第4話
正直、逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。
握ったこともない銃は、引き金に手をかけているだけで爆発してしまいそうだ。
手が、震える。戦わないと死ぬ。それだけが頭を巡る。
情けない話だが倒れた少女が起き上がってくることを祈り、ちらりと目をやる。苦しそうに蹲っている。当たり前だ。
僕のせいでもある。彼女が倒れたのは。だから僕が守るべきだ、いや僕が守らなければならない。
折り合いなどつかない。急に覚悟などできるはずもない。そう思いながら、もう一度だけちらりと少女を見やる。
苦しそうに蹲る小さな背中は、命のやり取りを背負うほどの大きさには見えなかった。ここで僕が撃たなければどうなるか、この小さな命がどうなるのか。
深く、深く息を吐く。握る手に力が入ると、音が次第に遠ざる。汗が頬を伝った。
引き金に指をかけ、走り寄る影に銃口を向けたが、全速力で走るそれを狙う時間などとうに無くなっていた。今からでは間に合わない・・・思考がぐるぐると回り出す。
ガァン!
聴いたことのある銃声とは少し違う。表現しにくいが、少し電子音のような感じがする。自分のものではない。
「ボサっとしてんじゃねぇ!撃つんなら撃てよ!」
少女の怒号に背中を押されるように、引き金を引く。
ガァン!
同様の銃声を伴って、光る弾丸が銃口を飛び出した。放たれた弾丸は想像を軽く超え、反動で腕が後方に跳ねる。ビギナーズラックが捉えた脳天への一撃は、頭を吹き飛ばすのに十二分の威力を誇っていた。
思わず生唾を飲む。
「次来るぞ!」
少女が吼える。心が戦場に戻る。
構えて、狙い、撃つ。痺れる腕を抑えながらではあったが、少しずつ反動にも慣れてくる。
「外してんじゃねぇよ!ちゃんと狙え!」
罵声を浴びせつつも少女は援護してくれた。
襲いかかってきた五体のうち、逃げ出したものはいなかった。仲間がやられても、戦いをやめない彼らが今更ながら恐ろしくなり、鳥肌が立った。こんな恐ろしい思いを、この子達はずっとしているのだろうか。
戦闘がひと段落してからまず少女の介抱に向かった、がすぐに荒っぽい少女に縛り上げられ銃も取り上げられてしまった。
当然の報いである。自分の処遇よりも、今は怪我の具合だけが気になって仕方がない。落ち着いてきた今、罪悪感がじわじわと鳩尾の辺りをせりあがってくる。
せめて大事なければよいが、と思っていたが回復は拍子抜けするほど早く、一時間もないうちに起き上がって会話をしていた。
ほっと胸を撫でおろした僕の前に、小さな影が二つ並んだ。
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