第二話ふたつめ、しるすこと「相撲部員 山尻精介の日之許国への迷い込みに就いて記す事」 其の十五 精介に送還を拒絶され、結三郎の号泣するに就いて記す事

第二話ふたつめ、しるすこと

「相撲部員 山尻精介の日之許国への迷い込みに就いて記す事」

 「其の十五 精介に送還を拒絶され、結三郎の号泣するに就いて記す事」


 表彰式は終わったものの、暫くは力士長屋の者達や結三郎、祥之助は小土俵の方に留まって春乃渦部屋の者達と話し込んでいた。

「――ほんと、勝って良かった!」

「明春さん、あんた案外強かったんだねえ。いつもぼやっとした顔してんのにさ。」

「やる時はやるもんだな!」

 長屋のおかみさん達や八百屋の一郎等が皆の勝利を喜び、口々に誉め称えた。

「――まあ、長話も何じゃし、そろそろこの辺で一旦解散にしようか。」

 科之川部屋の親方との挨拶を済ませて戻ってきた広保親方が、皆へと呼び掛けた。

「今晩は照応寺でささやかだが祝勝会もするので、長屋の皆も良かったら来て下され。」

 親方の言葉におかみさん達は笑顔で頷いた。

「あいよ! 賑やかにやろうじゃないの。」

「何か作って持って行くわね。」

 早速今晩の宴会の用意に取り掛かろうと、おかみさん達は一先ず長屋へと帰る事にした。

 おかみさん達を見送り、明春達はマワシを解いて着替えようと自分達の着替えの入った風呂敷包みへと手を伸ばした。

「あれ? 精介何処行った?」

 そこで精介の姿が無い事に明春が気が付いた。

 明春の言葉に皆も辺りを見回すが、近くには精介の姿は見当たらなかった。

「あ、精介の荷物も無いぞ!」

 春太郎が自分の荷物を置いていた近くを見たが、精介の着替えの風呂敷包みも無くなっていた。

 どうやらマワシ一丁の姿で居なくなったという訳ではなさそうだったが、一体急に何処に行ってしまったのか――心配そうな表情で皆はお互いの顔を見た。

「――ちょっと近くを探してきます。」

 心配気に顔を曇らせ、結三郎は皆にそう言うと客も少なくなり始めた境内へと駆け出した。

「お、おい結三郎!」

 焦る様な結三郎の様子に、祥之助は思わず呼び止めるかの様に声を掛けるが、

「手分けして探そう。他の場所を頼む。」

 結三郎は少し振り向き祥之助にそう言って、再びすぐに走っていった。

「俺達も探そう。」

 明春達もマワシの上に着流しを軽く羽織ると、精介を探しにあちこちに散っていった。

「山尻殿・・・。」

 少しずつ店仕舞いの作業を始めていた屋台や、楽しそうに語らいながら帰ろうとしている客達の中に精介の姿を探しながら、結三郎は精介の事を案じ顔を曇らせていた。

 やはり何か――不安や心配事等で思い詰める様な事があったのだろうか。

 元の世界への帰還について、きちんと落ち着いた所で詳しく話す事が結局今日まで出来なかったので――やはり強く不安に思い続けていたのではないか? 心を許し始めていた春乃渦部屋の者達にも言えない様な心配事が何かあったのではないか? 

 結三郎はもっと強引にでも話す機会を作っていれば良かったと強く悔やみながら、境内のあちこちを小走りに駆けて精介の姿を探し続けた。



 時刻としてはもう夕方になろうとしてはいるのだろうが、夏の時期の事で辺りはまだ明るい――暑い程の日差しが満ちており、寺の植え込みの木々にしがみ付いている蝉の声もうるさく響いていた。

 優勝に喜び合いお喋りに夢中になっていた皆の隙を見てそっと抜け出し、精介は着替えの入った風呂敷包みを持って寺の裏にある小さな林の方へとやって来た。

 夏祭りの今日はわざわざ裏の林の方へとやって来る様な者も居らず、蝉の鳴く声が響いている事が却って辺りの静けさを強調しているかの様だった。

 そこでマワシを解いて着替え、丸めたマワシを風呂敷に包むと――精介は溜息をついた。

 とうとう――夏祭りの相撲大会も終わってしまった。

 小さな大会ではあったが、それでも自分の男色の事を気にせずに精一杯相手にぶつかって、試合に勝つ事が出来た――それは確かに精介にとって大きな意味を持つ忘れ難い勝利ではあったし、とても大きな喜びがあったが。

