第二話ふたつめ、しるすこと 「相撲部員 山尻精介の日之許国への迷い込みに就いて記す事」其の三 結三郎に今更奥苑の成り立ちが話されるに就いて記す事

第二話ふたつめ、しるすこと

「相撲部員 山尻精介の日之許国への迷い込みに就いて記す事」

 「其の三 結三郎に今更奥苑の成り立ちが話されるに就いて記す事」


 何か話題があるという訳でもなく、精介は何となく居心地の悪さを感じながら、薄暗い部屋の中で黙々と食べ続けた。

 向かいに腰を下ろしていた明春の方も何も喋る事は無かったが、どうやら食べるのに夢中になっている様だった。

 暫くして明春が先に弁当を食べ終わったので、精介は一旦自分の弁当を置いて明春にペットボトルの緑茶を差し出した。

「あ、どうぞ・・・。」

「あ、すまないね~。」

 明春は精介から受け取り、蓋に手を当てたものの――開け方が判らず少し首をかしげた。

「あ、すんません・・・。」

 江戸だか明治だかの様なこの世界にはペットボトルは無かったかと、精介は明春に渡したものを返してもらい、蓋を開けて再び手渡した。

 明春は開けてもらったボトルを受け取り、手元の茶碗へと中身を注いだ。

 精介の方も弁当を食べ終わり、自分の分のボトルの緑茶を開けるとそのまま口を付けた。

「いや~。有難う。こんなに美味い飯と茶なんて初めてだよ。やはりどっかの若様だと弁当も美味い物持たされてるんだね~。」

 茶を飲み干し、一息ついた明春が嬉しそうに精介へと礼を言った。

「あ、いやそんな・・・。若様とかじゃないです・・・。」

 すっかり何処かいい所の――大名の若様か何かだと思い込まれてしまった様で、精介は返答に困りながら坊主頭を掻いた。

「そういや、さっき荷物にマワシが入ってるとかどうとか皆が言ってたね・・・。」

 腹が張ってお喋りをする余裕も出て来たのか、明春は精介の傍らに置かれていたスポーツバッグへと目を向けた。

「着てる物も持ち物も食べ物もいい物ばかりだし、どっか大きな部屋か大名の所で相撲を取ってるんだろうねえ・・・。」

 何処か少し羨ましそうな感情を滲ませながら、明春はバッグから覗いているマワシの端を眺めていた。

「・・・その、明春さんは、何か、現役の力士ってさっきの人達言ってましたけど・・・。どっかの相撲部屋に所属してるんですか?」

 精介は相撲を取る事は好きだったが、大相撲の様なプロの世界には大して興味は無かった。

 しかし、この江戸か明治の様な異世界での相撲の事情がどの様なものかは、何となく興味が湧き聞いてみたくなってしまった。

 精介に尋ねられ、明春は少し困った様に眉を下げ――垂れ目気味の両目が完全に下がってしまっていた。

「そうだな~・・・。あんまり面白い話じゃないけど。――俺は春乃渦(はるのうず)部屋っていう小さな相撲部屋に入っていてね。まあ、あんまり裕福な部屋じゃないけど、それなりに勝ったり負けたりしながら皆で相撲をしてきて。ただ・・・それまでウチの部屋を支援してくれていた樟脳問屋の御主人が三か月前に病死してしまって、支援が打ち切られてしまってねえ・・・。」

「小脳? ・・・あ、樟脳、か・・・。」

 聞き慣れない言葉に一瞬精介は戸惑ったが、少し前に化学の授業でナフタレンについて習った時に樟脳についても教師から教えてもらった事を思い出した。化学物質の防虫剤が普及する前には、楠から抽出された樟脳というものが防虫剤として用いられていた。

 真面目に授業を聞いていて良かったと思いながら、精介は明春の話の続きを聞いた。

 ――春乃渦部屋を作った親方と、この宗兵衛長屋の大家、そして樟脳問屋の主人は元々杜佐藩出身で幼馴染だった。その縁で春乃渦部屋の力士を格安で長屋に住まわせたり、金銭的支援をしたりという関わりを持っていた。

 だが樟脳問屋の主人が三か月前に心臓病の発作で急死してしまい――残された妻も元々病弱で子供も居らず、店は人手に渡る事になってしまった。

 やむを得ず次の支援先を探してはみたものの未だ見つからないままで――そうする内に所属していた元々数の少なかった力士達も一人二人と去っていき、今は明春を含む四人だけしか残っていなかった。

