第12話 二度目の結婚

なぎは家を出ると離婚届を出し、なおとの関係に終止符を打った。なおに対してこれまでの全てを断ち切ることにした。なぎは事前に会社の物をまとめておき、退職代行に手続きを任せることで、会社の誰にも連絡を取ることなく、会社を退職した。そしてなぎを知る全ての人の前から姿を消した。


なぎの退社は、会社内にさまざまな波紋を広げ、驚きと疑問の声が上がった。なおも突然の出来事に戸惑い、上司からのヒヤリングにも答えられなかった。ただ離婚の事実だけを伝えることになった。


プロジェクトの進行に全力を傾けようとするなおだったが、なぎとの離婚に関する噂話や問題に直面することになる。プロジェクトの問題と個人的な問題の中でなおの精神は疲弊していった。


流石にこれ以上の遅れは許されず、会社はプロジェクトに介入し、プロジェクトの成功に向けてさまざまな人間を送り込んできた。なおはすでに名前だけのリーダーとなり、社内での立場は地に落ちていった。そしてループ前の完成日の約半年後、なんとかリリースにこぎつけた。


リリース版はなぎの完成させたものよりも数段劣ったもので、実装できなかったものも多く、またリリース直後には色々な問題山積みで散々な評価になった。

とはいえなぎの企画コンセプトは一定の評価も得ていて、幸せなSNSという形で少しずつ受け入れられいった。


さまざまな問題の中、大々的なプロモーション活動が展開されており、なおは責任者としてメディアに登場し、外面の良さと爽やかな人柄や外見から一躍注目を浴びた。社内では地に落ちた名声が、世間での期待や称賛を受けることになる。そういった意味でなおの本当の天職はこっちだったのかもしれない。


なおは世間の評判の良いところだけを見て、次第に増長し、社内でも鼻をつく態度が多くなっていく。そんななおの態度を見て、会社の人間は苦々しく見つめていたが、

リリースしたSNSは当初の目標からは低いものの、なんとか最低ラインのユーザーを取り込みつつ、収益も上げ始めていた。


おそらくそんなところでなおの気分も緩んだのだろう。いや元々のなおの持つ資質かもしれない。なおはなぎのと関係での傷(元はと言えば自分が巻いた種でしかないのだが)の痛みを感じながらもも、また元の生活に戻ろうとしていた。


そう、やはりなおはなぎのことを甘く見ていた。なぎのことを下に見ていた。

そして自分の評価を一番高めるのは今だと思い込んでいた。なおは自分のことだけを考えて生きている人間だった。なぎのことなどもう歯牙にもかけていなかった。


なおはSNSで結婚することを発表した。

その相手は……。

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