 それを美しい、楽しかった思い出として――自分はもうすぐ結三郎によって、元の世界に帰されてしまうのだろう。

 敢えて積極的には結三郎には近付かず、元の世界への帰還の話を避けてきたが、この相撲大会が終われば帰されるのだという漠然とした予感はあった。

 だがどうしてもそれに素直に従う気にはなれず・・・・・・どうしても元の世界へと帰りたいという気持ちにもなれず。

 結局、元の世界への帰還が目の前に迫ると、春乃渦部屋の皆の所からも逃げ出してしまった・・・。

 椎や楠、野生の椿の木々が生い茂り涼しげな日陰を作っている林の入り口で、精介はこれからどうしたらいいのかと少しの間ぼんやりと立ち尽くしてしまっていた。

 自分を温かく迎え入れてくれた部屋の皆からも逃げ出して、これから更に何処に行こうというのか。

「・・・っ!」

 だが折角の物思いも、あちこちから飛んできた薮蚊によって中断させられてしまった。

 汗ばんだままろくに拭いていなかった腕や背中、太腿に痒みが次々と現れ、精介は腕に止まっていた蚊を叩いた。

 人間の汗等の匂いや呼気に反応して寄って来るとか何とか、何処かで聞いた様な気がしたが――試合後のまだ行水もしていない様な状態では、蚊がたかってくるのは当たり前だった。

 蚊のせいで林の中には長居は出来ないと判ったが・・・ここから何処に行こうか、精介は途方に暮れてしまった。

 どうしても絶対に帰りたくないという訳ではないけれども――しかし、どうしても絶対に帰りたいとも思えず。

 精介はずっと、気持ちも考えもまとまらず迷ったままだった。

 ――いいなあ~。嬉しいなあ~。・・・もし、そうなれたらなあ・・・。

 力士長屋に住んで働きながら春乃渦部屋で相撲を取りたいと精介が言った時の、明春達の嬉しそうな――しかし寂しそうな笑顔を精介は思い出していた。

 共に同じ相撲部屋に所属して相撲を取って欲しいと明春達も思ってはいても、やはり精介には帰るべき所があるのだから――と、彼等は精介の事を第一に考えてくれていた。

 精介が無理矢理に我を通して力士長屋に住み続け、春乃渦部屋で相撲を取り続けたとしても・・・明春達や親方も、きっとそれは心の底からは喜んではくれないだろう。

 だから、精介もまた――明春達からの思い遣りの気持ちを大事に考えようと、やっと決心した。

「・・・仕方無いよな・・・。帰るか・・・・・・。」

 ぼんやりと呟くと、精介は風呂敷包みを手にして元来た道を歩き始めた。

 まだたかってくる薮蚊を手で払いのけながら、林から出て寺の本堂の裏手へと出て来ると、寺のあちこちをせわしなく見回しながら走っている結三郎の姿を見つけた。

 結三郎もまた、本堂の裏の椿や椎の木の茂みの中から出て来ようとしていた精介の姿に気付き、心の底から安堵した表情で急いで駆け寄って来た。

「こんな所に居たのか! 良かった。心配したぞ! 皆も探しているぞ。」

 軽く息を弾ませながら結三郎は精介の前にやって来た。

 憧れの結三郎や、世話になった明春達に心配をかけてしまった申し訳無さや気まずさに、精介は結三郎から目を逸らし俯いた。

「ご心配をお掛けして、すんません・・・。」

 そんな精介に結三郎は安心させようとそっと笑い掛け、精介の肩へと手を伸ばした。

「構わないよ。元の世界に帰れるかどうかとか・・・何か、色々と悩んだり考えたりする事もあったのだろう? 取り敢えず、皆の所へ帰ろう。」

「――すんません。・・・その・・・あんまり帰りたくなくて。・・・どうしても帰りたいっていう程の気持ちも無いって言うか・・・。ハハ・・・。」

 苦笑混じりにぼそぼそと呟かれた精介の言葉に、結三郎の手が凍り付いた様に止まった。

「――――え・・・・・・っ!?」

 思わず声を上げ、結三郎は申し訳無さそうに苦笑いをしている精介を見つめ、伸ばしかけていた手を力無く下ろした。

「・・・何か、元の世界に帰ってもなあ・・・ていうか・・・。」

 ぼそぼそと言い訳の様な言葉を続ける精介を見ながら、結三郎の胃の腑には何か小さく冷たい物が沈み込んだ様な錯覚があった。

 ひどく精介の様子がゆっくりと遅くなった様な、精介の姿が薄幕を一枚隔てた向こうに見えるかの様な・・・おかしな感覚が結三郎の中に起きていた。

 ――こいつは、一体、何を言っているのだろう?

