第2話 三人の馴れ初め

なぎとなおは幸せな結婚生活を歩んでいた。子供を迎える日はまだ少し先の未来に置いて、彼らは二人だけの時間を大切にし、新しい生活を楽しむことを決意していた。二人は同じ会社で違う部署ながら共に仕事をし、一緒に苦楽を共にしていた。


二人の馴れ初めはなぎがなおの会社に入社したところから始まる。なおはその年の新人の指導係の一人だった。なぎは会社の中で一際目を引くなおのイケメンぶりに、最初は戸惑いと共に距離を感じていた。なおは、冷静で余裕のある態度が特徴で、それがなぎが苦手とするタイプの人間で、それが初対面の時の印象だった。


しかし、なぎの直接の指導係となった先輩との関係は全く上手くいかず、なぎが苦しむ中、なおはそれを見かねてなおの先輩であるその指導係にも積極的に立ち向かっていき、なぎや他の新人を支える姿勢を見せ続けた。なおの優しさや強さに触れ、なぎの心は次第に引かれていった。

「まあ先輩も悪い人じゃないんだよ。伝え方が少し下手なだけだから、一緒に頑張っていこうな」

と頭をかきながらいうなおの笑顔をなぎはとても眩しそうに見つめていた。


そして、なぎと同期入社したみくとの友情も忘れてはならない。おっとりとしているが芯がしっかりしているみくの強さはなぎを支え、またなぎの明るさとポジティブさはみくを支え、二人は一緒に研修を乗りこえることができた。二人はいつしか親友のようになり、会社だけではなくプライベートでも仲良く遊ぶようになった。


そんなある日、なぎはなおから食事に誘われたと、みくに相談した。

「なぎは研修の最初の時、小川先輩のこと苦手って言ってた気がするんだけどな。でも二人はあの後すっごく仲良くなったよね、小川先輩も隅におけないなあ、こんな可愛い子をデートに誘うんだから」

と茶化すように微笑んだ。

「もうあの時はごめんって、人は第一印象で決めちゃダメだよね。でもみくは最初小川先輩のこと……」

いい淀むなぎのことを笑うように、

「そんなの最初の挨拶みたいな話でしょ、気にしないで楽しんできなよ。でも最初から最後までちゃんと詳しく報告すること!」

「もう、わかったよ。みくには全部報告するから、ちゃんと相談に乗ってよね」

なんて話しながら二人は盛り上がった。

そしてここからなぎとなおは急速に距離を縮めていくことになった。


しかしなぎはこの時のみくの笑顔がいつもより少し曇っていたことに気がつきながらも、それを見なかったことにしてしまったことを後悔することになる。

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