第14話 後始末
「もしもし、終わったよ」
「ありがとう、でも終わりというより始まりかもね」
「ふふ、そうかもね。でもあれで良かったの?」
「仕方ないよ、決めたのはなおだから」
「それはあいつの自業自得だからどうでもいいの。あなたの名前も少なからず話題になってるのよ?」
「それも仕方ないよ。隠しても暴かれるだけだしね」
「まあそれならいいんだけど、でも今回は結構私も疲れたよ」
「本当にありがとう、お姉ちゃんがいなかったら何もできなかったよ」
「いやいや、あれだけ詳細な情報がもらえたらなんとでもなるね」
「これはループしたおかげってやつかな」
「もうループなんて信じられなかったけど、これだけ的中されたら何にも言えなくなっちゃったよ。でも良かった。なぎが生きてて。本当に良かったよ」
「うん、ありがとう、お姉ちゃん。じゃあ次もよろしくね」
「うんわかった、体には気をつけて楽しんで」
「お姉ちゃんこそだよ。じゃあまたね」
なぎはこの結末を望んでいたのか望んでいなかったのか、複雑な心境だった。始める前は絶対に許せないと思っていたが、終わってしまえばもうどうでもよくも思えてきた。
なおと最後の約束は二度と結婚しないことということだった。なおはやっぱりなぎを舐めていたから結婚しても大丈夫だろうと高を括っていたのだろう。なぎはみくとの結婚を許したくないという思いがあったけれど、もしかしたら諦めてくれるんじゃないかという淡い期待もあった。しかし二人は結婚を発表してしまった。そのあとは自動的に計画は進んでいく仕組みだった。
開発メンバーだった姉はなおのPCやスマホで全ての計画を完了していた。またなぎは不倫相手の一人だったみくのスマホにも侵入していた。あの迷惑メールは姉が送ったものでみくの動向も二人の知るところになっていた。
週刊誌の記事についてはなぎの知らないところで起こったことだった。それだけなおの行動が鼻についた人が多かったということだ。なおの人柄は悪いところだけではないが、上部の見た目の明るさや優しさの奥のなおの本性を見抜けなかったと、なぎは反省し、大きな教訓を得た。
なぎは夫と親友という大事なものを同時に二つ失ったが、それはループ前に失ったものだった。このループが始まってから、なぎは計画を進めつつも前を向いていた。
海外のビーチでのんびりしていたなぎに、男が声をかけてきた。にやけた笑顔が気に入らなかったが、少しだけ話し相手をしたが、相手にならないと思った男は立ち去った。
なぎは大きく手を伸ばして背伸びをしたあと、ノートパソコンに向かって新しい企画書の続きを書きあげていく。企画書の原案を姉に送ると、姉からは見たこともない大きさのステーキの写真とともに、いいねと一言だけメッセージが送られてきた。
「ステーキがいいのか、企画書がいいのかわかんないよ」
なぎは一人笑って海を眺め続けた。
復讐のトリガー 握るのは彼 @GPT00
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