 結三郎があんなに――元の世界への帰還について、精介に心配や不安に何か思い詰める様な事でもあったのではないだろうかと心を傷め、気を揉み、焦っていたというのに。

 慣れ親しんだ自分の世界から突然に見知らぬ異世界へと飛ばされて、どんなにか不安ではないだろうかと、結三郎は精介の事を心配していたというのに。

「・・・帰りたくないって・・・。何で・・・だ・・・?」

 呆然と結三郎は精介を見つめたまま、思わず絞り出す様な声で問い掛けてしまっていた。

「親兄弟とか、親戚とか、友達とか知り合いとか・・・。皆、心配しているんじゃないのか・・・?」

 結三郎の問いに、結三郎の呆然とした様子に気付いていない精介は何処か煮え切らない様な物の言い方でぼそぼそと答えた。

「――親って言っても、両親は事故で死んでしまってるし・・・。まあ、その、引き取ってくれた親戚の人達も良くはしてくれるんですけど・・・。学校の友達も、まあ仲はいいんですけど・・・。何て言うか・・・。」

「帰れなかったら、親戚とも友達とも・・・・・・縁のあった人達ともう二度と会えなくなるんだぞ? それに、日之許は言葉や文字は幸いそっちの世界と似通っていたから良かったけど、でも、それでも生活習慣とか、町の様子とか、他にも色々な生活環境とか! 全然違うだろう!?」

 結三郎は知らず、苛々と精介を問い詰めるかの様な口調になっていった。

「今まで住み慣れた世界から、突然違う世界に迷い込んでしまって・・・! 元の世界から切り離されてしまって、心細くならないのか? 辛くならないのか!?」

 きつくなり始めた結三郎の口調に、精介は少し驚きつつやっと顔を上げて結三郎を見た。

「結三郎さん・・・?」

 心配してくれるのは有難かったが、結三郎は何をそんなに苛付いて問い詰めてくるのだろうか――と、一方的に責められている様に感じ始めていた精介も、次第に反発心を抱いてしまっていた。

 元の世界から切り離されてしまって――心細くならない筈が無い。辛くならない筈が無い。

 結三郎は、精介を責める様に言いながら――自分の実父の事を強く思い返してしまっていた。

 結三郎が九歳の時に亡くなってしまった父の記憶は・・・元気な頃の父の姿は何処か曖昧で朧気な事も多かったが――しかし、病に伏せったやつれた父の顔や、夏の佐津摩のひどく蒸し暑い空気と強い日差しだけははっきりと脳裡に残っていた。

「いや、ちょっと、結三郎さん・・・? え? な、何スか・・・。」

 精介は結三郎の突然の苛立ちに戸惑い、気圧されながらも――何故自分がこんな風に一方的に問い詰められなければならないのか、と反発する気持ちが次第に強くなっていった。

 憧れや好意を結三郎に抱いていた分、余計に幻滅し、精介もまた苛立ち始めていた。

「何で・・・何で、帰りたくないだなんて・・・!」

 怒りすら感じさせる様な結三郎の精介への口調と視線だった。

 戸惑いつつもむっと不愉快そうに眉を顰めた表情の精介を睨みながらも、結三郎はやつれて布団に横たわっていた父の姿も同時に見つめていた。

 父は――あんなに帰りたがっていたのに。

 あんなに――父は故郷に焦がれていたというのに。

 なのに、この目の前の精介は何と言っていた?

「――帰れる癖に、贅沢を言うなっっ!」

 思わず怒鳴り付ける様な声を上げてしまい、結三郎は精介を睨み付けてしまった。

「――っっ!!」

 だが、精介にも帰りたくないと思うだけの相応の気持ちの重さがあった。

 それを知りもせず、一方的に怒鳴ってくる結三郎に対して精介もまた瞬間的に頭に血が上ってしまうのを感じてしまった。

「――あんたに何が判るっっ!!!! うるせえんだよッッッ!!!!」

 精介もまた怒鳴り声を上げ、思わず結三郎の着流しの襟元へと掴みかかった。

 驚きに軽く肩を震わせつつも、精介を睨み続けている結三郎の様子に構わず、精介は襟を掴んだまま揺さぶった。

「俺のコトろくに知りもしねえで偉そうに言うな!! そこまでして帰してもらわなくてもいいし、帰りたくねえんだよ!! ――この世界のトサとかサツマとか、まだ男色に寛容みたいだけど、俺の世界じゃとっくに廃れてる! 男色だってバレたらみんなから気持ち悪がられたり、除け者にされたりするんだよ!!」

 あんなに可愛らしいと思い、憧れながら見ていた結三郎の丸顔を、精介は今怒りながら顔を寄せて睨み付けていた。

「あんたも開けっ広げには言い触らしている訳じゃないだろうけど、男色だってぽろっと言ってしまえる位にはユルい空気の中で生活してるじゃねえか! 俺が、春乃渦部屋のみんなの雰囲気にどれだけほっとしたか・・・救われたか! あんた判んねえだろ!!」