「そ・・・・・・そう・・・だったんですか・・・。」

 初対面で聞かされる内容にしてはかなり重く、立ち入った事情まで聞かされてしまい、精介はどう返事をしたものかうまく言葉が出なかった。

「頒明解化の世の中なのに景気の悪い話だよ~・・・。」

 明春は苦笑し、溜息をついた。

「お前さん・・・いや、若様のとこの相撲部屋はどんな感じなんだい? 余所の相撲部屋の事なんてなかなか詳しく聞く機会が無くてねえ・・・。」

「あ、いや・・・若様じゃないです・・・。あ、名乗ってなかったっけ。――精介、です。山尻精介。」

 明春に尋ねられ、精介はまだ自分が名乗っていなかった事に気が付いた。

「山尻の若様か。何処の地方の大名なんだろうねえ・・・。」

 ワイシャツにズボン、自転車のせいで精介への大名か金持ちかという思い込みがなかなか抜けない明春は、軽く首をかしげながら日之許国の地図を思い浮かべていた。

 若様でない事を上手く説明する事も出来ず、精介も首をかしげながら明春へと話し始めた。

「えーと・・・。何て言ったらいいんだろ・・・。相撲部屋じゃなくて、学校の相撲部なんで・・・。所属って言ったら学校? ・・・になるのかな・・・。」

 精介の漠然とした説明では無理も無かったが、明春は更に誤解や勘違いをしてしまった様で、感心した様な表情は変わらなかった。

「あ~。学校の相撲部屋か・・・。やっぱりいい所の若様だなあ。学校にきちんと通えているというのは。」

 明春の話では、「頒明解化」の一環として帝は広く日之許の国民――特に七歳の子供達全員に二年間の義務教育制度を定めた。読み書き計算の基礎的な能力を幼い内から持つ事が出来る様にというのが制度の趣旨だった。

 希望すれば審査や試験はあるもののそれ以上の年月、より高度な内容の学問も無料で学ぶ事が出来る様にもなってはいた。

 また勿論、子供以外にもどんな年齢のどんな身分の者でも勉強ができる様に、小規模で臨時的な無料の学校も整備されている途中ではあった。

 しかし学費は無料とはいえ、実際には日々の生活費を稼ぐ為の仕事に追われ、幼い子供達も大人達も勉強を行なう時間的な余裕が無く、学校に通い続ける事は難しかった。

「あー・・・。悪循環的なやつか・・・。」

 明春の説明を聞きながら、精介は社会科の授業とかで取り上げていた途上国の子供達への就学支援と言う様な話題を思い出していた。

「学が無いから高い賃金の仕事に就けなくて、お金が稼げないから勉強しにいく余裕が無くて、で最初の話に戻る・・・と。」

 社会科の教科書に書かれていた様な事をぼんやりと思い出しながら、精介は独り言を漏らした。

「そうそう。そんな感じだねえ、皆・・・。それでも学校で昼飯が無料で出たりとか、帝様も色々と工夫をしてて、この長屋でも子供達は週に三日くらいは科ヶ輪の町の学校に行ける様になったんだよ。」

 長屋の子供達が楽しそうに学校に通っている様子を思い出し、明春は微笑みながら精介へと話した。

「・・・・・・。」

 明春の話で精介はまた言葉に詰まってしまった。

 学校に通えている事自体が、いい所の若様と見做されてしまうとは精介には想像もついていなかった。

「シナガワ・・・か。」

 精介はふと明春の背後の板壁に貼られたチラシか何か――江戸や明治っぽい世界なので読売や瓦版と思われる様なものへと目を向けた。

 どうやら壁が傷んで開いた穴等を、そうした物を貼って塞いでいる様だった。

 薄明かりの中ではあったが、何が書かれているかは何とか読み取れた。

 塔京、科ヶ輪港中通り、樟脳問屋「浜田屋」杜佐藩から大量入荷大幅値下げ――そんな文句が大きく書かれている、精介の世界で言うところのセールのチラシらしい物が何枚か適当に重ねられ貼り合わされていた。

 使われている言葉も文字も精介の世界と殆ど同じ様で、今更ながら幸運ではあった。全く異なる言語だったら今頃精介は途方に暮れていただろう。

 しかし――トウキョウとかシナガワとか、元の世界での聞き覚えのある地名ではあったものの、それらに当てられた漢字は全く違っており、改めてここが元の世界とは全く違う所なのだと精介は思い知った。

「――帰れるのかな・・・。」

 精介は思わずそう口にしたものの――言葉通りには、帰りたいという気持ちが強く湧いている訳ではない事を漠然と自覚していた。

 帰ったところでまた、相撲に集中し切れない悩み煩う日常に戻されるだけなのだから・・・そんな思いが精介の心を重くしていた。

「大丈夫だよ心配しなくても。帰り道が判るまで何日かはここで泊まっていけばいいし。夜が明けたら町の番所に行こう。帰り道を訊けばいい。」

 明春の方は精介の呟きを言葉通りに受け取った様で、精介を力付ける様に笑い掛けた。

「それに泊りの礼をしてもらおうという下心もあるしねえ~。」

「えっ!?」

 下心という割には呑気な笑顔で冗談なのだろうと判ってはいたが、精介は一瞬だけ胸が高鳴ってしまった。 

 薄明かりの中なのではっきりとは見えてはいなかったが、穏やかで人の良さそうな顔立ちに、しっかりとした筋肉質な体付きではあるが、所謂よくある相撲取りのイメージの様なでっぷりと太った体型とは違うソップ型と言われる体格――改めて見てみると、精介にとっては割と好ましいタイプの男性だった事に気が付いてしまった。

