第54話 マカイジャーの抱負
「元旦からひと悶着だったね、勇子ちゃん」
「本当に悪党に盆暮れ正月無しよね、日本って?」
「年末年始は稼ぎ時だから」
「正月なんだから、家で時代劇特番でも見てれば良いのに!」
「今日見に行く映画って、鬼退治忠臣蔵だっけ? 元が舞台劇の?」
「そうそう、ギャグあり剣戟ありの奴♪」
新年開始から、野良の怪人達との対決をした俺達。
組織の怪人も面倒だけど、野良の怪人もランダムで出て来るのが脅威だよ。
正月も終わり、学校も新学期となってからの日曜。
新宿まで遠出して、俺は勇子ちゃんと映画を見に来た。
良く利用しているT市の映画館だと公開してないマニアック時代劇だ。
デパートを通りすぎ、三丁目のシアターに入り鑑賞した。
映画の内容は、忠臣蔵と言いつつ桃太郎や猿蟹合戦の要素が混ざりで鬼の軍団に領地を滅ぼされた若殿様が、忍者や農民や盗賊などと個性豊かな仲間達を集めて道中のトラブルを解決しつつ自軍を強化し鬼が島へ仇討ちに行きお家再興を果たす。
と言う、RPGや戦隊物のノリもありで面白かった。
「どう、結構面白かったでしょ♪」
「ああ、趣味の幅俺より広いね勇子ちゃん」
「そう? まあ家族が多趣味だからかしらね?」
劇場内のカフェで、ラテ飲みながら感想を語り合う。
取り敢えず、映画館のビルを出るまでは平和を味わいたい。
「ここ、アニメとかも力入れてるね?」
壁のポスターとかコラボメニュー表を見て気が付く。
「舞台挨拶付き上映会もやってる所だから、私達も映画撮影して公開しない?」
「予算が降りたらかな?」
「私達も、マカイジャーVS誰かとかってVS映画やってみたいわね♪」
「いや、誰とやるのさ? 他の戦隊とご縁とかないよ?」
ヒーロー運動会の後は、他のヒーローとは共闘しても余り絡んでなかったな。
今年は去年よりも他のヒーローと交流して、コラボとかして見よう。
「で、去年戦ったゴーバン教団ってクライム悪魔の連中はまだいるの?」
「いる、地球でも既存の教えを隠れ蓑にしてる輩がいるみたいに」
「叩いても、いつかまた沸いて来る敵て奴ね」
「インフルとかと一緒だよ、その時期ごとで叩くしかない」
勇子ちゃんがゴーバン教団(総称)について語り出したので答える。
意図せず関わった敵だが、小口の連中を倒した程度で大打撃は与えてなかった。
あちこちにばらけて潜んでると言うのは、他の悪の組織と同じ、
事件を未然に防いで倒せればいいが、後手に回りがちなのが歯がゆい敵だった。
「何か嫌な予感がするのよ、あいつら地球の悪党にも布教していたみたいだし?」
「だね、地球でもゴーバン信仰して悪さする奴らが出るな」
映画館のカフェでする話じゃないが、もう俺達ヒーローの職業病だ。
「ヒーローとしても生き物として、子供を狙う輩はゆるせない」
「同意だよ、今年はゴーバン絡みの輩は特に容赦なく倒そう」
勇子ちゃんの任侠心は素晴らしい、惚れるぜ。
「さっすが進太郎♪」
「んじゃ、今年の抱負も決まったしラーメンでも行こうか♪」
「うん、がっつり系の所に行こう♪」
「俺は味噌で良いかな?」
「進太郎、味噌ラーメン好きよね?」
「まあ何となくだね、野菜も入ってる奴多いし」
勇子ちゃんと話して、俺もゴーバン教団とデカい戦いが起こる予感がして来た。
だが、こっちも鍛えて備えて来たんだ負ける気がしない。
映画を見てラーメン屋で食事して、英気を養うデートをした翌日。
俺と勇子ちゃんは家の道場で、二人共空手着で稽古をしていた。
「せりゃ!」
「はっ!」
彼女の突きを俺は体を横に捌いて交わしつつ、手刀を相手の側頭部に寸止め。
今度は俺の突きを彼女が十字受けで止めて捻り、肘打ち。
ある程度型稽古をした俺達、
「「ありがとうございました」」
お互いに礼をしてひと段落。
「進太郎、私の攻撃受けるの上手くなってるわね?」
「そりゃ、稽古で怪我したくないから必死にやるよ」
