第6話 二度目の結婚式
「どうしたのなぎ、大丈夫?ぼーっとしてるみたいだけど、気分でも悪いの?」
みくの声がなぎの耳に届き、なぎはあたりを見回す。戸惑いと共に
「えっ?」
と口に出してしまった。
「これからブーケトスだよ?本当に大丈夫なの?具合でも悪い?」
みくの言葉になぎは混乱しながらも、慌てて頷いた。
「大丈夫、ずっと気を張っていたから、ちょっとホッとしたみたい」
「ならいいけど、本当に無理しちゃダメだよ。気分が悪かったらちゃんというんだよ」
みくの言葉になぎは微笑みながら
「ありがとう、大丈夫」
と答えた。
そう言いながらも、なぎの頭の中は混沌としていた。またあの結婚式に時間が戻っていること、今まであった出来事が夢だったのか、という疑念が心をよぎった。もしあの出来事が夢だったなら、どんなに良かっただろうと思う。しかし私の心の中にドス黒い塊が今も残っている。あれは夢じゃない。私は絶対に許さない。その覚悟は本物だった。
なぎはとにかくこの結婚式を無事に終えることだけ考えることにした。
式場の雰囲気は一層盛り上がりを見せ、花嫁姿のなぎは笑顔でゲストたちと交わりながら、幸せの瞬間を楽しんでいた。ブーケトスの時間が迫る中、なぎは心の中で何度も呟いた。
「これは夢じゃない。二度目の結婚式。次は間違わない」
彼女は自分に言い聞かせながら、新たな人生のスタート、そう、今度は一人で新しい人生のスタートを迎えることに決意を込めていた。
ブーケトスの瞬間が訪れ、なぎは花婿を迎える舞台で気持ちを新たに、思い切りブーケを空中に放り投げた。前回の結婚式では、みくの手に華麗に舞い降りたブーケだったが、今回はみくとは逆の方向へと舞っていった。その鮮やかな軌跡は、会場に一瞬の歓声を巻き起こした。
ブーケは大きく弧を描いてなぎ達の会社でお局的存在の女性のもとに舞い降りた。会場には大きな歓声が響き渡り、お局は
「あら、私が受け取っちゃった。私もまだまだこれからね。結婚相手探さないと」と、軽妙に友人たちとのふざけ合いに加わりながら、感謝の言葉を口にした。
なおはそんな様子を微笑みながら見つめると、
「みくちゃんにブーケ届かなかったね」
となぎに声をかけた。なぎは彼の微笑みに応じながら、
「そんなにうまいこと行かないよ」
と、淡々と表情を変えずに返答した。なおとみくの関係が微妙な空気に包まれつつも、なぎはその状況を軽やかに受け流していた。
結婚式は一段落し、会場は歓談の声で満ち溢れていた。なぎはゲストたちとの交流を楽しむ一方で、心の中ではなおへの複雑な気持ちを隠し続けていた。なぎは結婚生活へのスタートが予想以上に厳しいものになりつつあることを覚悟して、気持ちを引き締めていた。
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