最終章:未来へ進めマカイジャー! 編
第55話 節分の鬼退治
「鼻血出して倒れたりしたが、何とか一月も乗り切ったな」
「あれは本当に、心配したんだからね? 二月と言えば、節分にバレンタインね♪」
「勤労感謝の日もあるよ、まあ事件が起これば休みじゃなくなるけどさ」
三学期も始まり、バレンタインに一喜一憂する季節だ。
「そう言えばバレンタインは、勇子ちゃんは俺にチョコくれるの?」
「進太郎は、お返しは何をくれるの?」
「未来のゴートランド王妃の地位と暮らしは確実かな?」
「まあ、ガンスにチョコケーキ作り方習っとくわ」
季節は変わろうと、相変わらず俺達は夫婦漫才をしながら下校する。
「でも節分で鬼と聞くと、鬼退治がしたいわね♪」
「勇子ちゃん、良い鬼と悪い鬼の区別はつけようね?」
「判断が早い!」
勇子ちゃん、普通に刀燃やして鬼退治とかできるんだよな。
鬼退治と気楽に言うが、鬼と言っても、色々ある。
良い鬼は、一般人に害のない鬼。
神仏に帰依して、冥界で獄卒として働いている鬼と風神や雷神とかの神様。
鬼の力を使うヒーローとかだ。
退治される鬼は、まあ悪さする奴らだな。
日本では、吸血鬼も悪い鬼の一種になってる。
そんな風潮には、我が家の吸血鬼であるザーマスは苦い顔をしていた。
とはいえ、現代日本で悪さする鬼の退治はヒーローの仕事なんだよな。
家としては、そういう依頼が来れば退治しに行くで。
互いの家の前に着いた勇子ちゃんと俺は一旦別れる。
同じ学校で交際してチームも一緒だけど、家は別。
平安時代の通い婚かと言われたが、節度は守る。
何かやらかして、邪魔される隙を作りたくない。
素戔嗚尊様みたいに、八重垣作って勇子ちゃんを守りたい。
物理的には邪魔とか言われそうなので、あらゆる防衛策を練るのが俺の八重垣だ。
そして、節分当日。
俺達マカイジャーは、依頼を受けて小学校の校庭で節分の行事を手伝っていた。
「さあ皆、元気よく♪ 鬼は~外~っ♪」
「「鬼は~~~~外~~~っ!」」
「ぎゃ~~っ!マジで勘弁してくれ~~っ!」
デーモンナイトに変身した俺が鬼役で、レッドが指揮する子供達と戦隊の仲間達から豆をぶつけられていた。
子供達に追われながら、夕方の校庭を逃げ回る。
まあ、兜に角生やしてるけどさあ? 安直じゃない?
「は~い、皆さ~ん恵方巻できましたよ~♪」
ゴールドが叫ぶと、豆の投擲が終わる。
やっと鬼役から解放されたと思った時、敵が来た。
虚空に切れ目が入り、現れたのは邪気を発する漆黒の人形の怪物。
「ヒャヒャヒャ~♪ 獲物がいっぱいだぜ~♪」
「童どもを殺せば、ゴーバン様がお宝ザクザク恵んでくれるとさ~♪」
「俺達は人間どもに宝取られちまったから、取り返さねえとよ~♪」
下卑た笑いを発する邪悪な人型の鬼達。
邪鬼の集団、
「そうはさせないわ!」
レッドが叫ぶ。
「飛んで火にいる夏の虫だぜ!」
レッドに並び俺も叫ぶ。
「ゴーバンに魂を売るとは、度し難い」
ブルーは静かに怒る。
「子供達にはふれさせやせん!」
イエローが猛る。
「豆の代わりに拳をぶつけてやるのだ!」
グリーンは、子供達を守れる位置に立つ。
「鬼と邪教が手を組むとは、一網打尽です」
シルバーが三叉槍を構える。
「退治してやるであります!」
ホワイトはドラミングで威嚇した。
「悪鬼は成敗です!」
ピンクも巨大な手裏剣を大上段に構える。
「渡る世間の鬼退治ですね♪」
ゴールドは景気づけにギターをかき鳴らした。
「我らが退治します!」
オレンジも気合は十分だ。
「……けっ、忌々しいヒーロー共が。 野郎共、全員ぶっ殺すぞ!」
「「ヒャッハ~~~~ッ♪」」
リーダーらしい男の黒鬼が叫ぶと、空間の切れめから敵の増援が出てきた。
「上等だ! マカイジャー、ゴーッ!」
こっちもリーダーである俺が号令を出す。
マカイジャーの鬼退治の始まりだ!