 結三郎が春乃渦部屋の稽古を手伝ってくれた初日――祥之助の男の好みの話に続いて結三郎に男色の事を尋ねた時の、照れてうろたえていた結三郎の様子が何故か今はとても遠くに離れてしまっているかの様に精介には思えていた。

 明春はオッサン専で、庄衛門は肥満専。好みのタイプをあれこれ言うのは男色も女色もお互い様だ、と利春や春太郎は苦笑していた――精介があれ程悩んで隠していた男色の事すら他愛の無い話題の一つとして、稽古の合間の休憩時間に喋り合う。

 それが精介にとってどれ程楽しく、また安心出来た事なのか・・・。

「養子とはいえ殿様の子供で、男色にも寛容な藩で・・・・・・俺からしたら恵まれ過ぎてるあんたなんかに・・・。」

 精介がそこまで吐き捨てる様に言ったところで、結三郎の体が小刻みに震え始めていた事に気付いた。

「っ・・・!」

 精介が睨み付け、結三郎もまた精介を睨んでいた筈のその結三郎の表情はいつの間にか変わり、驚きに目を見開いてひどく青褪めている様にも見えた。

 何度か微かに結三郎の唇が動き、何かを言おうとしていた様だったがそれは言葉にならずに消えていった。

 精介は今まで強く込めていた力が手から抜け落ちていくのを感じた。

 掴んでいた結三郎の襟からゆっくりと手を放し、そっと後ろに下がった。

 今まで燃え盛っていた筈の怒りも、跡形も無くしぼんで消え去り、精介はただ結三郎の青褪めた様子を戸惑いながら見つめるばかりだった。

「・・・わ、私は・・・。」

 ひどく掠れた声で結三郎が呟いた。

 結三郎は青褪め、肩を震わせながら――今にも泣き出してしまいそうだと、精介は思ってしまった。

 先に結三郎の方が苛立って声を荒げてきたとはいえ、こんな風に怒鳴り合うつもりではなかったのに――。

 精介は何とも気まずく、やりきれない気持ちで結三郎から目を逸らした。

 結三郎に掴みかかった時に放り出していた足元の風呂敷包みを手にすると、精介は自分の苛立ちや結三郎への申し訳無さを誤魔化す様に背を向けた。

 また、逃げ出してしまうのか――自分自身に問い掛けて来る声を無視して精介はそのまま、行く当てもないまま走り去ってしまった。

「私は・・・・・・。――俺は、ただ・・・。」

 走り去っていく精介を追い掛ける事も無く、結三郎はただ目を見開いたまま何処か遠くを見つめながら立ち尽くしていた。

「俺は・・・ただ・・・・・・。ただ・・・帰して、あげたかったんだ・・・。」

 父上――と、結三郎は呟き、暫くの間凍り付いたかの様にその場に立ち続けていた。



 辺りの木々から聞こえる蝉時雨はずっと続きつつも、次第に日も傾いていき夕暮れの薄赤い光が本堂の裏手にも広がっていった。

 精介が去ってからどの位経ったのか。

 暫くの間ずっと結三郎はその場で立ち尽くしていた。

「――おー! 何だ、こんなトコに居たのか? お前の事も探したぞ。いつまで経っても戻って来ないし。」

 本堂の裏手にやって来た祥之助が、結三郎の後ろ姿を見つけて駆け寄って来た。

「どうなってんだ? 精介もまだ見つかんねえしよ。」

 額の汗を手で拭いながら祥之助は結三郎のすぐ後ろまで近づくと、その尻をぽんと軽く叩いた。

「・・・・・・。」

 いつもならば、気安く尻を叩くなとか何とか祥之助へと注意をするのに、今は何も言い返す事も無くただ黙って結三郎は立っていた。

 首筋に滲む汗もそのままで、時々薮蚊が止まっていたがそれを振り払う事もしていなかった。

「ん・・・? 何だ? どうした?」

 祥之助は結三郎の様子がいつもと違う事に気付き、訝し気に結三郎の傍らから顔を覗き込んだ。

 硬く唇を噛み、青褪めた顔で俯いていた結三郎は、やっと祥之助の事に気が付いた様だった。

「・・・っ・・・。」

 のろのろと顔を上げて祥之助の方を見て、何か返事をしようとしたものの・・・うまく言葉が出て来ず結三郎は微かに唇を動かしただけで――また俯いて黙り込んでしまった。

「おいおい、どうしたどうした? 何かあったのか? 」

 祥之助は心配気に結三郎の背中へとそっと手を回し、微笑みかけた。

 いつも煩わしい位に笑い掛けて来る祥之助のその笑顔が、今はとても安らぐものの様に結三郎は感じてしまっていた。

 蒸し暑さのせいでぐっしょりと汗に濡れた背中に回された祥之助の手の温かさと、すぐ間近に感じられる汗と体の匂いに結三郎は何故か――とても安心した思いを感じてしまっていた。