「そうね、でも思い切り行けるからありがたいわ」
「相棒には、ベストコンディションでいて貰いたいからね♪」
「相棒で彼女でしょ♪」
「伴侶だと思ってるよ、愛してる」
「……うん、私も。」
お互いに自然と近づきハグをする。
「勇子ちゃん、暖かいね」
「あんたもね、あんたを好きになって良かった♪」
「こちらこそだよ、愛してる♪」
「うん、二人きりなら言って良い♪」
「俺は君と一緒なら、いつでもどこでも愛を囁くよ」
「馬鹿、子山羊メンタル♪」
「うん、俺は君となら馬鹿になるよ♪」
勇子ちゃんと出会えて良かった、結ばれて良かった。
俺は誓う、勇子ちゃんを愛し彼女と一緒に世界を守ると。
ゴーバンだろうが、他の悪の組織だろうが誰だろうと戦う。
愛する彼女と、仲間達と暮らす世界は守らなきゃ駄目だ。
勇子ちゃんとこれからも仲を深めて結婚して、子供作って育てて行く。
他人から笑われようが、勇子ちゃんが俺の正義の基準だ。
彼女に恥じない自分でいたい、なりたい。
勇子ちゃんが俺の心の太陽だ、ずっと彼女と共にありたい。
俺の抱負は変わらない、俺は今抱きしめているこの戦隊レッドを守りたい。
人と世界を愛し守ろうと戦う彼女を守る。
俺の悪魔の王子としての力は、その為に使う。
愛だよ愛、愛が力で正義だよ。
「進太郎、魔王印から全部伝わって来てるよあんたの気持ち」
「うん、隠したくないから伝える」
勇子ちゃんからも、俺を思う気持ちが伝わって来る。
この暖かく愛しい気持ちは心地良い。
「私からも、伝えられるんだからね?」
「うん、伝わってるよ勇子ちゃんの暖かさ♪」
「ちょっと黙っててね♪」
勇子ちゃんにキスで口を塞がれる。
いや、めっちゃくちゃ嬉しい。
そして、魔王印を通してヘビー級の愛が飛んで来た。
「ちょっと、進太郎! あんた、鼻血出過ぎ!」
勇子ちゃんからのキスで、俺は思い切り鼻血を噴き出して倒れた。
「なんと! 大変であります」
「エティ、ザーマス達を呼んで来て!」
気が付くと俺は、魔界の城のベッドで寝かされていた。
周りには仲間と家族が集まっている。
「良かった、進太郎♪」
「勇子ちゃん? ごめん、血まみれにしちゃって」
「そんな事良いから! 心配したんだからね!」
「いや、ごめんって」
俺も彼女にキスされて、鼻血大量に出すとか思わなかったよ。
仲間達も家族も笑ってるし、恥ずかしい。
「魔力の過剰供給による、興奮作用なのだ」
呆れた顔でフンガーが解説する。
「いや、とんでもない思春期でやすねえ?」
ガンスがほうれん草とか入ったお粥を持って来た。
「殿下もお大事になさって下さいね、あなた様も揃っての我々はマカイジャー案緒ですから♪」
ザーマスが苦笑いしながら良い事を言う。
「懐かしいわね、パパも高校生の時に同じ事になったのよ♪」
そういう所までは、遺伝しなくても良いんじゃないかね母上?
「とにかく、勇子ちゃんに看病して貰って休むと良いのだ」
「ごゆっくりなさって下せえ♪」
「我々は、何かあれば馳せ参じますので♪」
「こういう時は、二人きりになった方が回復は早いから♪」
いや、二人きりになった方がまた鼻血が出そうなんですが?
仲間達は後は若い二人に任せてと、お見合いみたいに帰りやがった。
「進太郎、安心して何かあっても平気だから♪」
「いや、嬉しいけどさあ?」
「あんたの鼻血位、受け入れるって言ってるの」
「お、おう! 何か、デレが強くない?」
「私は別にツンデレじゃないわよ、あんたが過剰なだけ」
まあ、俺がオーバー気味だったのは認める。
「とにかく、おかゆ食べさせてあげるから世話されなさい」
「はい、お世話になります」
大人しく俺は、勇子ちゃんに粥を食わせてもらう。
こうして、愛する人に看病されると言う嬉し恥ずかし体験ををしたのだった。
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