「「がんばれ、マカイジャ~~~ッ!」」
子供達が応援してくれる、力が沸いて来た。
「雑魚を散らすのはお任せあれ、ブルーテンペスト!」
疾風の如く駆け抜けて、サーベルで敵兵を切るブルー。
だが、敵はひるまず増えて行く。
「オラオラ! 豆なら鉄砲玉を喰らいやがれ!」
イエローは二連装ショットガンを操り銃撃で敵兵を減らしにかかる。
「ホワイト、私達は子供達を守るのだ!」
「任せて欲しいであります、アイスウォ~ル!」
グリーンとホワイトは氷のバリケードを展開し、子供達の護衛に徹する。
「水を得た魚の如く、捌いて行きますよ♪」
シルバーは、両足に流水を纏わせ波を起こして高速移動をしながら槍を振るう。
「ギャ~~ッ!」
シルバーの攻撃に倒された邪鬼達は、煙を上げて消えて行く。
「ニンニン♪ 敵が多ければそれよりも多い手裏剣です!」
ピンクは分身して跳躍し、上空から手裏剣の雨を降らせた。
ピンクの手裏剣もシルバーの槍のように聖なる力が宿っているのか。
攻撃で倒れた敵が霧散化して消えて行った。
「弦楽器は、魔よけにもなるんですよ♪」
ゴールドがギターを弾けば、金色の衝撃波が出て近づいて来た敵を爆散させる。
「陽射しの矢を受けなさい!」
オレンジは、炎の弓矢を生み出して、敵を射て行く。
「畜生、こいつらヤベえ! ただのヒーローじゃねえぞ!」
指揮官的立ち位置の黒鬼が焦る。
魔族も邪鬼も近しい属性だからな、似た者同士なら弱点も同じだ。
「あんた達みたいなのを倒す事に特化してんのよ♪ マカイカリバー!」
「お前らみたいな奴らの倒し方は百も承知だ、ナナツサヤ!」
レッドは炎燃え盛る両手剣、俺は光り輝く七支刀を構える。
「……まさか、お前らが噂の混血王子と手下どもか?」
戦闘員を減らされてようやく、俺達が何者か思い至った黒鬼。
「そういう事だ、キッチリ退治してやる」
「私達の刃は、鬼も魔物もあらゆる邪悪を滅するわ♪」
「しゃらくせえっ! くたばれ~~っ!」
黒鬼と側近の邪鬼達は、二メートルくらいにデカくなって襲い掛かって来た。
「的が大きくなっただけね♪」
「そうだな、決めよう♪」
「右は光、左は炎、私達は火翼にして比翼!」
「我らは一対、決して離れる事は無し!」
俺とレッドは呪文を詠唱して刃を大上段に構える。
「「合体剣技四本目、比翼連理っ!」」
俺の剣から光、レッドの剣から炎が噴き出し翼を羽ばたかせるように同時に刃を振り下ろす。
光と炎の翼に切り伏せられた鬼達は、光の粒子となり天へと昇って消えた。
奴らが出て来たゲートも消えて、敵の気配もなくなり戦闘は終了した。
「これにて一件落着♪ 皆、鬼は退治したわよ~♪」
「さあ、豆と恵方巻を皆で食べよう♪」
子供達に手を振り安心させると、歓声が上がった。
マスクだけ変身を解き、子供達と交流し恵方巻や豆を食べてイベントは終了した。
「ふう、やっぱりゴーバンを敵が拝み出したか」
「富を与えるって、直球な欲望だもんね」
イベントから帰って、大使館の居間で休みながら勇子ちゃんと語り合う。
「でも、皆で子供達を守れたのは何よりだよ」
「そうね、鬼退治もできたし♪」
「いや、出来れば普通に厄払いだけで終わらせたかったよ」
「実際に鬼を倒したんだから厄払いよ♪」
「そりゃそうだけどさあ? この調子だとバレンタインもね?」
「何よ、戦いながらイベントを楽しめば良いの♪」
「うん、惚れ直す任侠っぷりだね♪」
「任侠も侍も日本の伝統よ♪」
節分の豆の余りを食いながら漫才をする俺達。
どんな強敵が現れても、勇子ちゃんの笑顔と皆の平和の為なら頑張れる。
彼女の言うように、恋もバトルも全力全開の精神で行こうと思った。
勇子ちゃんとずっと並んで進んで行く為に。
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