 汗に混じって届く、何かの香辛料を薄めたかの様な――汗臭い、男臭いそれは。

 いつだったかの煎賀久寺の茶店でケツサブロウとからかわれて、怒りに走り去った時に忘れた帽子を追い掛けて届けてくれた時の――懐に入れられてぐっしょりと汗で濡れた帽子に染み付いてしまっていたものと同じだった。

「・・・おいおい、結構蚊に刺されてんじゃねえか。大丈夫か? 痒くねえのか?」

 結三郎の首筋や腕等を見て祥之助は思わず手を伸ばした。

 ぷっくりと膨れた蚊に刺された首の赤い点へと祥之助が手を触れ、やっと結三郎は祥之助の顔へとはっきりと目を向けた。

「取り敢えず帰ろうぜ。腹も減ったしなー。照応寺で宴会するって言うから俺達も行こうぜ。」

 そう言って笑い掛け、肩を叩いてくる祥之助の顔を目の前にして――張り詰めていたものが一遍に解けてしまったかの様な気持ちを結三郎は抱いてしまった。

「っっ・・・ぅぅぅっっ・・・・!!!! ぅぅぁあ゛あ゛あ゛っっっ゛~~ーー!!!!!!」

 祥之助の笑顔が涙に滲んで一気にぼやけ、結三郎は子供の様に大声を上げて泣き出してしまった。

「っっっぐっ・・・っくっ・・・・・ぅぅあぁぁぁぁぁああ゛ぁ゛ぁ゛っっ!!!」

 後から後から涙は溢れ、止めようとしても止まらずに結三郎は泣き続けた。

 あんなに――あんなに精介に怒りと共に強く拒絶されるとは思ってもみなかった。

 元の世界に帰る事が決して嬉しい事ではないと思う者が居る等と、結三郎は想像すらしていなかった。

 ――自分の父は、あんなにも、元の世界に帰りたがっていたというのに。

 塊の様な涙の粒が顔から流れ落ち続け、何度もしゃくり上げる結三郎の姿に、祥之助はただうろたえるばかりだった。

「な、何だ何だ・・・! お、おい、どうした!」

 おろおろとしながら結三郎の肩へと両手を遣り、祥之助は泣き続ける結三郎を心配気に見上げた。

 しかし結三郎はそのまま泣き続け祥之助の着流しの裾を掴むと、肩へと顔を埋める様にもたれかかった。

「お、おい・・・。」

 戸惑いながらも祥之助はされるがままに任せた。

「・・・ぢ・・・父上゛ぇ゛・・・。母上ぇぇ・・・っっ・・・。」

 子供の様に泣き続けながら、結三郎の心の内には子供の頃の記憶が甦っていた。

 父も、母も・・・亡くなったのは同じ年ではなかったが、同じ様な蒸し暑い夏の日に亡くなっていた。

 きつい夏の日差しに照らされるソテツの大木。茅葺の屋根まで届く芭蕉の葉。山の中を流れる川の水は冷たく、両岸の岩肌はシダと苔にびっしりと覆われていた。

 結三郎にとってはそれが生まれ育った故郷の村の当たり前の夏の景色だったのに――父にとっては全く馴染みの無い風景でしかなかった。

 ――帰りたかったなあ。結三郎・・・。お前と母さんを連れて。里帰りしたかったなあ。

 病にやつれ、骨と皮だけになった顔で布団に横たわったまま、最早悲しみすら枯れ果てた――しかしそれでも捨て切れない望郷の思いのこもった目で呟き続けた父の顔を、結三郎は決して忘れる事は出来なかった。

 ――帰してあげたかった。

 突然にこの日之許に迷い込み、帰り方も判らず――見知らぬ異国、いや異世界で病に倒れて死ななければならなかった父は、どれ程の無念だった事だろう・・・。

 無力で無知な子供の結三郎には父を元の世界に帰す事は出来なかったけれども――今、結三郎の前に迷い込んで来た者達には、父の様な無念や不安、悲しみを味合わせたくはなかったのに。



 しばらくして流していた涙もやっと落ち着き、声を上げる事も無くなったものの・・・結三郎は祥之助の肩に顔を埋めたまま動かなかった。

 祥之助の息遣いや上下するがっしりとした胸板、そこから伝わってくる鼓動や体温。涙で鼻も詰まっていたものの、それでも仄かに感じられる祥之助の体の匂いに結三郎は、離れ難い慕わしさと安らぎを感じ続けていた。

