第2話

 ズキリとした頭の痛みで目が覚めた。どうやら気絶していたようだ。

 意識が覚醒してくるにつれて痛みがよりはっきり感じられるようになった。

 頭を押さえようとしたが手があがらない。後ろで縛られているようだ。きつく縛られており、手首がじりじりと痛む。

 どうやら先ほどの研究所らしき場所からは離れていないらしい。見知らぬ場所に連れていかれなかったことに安堵すると、遠くから話声が聞こえる。先ほど出会った少女たちだろうか。言い合いをしているようにも聞こえる。

 同じ姿勢のままでは体が攣りそうだったのでもぞもぞと体勢を変えていると、先ほどまで遠くにいた少女たちが飛んできた。

 「逃げるつもりか!?逃げたら撃つ。それが嫌なら私たちに従え。」

 「逃げませんよ!体が痛かっただけです!・・・・それで、ここはどこですか?」

「ここはラボと呼ばれているところです。私たちはこの近辺に出現する化物を狩るためにここにきています。・・・それであなたはどこの誰なんですか?どうしてそれだけ弱くてまだ生き残っているんですか?」

 比較的穏やかそうな白い髪の少女の言葉を反芻して状況把握に努めようとするが、痛む頭と記憶が空っぽの頭ではなかなかうまくいかない。

 「申し訳ないですが、僕は多分ここに来たばかりです。記憶もおそらくほとんどありません。だからここがどんな場所かも知らないし、自分の名前もわかりません。化物にはまだたまたま会ってないんだと思います。逆にこっちが色々聞きたいくらいなんですが・・・」

 「はぁ?記憶がないだぁ?しらばっくれようったってそうはいかねーぞ」

 「俄かには信じがたいですが・・・とりあえずここは・・・」

 そう少女が言い終わらないうちに遠くから叫び声が轟いた。

               

 どこか人間の声にも聞こえるそれは言葉の形を成していなかった。

 「まさか仲間を!?」

 「考えるのは後です!とりあえず今はあいつ等を!」

 叫び声の方に走っていった彼女たちの背中を見送りつつ呆然としていると、ふと手元の縄が緩んでいるのに気付いた。しっかり結ばれていなかったのか、身動きで解けたのか、今はただ抜け出せることに感謝しつつ情報収集と大義名分をつけて野次馬しに行くことに決めて、バレないようにこそこそと彼女たちの後を追った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る