「ここに泊めた礼として、出来たらウチの部屋に臨時でもいいから助っ人として入って欲しいなあ・・・という下心もあってねえ・・・。」

 明春は笑いながら精介に軽く頭を下げた。

「ああ・・・。成程・・・。ハハハ・・・。」

 下心の内容を聞き、精介は少し残念そうに笑い返した。

「まあ冗談はこの位にして、さっさと寝ようか。俺は明日も稽古だし・・・。」

 明春はそう言って立ち上がり、部屋の隅に畳んでいた布団へと体を向けた。

「――でも、臨時の助っ人は考えてくれると有難いけどなあ~。」

「あ、はい・・・。考えてみます・・・。」

 精介はそう答えながら、食べ終わった二人分の弁当やペットボトルをレジ袋に突っ込んだ。

 まだクッキー二袋が残っていたが、それは明日に食べる事にして自転車の前籠の方に入れておく事にした。

 精介が土間に降りて自転車の横にゴミやスポーツバッグを置いている間に、明春は布団を広げて寝床の用意を行なっていた。

 尤も、梅雨が終わり蒸し暑い時期が始まった事もあり、畳の上に敷き布団を広げるだけで寝床の用意は終わってしまっていたが。

「全然いい布団じゃないけど、どうぞ。」

 明春の言葉に精介が振り向くと、布団が一枚だけ広げられ、明春はその隣で畳の上に直に横になっていた。

「あれ・・・? 明春・・・さんの分は・・・?」

 精介が尋ねると、明春は寝そべったまま、

「ああ、布団一つしかないから。流石にお客さんに布団無しというのはねえ・・・。まあ、夜も暑いから俺はこのまま寝ても平気だし。」

 呑気な調子で精介に答えると、そのまま畳の上で大の字になった。

「いやいやいや、流石にそれは悪いッスよ。ちゃんとした客でもないのに。」

 精介が慌てて断るが、明春は横になったまま軽く手を振った。

「いいよいいよ~。気にしない。若様は遠慮しない。」

「え・・・でも・・・。」

 精介は戸惑いながら口ごもるが、明春は畳の上で横たわったまま、もう動こうとはしなかった。

「明かりは消しといてくれよ~。」

「あ、はい。」

 既に半ば寝入りかけているのか、明春は欠伸交じりに精介へと声を掛け、寝返りを打った。

 精介がライトのスイッチを切ると、部屋の中は完全に真っ暗になってしまった。

 そろそろと手探りでゆっくりと土間から上がり、布団らしき布の手触りを確かめながら精介も横たわった。

 あっという間に明春は寝入ってしまったのか、小さな鼾交じりの寝息がすぐ隣から精介の耳へと届いた。

 簡素な布袋に蕎麦殻か何かを詰めただけの枕に頭を乗せ、精介は横で寝ている筈の明春の方を見た。

 何の明かりも無い暗闇の中なので、部屋の様子も明春の姿も何も見えず、ただ明春の寝息が聞こえるだけだった。

「――・・・・・・。」

 突然全く異なった場所へとやって来た驚きと戸惑いもあって寝付けなかったものの・・・・・・。

 先刻の下心云々の明春の発言で一度意識してしまったせいで、精介は余計に寝付けなくなってしまっていた。

 同じ様な年代の、まあまあ好ましいと思える男が真横で無防備な姿で眠っている――。

 大昔のラブコメ漫画とかであった様な、主人公がヒロインの女の子と何かの事情でやむを得ず一晩一緒に並んで寝る――そんなありがちなシチュエーションを精介は思い出していた。

 精介の場合は、相手ががっしりした筋肉質のむさくるしい青年ではあったが、相手に魅力を感じてしまい落ち着かなくなってしまっているという事態そのものはラブコメ漫画そのままだった。