「――すまん・・・。みっともないところを見せてしまったな・・・。」

 鼻詰まりの声で結三郎はぼそっと呟き、離れ難いと思いながらもそっと祥之助から体を離した。

 祥之助に軽く背を向けると、袂から懐紙を取り出して結三郎は何度か鼻をかんだ。

「い・・・いやいやいや、そんな事は全く無いぞ。全然みっともなくない!」

 何も体を動かしたりしていないのに、自分の心臓がひどく強く早く脈打っているのが祥之助には判った。

 息をしている筈なのに、息が出来ていない。

 強く早く脈打つ心臓は、ただひたすら頭に血を押し上げるばかりで――顔が赤く熱く、息苦しいのに・・・そんな中で結三郎を見ている事が妙に心地良かった。

 祥之助はただ、結三郎から目を離す事が出来なかった――いや、結三郎しか見えていなかった。

 こんな――こんな風に、子供みたいに無防備に泣き喚くだなんて。

 普段の堅苦しく生真面目で、相撲にも真剣に打ち込んでいて、礼儀正しく謙虚で穏やかな物腰の――そうしたものが全て剥がれ落ちた結三郎の姿に、祥之助は今更ながら自分の心の中の奥深い、ひどく柔らかく繊細な芯の部分をぎゅぅっと掴まれたかの様な・・・そしてそれがひどく嬉しい様な、そんな気持ちになってしまっていた。

「ゆ、結三郎・・・。」

 ゆっくりと祥之助は結三郎の背中に近付き、そっと手を伸ばした。

「武市殿・・・?」

 祥之助の声に結三郎は顔だけ軽く振り向いた。

 まだ目も鼻も潤んで赤味の残っている結三郎の顔へと祥之助はそっと手を伸ばし、優しく撫でた。祥之助の顔もまだのぼせて赤いまま結三郎を見つめていた。

 結三郎の頬に留まる祥之助の手に、まだ薄くこもった熱が伝わってきていた。

 結三郎は一瞬だけ驚いて微かに肩を震わせたが、そのままされるままに任せ、何処かほっとした様な微笑みを少しだけ浮かべた。

「た、武市殿、じゃなくてさ・・・。お、・・・俺のコトも名前で呼んでくれよ・・・。武市殿じゃ、何か・・・他人行儀って言うか、淋しいって言うか・・・。」

「――祥之助様あ~! こんなトコに居たんですか~。精介も島津様も祥之助様も帰って来ないからみんな心配してますよ~。」

「!!!!」

 不意に背後の茂みが揺れ、明春ののんびりした声が聞こえてきて祥之助は驚きに思わず大きく体を震わせた。

 結三郎も驚きながら明春を見たが、まだ赤く腫れぼったい顔を隠す様に思わず俯いた。

 明春はその様子に余り結三郎を見ない様に気遣いながらも、祥之助へと直截に尋ねた。

「――祥之助様~、痴話喧嘩ですか? 駄目ですよ、仲良くしないと~。」

「何でだ!? 喧嘩なんかしてねえよ!!」

 明春の問いに祥之助は思わず怒鳴る様に反論した。

 明春は祥之助の様子にも堪えた風でも無く、相変わらず呑気に笑いながら、

「まあそれはそれとして~、精介がまだ見つからないんですけど、ここのお寺の方もいつまでも片付かないと困るって言うんで、俺達一旦照応寺の方に帰りますね。祝勝会の準備もありますし。」

「いや、それはそれとしてじゃないだろ。」

 祥之助が反論を続けようとするが、明春はのんびりと笑いながらそれを聞き流した。

「んで、また後で俺達も探すけど、もし祥之助様達が見つけたら照応寺まで連れてきて下さいね~。頼みましたよ~。」

「ああ。判った・・・。」

 反論を諦め、祥之助は溜息をつきつつ頷いた。

「島津様も、それじゃ~失礼します。」

「あ、ああ・・・。」

 そうして明春は結三郎の顔を余り見ない様にしながら頭を下げ、立ち去っていった。

「――全く・・・。恥ずかしい所を見られてしまったな・・・。」

 自分の泣いて腫れぼったくなった顔や、祥之助に顔に触れられているところ等――余人に見られてしまった事に今更ながら結三郎は羞恥心が湧き始めた。

「も少し休んでいくか。」

 今度は羞恥に顔を赤くし始めていた結三郎を気遣い、祥之助はすぐ向こうに見える本堂の裏を顎でしゃくって示した。

「しかし、山尻殿を探さないといけないだろう・・・・・・。」

 元はと言えば折角精介を見つけたのに喧嘩の様な言い合いになってしまい、そのまま立ち去らせてしまったのは結三郎のせいではあった。その責任を感じてしまい、結三郎は申し訳無さに唇を引き結び俯いた。

