素敵な夜

素敵な夜

　土曜のよる九時を過ぎた頃のことだった。

　ねむい。

　理由はわかっている。昨日のドライブだ。

　友人とあてもなくドライブをしたのだ。

　友人が運転をして、好きな曲を流しながら俺は隣で歌ったり、中身のない会話をして楽しんだ。

　そのまま寝ずに1日を過ごしたため、今になって最大級の睡魔に襲われている。

　限界を感じ、ぽふん、と布団に寝転ぶ。

　その瞬間だった。

　ピロン、とスマホの通知がなった。

　誰だろうとスマホの画面を見るとSNSの通知が1つ。

　知らないアカウントからだった。

　何も気にせずタップすると、

「昨日は素敵な夜でしたね」

　と、真っ暗な写真付きのメッセージが送られてきていた。

　は？誰かのいたずらか？

　俺はそれを放置して寝ることにした。　

　次の日。

　目を覚まして、スマホの電源を入れると、またあのアカウントからメッセージが来ていた。

　開いてみると

「覚えていませんか」

　とのメッセージ。

　今度は暗闇の中に明かりが一つの写真が添付されていた。

　写真に目を凝らすと、街灯が写っているのが見えた。

　他にはなにもない。

　いたずらになに真剣になってんだ、とSNSを閉じようとしたときだった。

　いや、この街灯に見覚えがある。

　ドライブの途中で寄った小高い丘の休憩所にあったやつだ。

　思い出したと同時にまたメッセージがきた。

　あのとき休憩所には誰もいなかったはずだ。

　もしかして、気付かなかっただけで、休憩所に他の人がいた？

　でも仮に人がいたとしてなぜメッセージを送ってくるのだろう。

　てか、俺のアカウントがなんでわかったんだ？

　そう思いながら写真を開く。

　今度はもっと寄った写真だった。しかし暗闇。

　よく見ると黒の中に何がある。

　画像を拡大してみる。

　なんだろう。

　じっと見つめるが、よく見えない。

　ピロン

　ビビった。通知音だ。

　またメッセージがきたようだった。

『素敵な夜でしたね』

　添付されていた画像には人影がひとつ。

　誰もいなかったはずの暗闇に人影。

　こちらに向かって親しげに手を挙げる人が写っている。

　人影は街頭の下に立っている。

　影になって顔は見えないはずなのに。

　その影は笑っているように見えた。