 暫くの間精介は明春の方を見続けていたが、流石に異世界転移への驚きで疲れていた事もあり、いつの間にか寝入ってしまっていた。



 迷い人を見失ってからも、結三郎は半時程は周囲を探したものの、手掛かりらしいものは見つけられなかった。

 仕方無く結三郎は高縄屋敷奥苑へと戻ると、そこで待機していた茂日出達へと頭を下げた。

「すみません義父上・・・。」

 迷い人を見失ってしまった事を青い顔で報告し、結三郎は俯いたままだった。

 茂日出は円卓の椅子に座ったまま結三郎の報告を聞くと、一先ず結三郎を手近な椅子に座る様に促した。

「ああ、構わぬよ。苦労を掛けたな。そうしょげるな。」

 茂日出は俯いたままの結三郎を慰め、手元の茶碗を口に運び冷めてしまった番茶を飲み込んだ。

「――そうか・・・。乗り物・・・自転車か。そうさのう。そうした状況もあるのか。」

 円卓の上の金属板を操作し適当な自転車の情報を引き出すと、茂日出は空中に映し出された映像を見つめた。

「考えてみれば充分に有り得ましたな。馬等の動物に乗ったり、文明の進んだ世界によっては自転車の様なカラクリの乗り物が日常的に使われている事もあるのでしょう。」

 まだ落ち込んでいる結三郎に冷えた麦茶の茶碗を持って来た老鳥飼部が、円卓の上の自転車の映像を興味深そうに見た。 

「しかし今の私達の技術では何がどんな状態で日之許に転移して来るのか、詳細な予測はまだ難しいですからねえ・・・。」 

 茂日出達の様子を見下ろしながらダチョウも小さく溜息をついた。

 人間であるとか動物であるとかを大まかに区別したり、或いは土砂や海水等が転移して来るという様な予測は出来るものの、例えば動物が檻に入れられて荷車で運ばれて来る・・・という様な詳しい事はまだ奥苑の観測装置では判らなかった。

「――おお。こっちは自動車とな。油や石炭の内燃機関を内蔵しておるのか。・・・一時間に四十粁進むとな!?」

 自転車以外の移動機械も映像の中に表示され、様々な世界の移動の為のカラクリの様子は当然ながら茂日出の興味を惹いた。

「世界の一例としては、十八歳以上になれば誰でも講習を受けて試験に合格すれば運転免許が貰える世界もある・・・とありますなあ。こんな速度で往来を走る物を、十八そこそこの子供の手で運転するとは・・・何とも恐ろしい。」

 老鳥飼部の一人が茶菓子を齧りながら、自動車の資料映像を自分の手元にも映し出し覗き込んでいた。彼にとっては十八歳は幼い子供と大した違いは無かった。

「そうさのう・・・。転移して来る世界の文明によっては、この様な自動車とか、飛行機械とかに乗ったまま転移して来て、そのままこちら側の人や家などにぶつかる事故の可能性もあるか・・・。今更ながら我々の想定は甘かったのう・・・。それに。」

「精霊の私が言うのもなんですが、各国に知識を降ろすのを反対していた神々の、相変わらず何とも根性のせこい嫌がらせでありますな・・・。」

 茂日出の言葉にダチョウが続き、溜息をついた。

 人間達に神々の持つ高度な知識や技術を広める事について、一部の神々は反対との意見を持っていた。結局は人間達に知識を広める事は神々の間で承認されたものの――。

 それが面白くない反対派の神々は、人間達の努力を促すという建前の下に知識を全て開示するというのではなく、分野によっては途中までしか教えないと言う様な事を無理矢理決定させた。

 時空の穴や異世界転移に関する知識や技術も、中途半端な内容しか神々から教えられていなかったものだった。

 茂日出達の今回懸念している様な、高速の乗り物を使用中に異世界転移してしまって事故が起こる可能性についても、お前達人間が頭を悩ませ対応していくべきものだ――と、事故が起こった所で我々は知らぬ、との反対派の神々の底意地の悪さが透けて見えていた。