「その顔でか? まだ赤いし、少し目とか腫れぼったいぞ。」

「う・・・。」

 祥之助の指摘に結三郎は更に俯いてしまった。

 仕方無く薮蚊の多い林から出て、結三郎は祥之助と共に寺の本堂の裏側のすぐ側へと場所を移した。

 裏口に続く小さな階段に結三郎が腰を下ろすと、ごく当たり前の様に祥之助がその隣に並んで座った。

「――・・・。」

 いつもならば余りくっつくなとか、暑苦しい、と口にするところだったが――結三郎は何故か今日はそんな事を言う気にはなれなかった。

 狭く小さな階段に並んで座ると実際に窮屈で蒸し暑かったが・・・今日は気持ちが弱っているせいか、妙に他人の――いや、祥之助の体温やじっとりと汗ばんだ肌の感触に不思議と安心してしまう様な感じがしていた。

「・・・精介のヤツ、何処に行っちまったんだろうな・・・。また迷子にでもなってんのかね・・・?」

 結三郎の隣で肩をくっ付けて座りながら、祥之助は何気無くそう言って溜息をついた。

 そう言えば、異世界転移の事情を知らない祥之助や明春達は、精介が何処かの藩の若様か何かで藩邸への帰り道が判らなくなっているのだと思っていたのだと結三郎は思い出した。

「・・・そうだな・・・。迷子――か。」

 ここではない異なった世界から迷い込んで来て、帰り方が判らないのだから確かに迷子なのだろう。実際、奥苑の者達も時空の穴に巻き込まれて日之許にやって来た者達を「迷い人」と呼称してきた。

 結三郎は本堂の裏手に広がる林の木々を見上げながら、そっと息を吐いた。

「・・・・・・俺の実の父も、迷子だったんだ。」

 薄い赤と紫の入り混じる夕暮れの光に沈んでいく林の木々の向こう側には、まだ結三郎の記憶の中の真夏の昼間の故郷の村の風景が見えていた。 

 精介との怒鳴り合いで普段は心の奥に仕舞い込んでいたものが剥き出しになってしまい――それで心が消耗していたのだろう。

 誰かに――いや、他の誰でもない祥之助に、話を聞いて欲しくなってしまったのだった。

「ああ、養子だって言ってたな。書類上は島津様の四男だって・・・。」

 祥之助はいつぞやの科ヶ輪まで出掛けた時の結三郎や鳥飼部達とのお喋りを思い出した。

「実の親の事はわざわざ言い触らす様な事でもないから話していなかったが・・・。――えーと、そうだな・・・・・・。俺の父は、説明が難しいけど、日之許からはとてつもなく遠く離れた、遠い遠い国の人間で・・・或る時、事故によって日之許に流れ着いたんだ。」

 結三郎は異世界転移の事情を濁しながら、祥之助へと語り始めた。

 証宮離宮殿の建立前の時代にも、時空の歪みで穴が開き他の世界と繋がってしまう事故はごく稀に起こっていた。

 その土地では見た事の無い不思議な動物が突然現れたり、聞いた事も無い言語を喋り見た事も無い服装をした、目や髪の毛、肌の色も違う人間が何処からともなく現れる――。

 二十数年前の佐津摩の国の田舎の小さな村に、結三郎の父・弥富喜一郎も突然何処からか迷い込んで来たのだった。

 本当は、祥之助には隠し事等したくはない――奥苑の事も全て話してしまいたいとも思ったが、結三郎は何とか自重した。

「そう・・・だったのか・・・。」

 初めて語られる結三郎の家族の話に、祥之助はそう呟きすぐ隣の結三郎の横顔を見た。 

 異世界転移の事を知らない祥之助は、何となく大嵐で船が難破した様子を想像した。

「――余りに遠過ぎて元の国へも帰れずに・・・父は流れ着いた佐津摩の国で保護されたんだ。保護したのは前藩主――今の義父上の茂日出公だ。」

 その縁で茂日出の養子になったのかと祥之助は理解した。

 若い頃から佐津摩の土地神とも交流し様々な学問を修め、帝とも高度な学問の遣り取りのあった茂日出は、当時既に異世界についての知識も得ていた。

 奇妙な服装をしたよく判らない人物が佐津摩の田舎村に出現したという知らせを受けた茂日出は、自らすぐに現地に向かい速やかに弥富喜一郎を保護した。

 結三郎はぼんやりと遠くを見ながら、ぽつりぽつりと語り続けた。

「茂日出公に保護されて、島津家が保養に使う温泉地を管理している山の中の小さな村に小さな屋敷を与えられて生活を始めて――暫くしてから、そこの村の娘と恋仲になった。」

