら隅々まで自転車を見つめていた。

「それに証宮新報の挿絵の自転車は木製の車輪や椅子が大仰に取り付けられていて試作品と言った風情でしたのに、この自転車は硬軟様々な素材で部品が作られていて、形も洗練されており実用的ですよね。本当に素晴らしゅうございます。」

 流石は様々な知識や技術に普段から触れている博物苑の鳥飼部といったところで、安吉は精介の自転車が日之許の物と比べて遥かに進んだ物だと無意識に見抜いていた様だった。

「ハハ・・・。そ、それ程でも・・・。」

 安吉からの称賛に精介は困った様に笑うしかなかった。

「まあその、その洗練された自転車を義父上が実際に見てみたいと言う事で、とある藩の若君が所有しているのを持って来てもらって――。」

 結三郎も安吉の様子に困った様に笑いながら一応の言い訳を言い足した。

 日出丸が結三郎の着流しの裾へと鼻先を突っ込み匂いを嗅いでいたが、何故かふーっと小さな溜息をつく様な仕草をした。

 そんな日出丸の様子を少し訝し気に安吉は見たものの、大して気にも留めず結三郎と精介に感心した様子で笑みを向けた。

「そうですねえ。ここまで優れた御品だと高級品ですものねえ・・・。藩の若君でもないとお持ちになれないでしょう。」

 だがその笑みはすぐに苦笑が混じり始めた。

「・・・あ、今日の内には自転車と山尻殿はお帰りになれないのではないですか? 殿が嬉しがって齧り付いたり乗り回したりし続けるのが目に浮かぶ様でございます。」

 舐め回すの次は齧り付くときたか――。

 彼等の茂日出への評価に、結三郎も全く間違ってはいないなと内心で溜息をついた。

 今日の内に精介を帰せるのか――安吉の言葉が当たってしまわないようにと、結三郎は茂日出が自転車に入れこまない様にきちんと気を付けねばと思ったのだった。



 安吉の仕事の邪魔をするのも悪いし、先を急がねばと、結三郎と精介は安吉と日出丸に見送られながら奥苑へと再び向かい始めた。

「俺が若君って、何か申し訳無い感じっスね。ただの一般市民というか、ただの学生なのに・・・。」

 結三郎の隣を自転車を押しながら歩き、精介は先程の安吉の様子や今まで過ごした力士長屋の人達の様子を思い返していた。

 日之許ではまだ珍しく高級品であるシャツやズボンを着て自転車を持っているのは、金持ちの豪商か藩の若君位である――異世界転移の事を説明出来なかったので、彼等のそんな思い込みを改められないままだった事に精介はもやもやとした罪悪感を抱いていた。

「まあ、仕方が無いさ・・・。いつかきちんと説明出来る日も来るだろう・・・。」

 何処か寂しそうに、申し訳無さそうに結三郎は呟いた。それは結三郎自身の願いでもあったのだろう。

 お互いには知る事は無かったが、そう呟きを漏らした時に結三郎も精介も、何故か祥之助の事を一瞬思い浮かべていたのだった。

「そうっスね・・・。いつかはちゃんとみんなに説明したいっスね。」

 精介も結三郎の言葉に頷いた。

 そうして動物達の入った檻や小屋の並ぶ一角を通り過ぎ、更に敷地の奥へと進んでいき――背の高い漆喰の塀が連なる場所へと二人はやって来た。

 辺りには鳥飼部達の姿も無くなり動物達の鳴き声も途切れ、急に静かになった事に精介は思わず辺りを見回した。

「こっちだ。」

 結三郎は慣れた様子で精介を促すと、いつもの奥苑の白い金属製の扉の前へと立った。

「ここは門番の人とかは居ないんスか?」

 扉の前に立つ結三郎の横に並びながら精介は問い掛けた。

「ああ、必要無いからな。」

 日の光を反射してうっすらと自分達の姿を映している扉に、結三郎はそっと掌で触れた。

 薄白い光沢のある金属の扉の表面に一瞬、幾何学的な模様が浮かび上がった後、すぐに消え去った。

 人物の認証確認が終わると、扉がひとりでに音も無く滑らかに開いていった。

「えっ!?」

 幕末や明治の様な雰囲気のこの世界には全くそぐわない、進んだ技術を感じさせる機械装置に精介は思わず驚きの声を上げてしまっていた。

 開いた扉の向こうに立つ長身の陰が結三郎と精介へと頭を下げ、声を掛けてきた。

「お帰りなさいませ結三郎様。そして迷い人の御方、ようこそいらっしゃいました。」

「なっ・・・!?」

 自分よりも遥かに背の高いひょろ長い所から掛けられた声に、精介は反射的に声の主を見上げたものの――驚きにそのまま固まってしまっていた。 



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メモ書き


 新年度も始まり、ヲカマのオッサンの本業の方もそれなりには忙しい毎日です。2月からの嫌な忙しさも何とか一段落しかけておりほっとしています。

 さて、第二話其の二十であります。以前の後書きで第二話は二十位で終わるかしらねえ等と寝惚けた事を書いていましたが、もうちょっとだけ延びてしまいそうです。ねちっこく書くのが好きなのです。異論は認めませぬ。

 第二話を書き終えたら、タイトルのロゴとか、大まかなキャラデザとか描いたりはしてみたいと思っているのですが、相変わらず体力気力集中力が無いのでどうなるかは判りませんが。運良く制作する事が出来たらピクナントカとか、みてみんとかに投稿してみたいとは思います。

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