「まあ、事故対策は追々考えていこう。兎に角、明朝、科ヶ輪でその自転車の青年の捜索をせねばな。」

 お代わりの番茶を老鳥飼部に注いでもらいながら、茂日出は結三郎や老鳥飼部達を見た。

「奥苑の方の明日の日勤の鳥飼部達の・・・そうさのう、五人程は捜索に回そう。」

 金属板に触れ、明日の出勤予定表を映し出すと茂日出は捜索に誰を回すかの算段をつけ始めた。

 奥苑に勤める鳥飼部は秘密厳守という事もあり、滅多な人材を雇う事が出来ない為、元々の人数が少なく茂日出は頭を痛めた。

「・・・あんまり頼みたくはないが、帝にも一応助っ人を頼むか・・・。全くあいつに頼むのは不本意この上も無いが・・・。」

 嫌そうに白い眉を寄せながら、茂日出は溜息をついた。

「え? 帝?」

 それまで茂日出達の遣り取りを見守っていた結三郎は、茶碗を手にしたまま思わず声を上げた。

 帝と言えばこの日之許の国の王様で・・・一番偉い身分の御方では。そんな御方の事を義父は随分と気安く口にしたが。

 そんな結三郎の疑問を抱いた表情に気付いたのか、茂日出は角刈りの白髪頭を掻きながら、

「ああ。きちんとした細かい説明もしないまま今迄奥苑の仕事をさせておったものなあ・・・。すまんすまん・・・。」

 すまんと言いながら実はあんまりすまないと思っていないというのは、義理でも子供になった結三郎には判ってしまった。良くも悪くも義父は大雑把な性格だったのだ。

「――薄々判っているとは思うが、」

「――我々も殿の性格がざっとしているというのは薄々判っておりましたとも。結三郎様を奥苑に所属させる時に、きちんとした話をされておられなかったのですか・・・。」

 茂日出の言葉を、呆れた様に軽く頭を振るダチョウの言葉が遮った。 

「・・・・・・すまぬのう・・・。」

 少しの沈黙の後、茂日出はばつが悪そうに結三郎へと頭を下げた。

「いえ、いいのです。私も義父上の手伝いが出来て嬉しかったですし。――何より、奥苑も表苑も博物苑の仕事は色々な物事を知れて楽しいですから。」

 結三郎は頭を振り、微笑みながら茂日出やダチョウ達を見上げた。

 日之許国や外国の事、海の中や大地の果て、空の向こう――。この世界の事だけでなく異世界の事も含めて、とてつもなく沢山の知識を、奥苑と表苑の書物や展示物、保護された人々や動植物が教えてくれた。

 日之許とは全く違う文化の料理を食べたり、望遠鏡で遠い夜空の星々を眺めたり、奥苑の書物に書かれてあるカラクリ装置を再現したり――島津家に引き取られ、義父である茂日出と共に塔京に出て来て高縄屋敷で過ごす日々は、知的な刺激に満ちた楽しいものだった。

 そうした事を少しだけ語った結三郎を、茂日出は目尻に涙を少し滲ませながら愛しそうに見つめていた。

「結三郎・・・。」

「義理とはいえ、親子ですなあ・・・。」

 ダチョウは微笑ましげに目を細め、結三郎と茂日出を見下ろしていた。

「そうであろう。」

 ダチョウの言葉に茂日出は嬉しそうに頷いた。

「――まあ、結三郎様におかれましてはお疲れの所申し訳ありませんが、ついでですからこの機会に奥苑の事柄について、きちんと説明しておきましょう。」

「何でお主が仕切るのだ。」

 茂日出の不満そうな言葉を聞き流し、ダチョウは黒い羽根を軽くぱたぱたと――人間で言うと軽く手を叩く様な仕草をして結三郎の方を見た。

「は、はあ・・・。」

 結三郎はぼんやりと返事をしながらダチョウを見上げた。

 ダチョウは結三郎の前に足を畳んで座り込むと説明を始めた。

「――高縄屋敷の博物苑自体は佐津摩藩が運営し、責任者は前藩主茂日出様ではありますが・・・。ここの奥苑だけは、運営には帝も関わっておられるのです。特に時空の穴に関する事や迷い人の送還については知識や技術、予算も帝からの多くの支援があります。」

「はあ・・・。」

 今迄自分が行なっていた仕事の背景に帝が関わっているといきなり言われても、結三郎にははいそうですか、としか返せず、余り実感は湧かなかった。

「それらの知識や技術だけでなく、奥苑にある諸々の書物やこれらの設備、機械装置・・・全ての出所は、当然の事ながら麻久佐の証宮離宮殿で執り行なわれる神降ろしによって神々からもたらされたものです。」

 ダチョウはそう語りながら円卓の上に置かれた金属板や、天井の昼間の様な明るい光を放つ照明器具、夏も始まろうとする蒸し暑い夜の空気を穏やかなものにしている空調設備等を目で指し示した。

 ダチョウの指し示す先を結三郎も順に見ていきながら、確かに改めて言われてみれば、この奥苑だけが日之許の国の中で異様に進んだ道具や書物に溢れている事に、今更ながら気付かされた。

「時空の穴への対処をしなければならないという事柄によって、帝と奥苑は繋がっているのです。適切な対処を行なえる様にという帝からの格別の支援の例が、こうした高度な機械等の道具でもあるのです。そして――そもそも時空の穴が開いてしまう原因はあの証宮離宮殿なのです。」

「え?」

 ダチョウの言葉に結三郎は思わず声を上げてしまった。

 まだ建てられて十年程しか経過していない麻久佐の巨大な白亜の塔は、しかし今では塔京を象徴する名所として人々に親しまれ始めていた。

 人々に神々の知識の恵みをもたらす有難い塔――塔の詳細は判らなくても、塔京の庶民達は自分達の生活を便利で豊かなものにしてくれる知識をもたらしてくれる塔を、最初は胡散臭がってはいたが今では有難いものだと少しずつ認識し始めていた。