 異郷の地で心細く不安に思いながら生活している中で、少しずつ村人達とも縁を持ち交流していく内に誰かと愛し合うというのも当然の流れだったのだろう。

 当初は何処の誰とも知れない者と結婚をするなんて・・・と、娘の親に難色を示されたものの、茂日出公の庇護を受けている人間だと言う事で何とか説得に成功し、娘と結婚する事が出来た。

 結婚後程無くして結三郎が生まれ、その村で親子三人の穏やかで平凡な生活が送られていた。

「・・・父の事情も知らず、普通の佐津摩の田舎の村の子供として育った・・・とは思う。両親は幼心にも俺には仲の良い夫婦に見えたし、時々訪ねてくる茂日出公や他の島津家の人達も親切にしてくれたし。」

 茂日出公の自由奔放な教育方針もあって、村に連れて来ていた実子達も幼い結三郎や村の子供達と一緒になって褌一丁で川遊びに興じたり、棒切れを振り回して剣術ごっこをしたり、泥塗れになって相撲を取ったりと、親戚か兄弟の様に仲良くしてくれて――その親しい間柄は今も続いていた。

「でも――父は時々、自分の昔の荷物を取り出してはとても悲しそうに眺めていたんだ。深酒はしなかったけど、ちょっとだけ酔った時に泣きながら故郷に帰りたいと言ったりして・・・。」

 押入れの中から父が引っ張り出した小さな箱の中には、幼い結三郎が見た事の無い――いや、村人達も見た事が無い様な不思議な品物が何点か大事に仕舞い込まれていた。

 今の結三郎ならば、それらが父が異世界転移して来た時に身に着けていた品物だと理解出来たのだが、当時の結三郎には何かとても凄い宝物か何かの様に見えていた。

 腕時計や財布、キーホルダーの小さな懐中電灯に家の鍵・・・。それらは現在は父の形見として茂日出が奥苑の私室に大事に保管していた。勿論、結三郎も見たい時にはいつでも見る事が出来た。

「そうか・・・。」

 語り続ける結三郎の横顔を見続けながら、祥之助はそっと相槌を打った。

 祥之助の息が耳元に掛かってしまい、結三郎は祥之助へと振り向いた。お互いの息が顔に掛かる位の距離に居ると言う事に、今更ながら祥之助も結三郎も照れを感じてしまってはいたが、そのまま離れようとはしなかった。

「酒に酔っていない時も、母上と俺に、生まれ故郷の事を時々は話してくれたんだ。とても寂しそうではあったけどな・・・。」

 再び前を向き、結三郎は続きを話し始めた。

 天に聳える位に背の高い石造りの建物が建ち並ぶ街の様子や、石で舗装された道を高速で走っていく鉄の荷車。空を飛ぶ乗り物もあるという――。台所は蛇口を捻れば水も湯もすぐに出て、便所は釦を押せば清潔な水で便を洗い流し、洗濯物はカラクリの箱の中に入れるとひとりでに洗われる。

「へええ・・・日之許よりも随分文明の進んだ国だったんだな・・・。」

 言葉だけでは殆ど想像も出来ない様な進んだ文明の産物の話に、祥之助は感心し溜息をついた。

 当時の結三郎も、父の私物への理解と同様で、父の話す内容をろくに理解出来てはいなかった。

 昔話や御伽噺の中の空想の話を面白がる程度にしか父の話を聞いてはいなかった。

 成長した今ならば、父の話の中の建物や乗り物がどんな物かは判るし・・・・・・父の悲しみや苦しみも幾らかは理解出来た。

「――今だから判るが、父の故郷の話は全部過去形なんだ。――国許の親兄弟に会いたかった。自分の妻と子供を連れて里帰りしてみたかった。帰りたかった・・・。全てが終わってしまった過去の事として諦めてしまってたんだ・・・。」

 終わった事として言葉にする事で、ささやかでも気持ちにけじめを付けようとしていたのだろう。

 もう終わってしまった事として自分の妻子に自分の故郷の話をする父の胸中に溢れ返る悲しみや寂しさ、望郷の思いがどれ程のものだったか・・・。

 結三郎は本堂の裏の林の向こうにぼんやりと目を向け、自分の空想の中の文明の進んだ父の世界の町を思い浮かべていた。

 

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メモ書き


 二月は日数が少ないというのに今月は介護の仕事が件数少ない割に一件一件が急変やら何やらで濃厚になったり、書類作成が何件も重なってしまったりと、ストレスたまりまくりでございます(現在進行形)

 だからイモ男子をあれこれなんやかや弄り回さないとやってらんないですワヨ。

 という訳で。

 精介はらはらと泣き立ち尽くす、に続き、前々から書きたかった結三郎ギャン泣きの段でごわす。何か今回の作品はイモ男子が泣く描写に力が入ってしまっています。第四話か五話くらいには祥之助も泣かせます。

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