第10話 暗雲立ち込めるプロジェクト
プロジェクトの舵取りを預かるなおは、初めはその企画から称賛の眼差しを受けていたが、その輝かしいスタートが次第に灰色に変わりつつあった。初期のなおは新しいSNSの開発に対して熱意はあったが楽観的すぎていた。夜の自由が効くことから不倫に心を奪われてしまっていた。次第にプロジェクトは停滞気味なり、なんの解決策も考えていなかったなおの会社内での評価は下がり始めて、なお自身が焦りを抱えていた。
ループ前のなぎは冷静な判断力と組織を構築するスキルで、プロジェクトを成功に導くべく、先輩の力の話を聞き、力を借りにいった。協力会社についてもいくつか候補を教えてもらって、見事にマッチする会社と協力体制を整えていた。日々の忙しさから、なおとの関係は余計にこじれていくのだが、それは今となってはどうでもいいことだ。
なぎがなおの行動を把握していて、プロジェクトが上手くいかないことも当初からわかっていた。初めは楽観的で楽しそうにしていたなおもようやくことの重大さに気がつき始め、焦燥感は増すばかりだった。流石に残業も増え、夜な夜な家に帰るなおの機嫌は日増しに悪くなっていった。しかしそれでもなおはなぎに助けを求めることはプライドが許さないのか、なぎに相談することは殆どなかった。
なおはますます追い詰められていく中で、社内の評判も下がり始め、上司から対策をするように求められる。流石のなおも、最後の頼みの綱だと思ったのか、なぎにアドバイスを求めるようになる。相談役のような立場で会議に参加していたなぎは、そんななおの求めに対して、ありきたりなことしか言わず、それもなおの苛立ちを募らせる原因になっていった。
なおは会議中あからさまになぎに強く当たったり、残業が増え夜遅く帰ってきて不機嫌な態度をとってなぎを非難したりしてきた。しかしなぎはそれをどこ吹く風と気にせずに受け流していく。なおは次第にイライラを募らせていくことになる。
しかしなぎにとってもこのプロジェクト自体を失敗に追い込みたいわけではないので、遠回しに他の社員に根回しをしながら、完成への助けを行なってはいた。ループ前に成功していたなぎの的確なアドバイスもあり、プロジェクトは最悪の事態を脱してきて、完成の目処もつき始めてきたが、もうリリース日には間に合わず、進捗の遅れは取り戻せないところまで来ていた。
リリース日はループ前のリリース日から半年遅れることになった。それでも間に合うかギリギリのところだったが、なんとかここまで来れたことになおは少しだけ安堵していた。
そんな前回のリリース日の前日。そう、なぎがベランダから落ちた日、ループ前の最後の日、なぎの人生が一度終わった日、そして復讐の始まりの日がやってきた。
なぎは覚悟を決めていた。
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