「証宮のあの塔は、確かに神降ろしの儀を執り行う為の施設ではありますが・・・時空に穴を開ける為の機能を持つ巨大な機械装置でもあるのです。時空に穴を開け、素の神々のおわす時空の世界と、この日之許のある現世とを一時的に繋げるのです。」

「素・・・の神々・・・?」

 何とも大きな話になってきてしまい、結三郎は首をかしげる事しか出来なかった。 

「この現世に実体化して存在する神々や御仏、精霊の大元・・・受肉とか物質化とか、存在の位階とか霊的粒子がどうとか――まあ、ややこしい理論はあるのだが、それはまあ今日の話の本題ではないからのう。――要は、この世界は幾つもの部屋が連なる巨大な長屋みたいなものだ。」

 今一つ話が呑み込めないでいる結三郎に向って、茂日出は口を開いた。

「長屋??」

「ああ。窓も扉も何も無い、頑丈な壁で取り囲まれた巨大な部屋だけが沢山隣り合って連なっているおかしな長屋だ。普通の長屋ならば壁が薄いから隣の話し声や物音はすぐ判るが、この長屋はお隣さんなぞ全く判らぬ。隣に訪ねていく事も出来ぬ。」

 茂日出の乱暴な例え話にダチョウや老鳥飼部達は少し呆れもしたが、全く的外れと言う事でもなかったので口を挟まず続きを聞く事にした。

「それを証宮の塔の力で長屋の壁をぶち破り――そうじゃな、屋敷の門扉を攻める時の様に柱をぶち当てて。塔はその柱じゃな。・・・それで、穴を開けて日之許のある現世と、隣に住む神々の世界を繋いで隣の部屋の連中の声が聞こえる様にしているのだ。」

「殿らしい乱暴な例え話ですが、大筋では間違ってはおりませんね・・・。」

 呆れながらも同意するダチョウの言葉に結三郎も、例え話が間違ってはいない事に呆然とした。

「ここで例え話ではないのが、実際に時空には穴があけられているのです。」

 茂日出の例え話を引き継ぎ、ダチョウは再び結三郎へと顔を向けた。

「そうじゃ。時空に穴を開ける・・・開けざるをえない。先刻少し触れた様に、人間に知識を与える事を反対している神々も居る。その為、例えば時空間に関する知識や技術については中途半端な内容のものしか神々から教えてもらえなかった。」

 茂日出は手慰みに金属板に触れ、麻久佐に聳える証宮離宮殿の塔の写真を円卓の上に映し出した。

「証宮の時空に穴を開ける装置を動かす為には大量の燃料――霊的エネルギーというものが必要なのだ。恐らく研究を進めれば少ない燃料で動かせる様になる筈だが、今はまだそれは難しい。――そのせいで、地下や海底から霊的エネルギーを汲み上げる際に地殻が不安定になり地震が起きる事もある。」

「あ・・・証宮の警報の・・・。」

 茂日出の説明に結三郎は麻久佐の町から響いてくるホラ貝や尺八の音を思い出していた。

 結三郎の言葉に茂日出達は頷いた。

「・・・神降ろしの為の時空の穴も、いずれはもっと時空に負担がかからず穴も小規模に出来る筈ですが、今はまだ神降ろしの際の影響で塔京を中心に余計な時空の穴が開いてしまうのです。ごくたまに塔京から離れた日之許の田舎とか、異世界には繋がらなくとも外国と塔京とか繋がってしまう事もありますね。」

 ダチョウは何処か疲れた様に結三郎へと説明を続けた。

「神降ろしの儀自体は、日之許以外でも多くの国々で順番に行なっていますから、どうしても時空の穴の問題は国を治める方達の悩みの種なのですよ。」

「それに、そもそも塔京への遷都自体が、日之許での神降ろしの適地が塔京にしか無かったからなのだ。燃費の良い方法が確立されておれば、冠西の京やその近辺でも塔は建てられた筈だ。わざわざ冠東に迄、京を移すなぞせずとも・・・。金と時間と人手を沢山費やして国民に負担を強いたりする事無く頒明解化を行なう事も出来た筈なのじゃが・・・。」

 反対派の神々に対して忌々しそうに愚痴を続ける茂日出の様子を見ながら、結三郎は引きつった表情を浮かべていた。遷都とか頒明解化政策とか・・・結構、日之許の国の根幹に関わる内緒の事まで聞かされているのではないだろうか。

 兎も角も、そうして発生してしまった意図しない時空の穴に不幸にも巻き込まれて塔京に転移してきた人や物への対処をしなければならない。

 日之許の国では帝や大臣達を中心に、各藩の藩主達も交えて話し合いが行なわれた。それにより転移してきた人や物を送還したり、それが難しい場合は保護する為の実行組織と場所として高縄屋敷の博物苑が選ばれた。

 元々が、塔京に茂日出が学問の研究を行なう為の施設として、広い敷地や設備が準備されていた為に、丁度良い物件として良くも悪くも目を付けられたのだった。

「そうだったのですか・・・。」

 改めて証宮離宮殿や博物苑の成り立ちを聞かされ、結三郎は今更ながら随分と大変な仕事の一端を手伝っていたのだと思い知った。

「でも・・・奥苑が出来て有難く思っていますよ。見知らぬ異国に突然飛ばされて。保護される場所があるというのは随分と不安が和らぐものですから。」

 随分としみじみと語るダチョウの様子を、結三郎は不思議そうに見上げた。

 ダチョウは嘴の端をゆっくりと上げて微笑みの表情を作りながら、

「迷い人の中には元の世界の座標が判らなくなってしまった者や、判っていても穴が完全に閉じてしまって以後全く繋がらなくなった者達も居ます。そうした者達はこの奥苑で主に暮らしているのですよ。・・・まあ、者・・・というか、植物も中には居ますがね。保護・・・というか、隔離というか。」

 ダチョウの苦笑に結三郎は奥苑の敷地の檻の中に居る肉食植物を思い出した。

「――ダチョウ・・・殿も、そうなのですか?」

 結三郎の問いに、ダチョウは軽く笑いながら、

「ダチョウと呼び捨てでようございますよ。私は外国の・・・エイテオーピャという国の草原と塔京が繋がった時に迷い込んで来たのです。」

「エイテ・・・?」

 まだまだ外国との関わりが少ない日之許では、遠く距離のある国々の事については名前すら知られていない国も多かった。

「結三郎様が好きなお紅茶の――ケニィエヤ国のお隣の小さな国です。私はそこのダチョウの精霊なのです。」

「ああ!」

 紅茶の輸入元としか結三郎は知らなかったが、それでも知っている国と関連付けられると、何となく漠然と理解出来た様な錯覚があった。

「本名は文化の違いで、日之許の言葉に翻訳するとかなり長ったらしいので、ダチョウが呼び易いでしょう。」

 大地を雷(いかづち)よりも速く蹴り、万の草原を一息の間に疾駆する、剛腕の勇者の放つ矢よりも云々・・・と、何かの詩句の様に続く言葉がダチョウの本名だというので、流石に結三郎にも覚え切れなかった。

「――同じ世界とはいえ、故郷から遠いのでしょうけど・・・何とか帰れないのですか?」

 ダチョウの話も聞いてしまい、結三郎は気の毒そうに問い掛けた。

 しかしダチョウは案外とさっぱりした様子で、むしろ楽しそうに答えた。

「そうですねえ・・・。今はケニィエヤとの貿易の海路が出来ましたから、ケニィエヤまで二か月、上陸してから一か月・・・多分、それ位で帰れるでしょうけど。今は、ここで殿や皆さんと研究をする事が楽しくて。・・・いつかは証宮に保管されている飛行機械の設計図でも頂いて、自分で作った飛行機械で故郷に凱旋するのも面白そうだとも思ってしまいましたしねえ・・・。」

 人間と精霊――しかもダチョウという違いはあっても、何かを研究する事が面白いと言い切ったその楽しそうな表情は、結三郎がいつも見ている茂日出や博物苑の鳥飼部達の表情と全く同じものだった。

「私の方の詳しい物語はまた、次回の講釈に致しましょう。一度に色々な話を聞いてお疲れでしょう。もうお休みなさいませ。」

 ゆっくりと立ち上がったダチョウに促され、結三郎も席を立った。

「そっちの角の仮眠室が空いておる。使うといい。」

「はい。義父上、おやすみなさいませ。」

 茂日出達に頭を下げると、結三郎は広間を後にした。

 結三郎が広間を出ていくのを見送ると、茂日出は円卓の前に座り直した。

「お前達ももう休むといい。――ワシは一先ずあやつと話を付けねばのう・・・。」

「殿。帝相手にそんな御言葉使いをしては・・・。」

 長年の付き合いではあり茂日出と帝の間柄も知ってはいたものの、老鳥飼部は一応茂日出を窘めた。

「おっとすまんすまん。気を付けよう。」

 茂日出は金属板に触れ、通信機能を起動させながら老鳥飼部へと苦笑を返した。

「――それでは我々はお先に下がらせていただきます。」

「うむ。」

 老鳥飼部達も広間から出ていき、後には茂日出だけが残された。

 本来であれば前藩主という身分であっても、公用私用問わず帝に謁見を願い出る場合は知代田にある帝居に申請をして許可を得なければならなかった。

 これは国で一番偉い身分である帝の身辺の安全を守る為には当然ではあった。

 しかし長年の研究仲間――大臣達や侍従達からすれば悪巧み仲間である帝と茂日出は、直通の連絡が出来る通信番号を交換していた。

 濫用する事は無かったものの、急用のある時にはこうして使用する事も珍しい事ではなかった。

 ダチョウの言っていた様に、帝は今頃は証宮離宮殿の書庫で読書三昧なのだろう。帝居を経由するよりは直接本人に連絡を入れた方が話は早かった。

 茂日出の眼前の宙空に「帝」「呼び出し中」という文字が表示され、呼び出し音の軽やかな鈴の音が響き続けた。

 相手はなかなか出ず、暫くの間――三分程、呼び出しの鈴の音が鳴り続けた。

 いい加減茂日出が苛立ち始めた頃に、ようやく通信の相手である帝の顔が空中に現われた。

「申し申し。話があるのだが・・・。」

 しかし相手の帝の方も、やや不機嫌そうな表情で茂日出の方を見ていた。

「何や、シゲやん。こんな夜中に何の用や。ワテ、今おもろい本見つけて読み始めたところやねん。邪魔せんといて欲しいわ。」

 冠西の古い言葉遣いの声が不機嫌そうに茂日出へと向けられた。

「こっちだって邪魔したくてしている訳ではないわ! 迷い人を保護し損なって見失ってしまったのだ。そちらの人手を借りたい。」

「あー・・・。例の、穴開きの作業のヤツか。」

 茂日出の話を聞きながら帝は、今回は迷い人をすぐには送り返さない方針だと茂日出が言っていた事を思い出した。

「判った。証宮新報の記者達を何人か手伝わせるわ。しゃーなしやで。」

 帝の直属の部署である証宮新報は新聞や雑誌の発行を行なう所ではあったが、博物苑の奥苑を補佐する仕事もさせる為に帝が作ったものだった。

 頒明解化を進める為に様々な知識や技術を広める活動を、新聞や雑誌の発行を通じて行なう――というのも勿論あったが、そうした広報活動や記事を書く為の取材活動を通じて町を動き易い人材を手元に置いておくという狙いもあった。

 それによって結三郎が行なっている様な、迷い人の送還や時空の穴の修復処理を行なう事も時にはあったのだった。

「ほしたら、ワテは読書の続きをするから、シゲやんはさっさと寝るんやで。」

「待て待て。人手の融通は感謝する。後日礼もしよう。・・・それはそれとして、今度は何の本を発掘したのだ。」

 ここにダチョウや老鳥飼部達が居たら、必ず呆れた様な視線を受けたと思われた。

 通信を打ち切ろうとした帝を引き留め、茂日出は書物の内容について問い掛けた。

「――・・・・・・迷い人の事は急用やからしゃーなしで許したけど。ヒトの読書の邪魔して最後に言う事がそれかいや!」

 茂日出の事は決して言えないのだが、帝は思いっきり嫌そうな呆れた様な視線を茂日出へと浴びせ掛けた。

「――「破局噴火の歴史とその後の生物相の復旧に関する詳細調査」や・・・。最後の方には佐津摩の沖の祈界カルデラの事も載っとるみたいや。」

「何と!」

 目を輝かせる茂日出の顔は自分と同類の者の顔でもあったので、帝はうんざりとした表情で自分の手元の金属板の端末を触り、さっさと本の内容を複写した物を奥苑の電子計算機へと送信した。本を寄越せ、寄越さないの言い合いは時間の無駄であり、自分の読書時間が削られてしまうと言う事を帝はよく判っていた。

 送信に気付いた茂日出は機嫌の良い表情になり、帝の映像に大きく頭を下げた。 

「いやいやいつもかたじけない。ではこれで。」

「ワテもヒトのコト言えんけど、さっさと寝るんやで――。」

 用が済むとさっさと通信を打ち切った茂日出の映像を帝は呆れながら眺め、一面灰色の表示になってしまった宙空の表示に指先で触れ、掻き消した。

 

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メモ書き

 年末休みで調子に乗って執筆しております。内容的には何と言うか、説明会・説明回ですね。

 小説を書く上で気を付けてはいるのですが、設定とか背景とかを単にキャラクターに延々説明させているだけというのはアタシ自身の考えとしてはあんまり良くない事だと考えています。

 あくまで人物が思い、行動して物語が出来ていくものだと考えているので・・・。まあ偉そうな事を言いながら結局だらだらの説明回です。本当に申し訳ありません。この件につきましては開き直ろうと考えております(ポ××ピピ××)

 早く相撲男子がわちゃわちゃキャッキャしている様子を描写してひとり悦に入りたいでごわす。

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