第52話 年の瀬の覚醒
クリスマスイヴはひと悶着あったけど、終わり良ければ総て良し。
残念なのは、ゴールドパンプキンオーは今年いっぱい使えそうにない事。
リュウギョオーとパンプキンオーも車検ならぬロボ検に出したので使えない。
仲間達に関してもザーマスは執事の仕事、ギョリンは年末の事務仕事。
フンガーはラボで研究で、ガンスは魔界料理の講師。
藤林さんは伊勢神宮の奉仕活動、グー子さんはマカイジャーの動画編集。
朝子さんは、上位の神様の下で人々にご利益を分け与える仕事。
エティは家のメイドと祖父ちゃん達の護衛。
戦隊としてフルメンバーで出撃するには、難しい状況になっていた。
「悩んでても仕方ないわよ、できる事はできる人に任せましょう♪」
「勇子ちゃん、俺の副官でもあるんだから一緒に悩もうよ?」
「副官だからこそ決断は早いの、辛気臭い顔しないの私といるんだぞ♪」
「うはっ、悩みが吹っ飛んだ♪」
勇子ちゃんに抱き着かれたら、彼女の事で脳内が埋まった。
勇子ちゃんの温かな感触が俺に伝わって来る、幸せだ。
「進太郎、どう? 元気になった♪」
「うん、ちょっと元気良くなり過ぎたかもしれない」
体の中に力が漲っていた。
「あらあら、冬なのに夏みたいね~♪」
「ほら、子供は見ちゃ駄目だ!」
商店街の人達から冷やかされる。
この平和、守りたい。
俺と勇子ちゃんも衣替えだ。
彼女はピンクのコートに黄色のワンピースドレス。
俺は黒のコートを上着にグレーのセーター、イエローのワイドパンツ。
「カボチャパンツで良くない、あの格好の進太郎可愛いのに♪」
「魔界だからあれで良いんだけどさ、日本の商店街で着られねえよ」
他愛無い事を言いながら二人で歩く、ご近所デートを兼ねた見回りだ。
クリスマスは過ぎたけど、悪党もヒーローも年末年始は営業だ。
ヒーローは休みであっても事件が起きれば、行かねばならぬ。
仲間が変わってくれる時もあるけれど、自分がやらねばと言う気持ちが燻る。
「進太郎、また悩んでる? 休む時は休みなさい♪」
「お、おう。 ありがとう」
「私達、恋人でしょ? 夫婦になるんでしょ? なら私を見なさい♪」
「勇子ちゃん、照れるよ」
「照れろ、私も同じ思いしてるんだから」
ちょっと道をそれて二人で抱き合う。
勇子ちゃんはやはり、俺の最高のパートナーだ。
俺、絶対に勇子ちゃんを離さない。
何度誓ったかわからない、何度でも誓う。
愛だよ愛、愛こそパワー。
「進太郎、意識飛ばすな馬鹿!」
「大丈夫、地に足付いてるから」
「ほら、ラーメン食べて落ち着きましょう?」
「うん、腹も減ったしね♪」
ご近所にアホな姿をさらしつつ、二人で中華料理屋に昼食を摂りに行く。
「ごめん下さい、味噌ラーメンとチャーハンで♪」
「餃子定食、味噌バターコーンラーメンで」
馴染みの中華屋でカウンター席に座り注文する。
何気なく見回しながらデーモンチェックして索敵、敵の気配は無し。
「二人共、何時も悪魔退治お疲れ様♪」
「ありがとうございます」
「どういたしまして♪」
馴染みの店主が料理を出しつつ、俺達に語りかけて来たので返事をする。
うん、冬のラーメンは美味い。
俺達は行儀良く、食べる前に合掌していただきますと食い出す。
食事を取り体内で魔力を作って、左手首のマカイチェンジャーに流し込む。
マカイチェンジャーに核の状態で宿る、キングゴートとクイーンゴート。
彼らは再構成する為、定期的に俺達にエネルギーを要求して来る。
構築率は現在九十五パーセント、ほぼ完了に近い。
「ごちそうさま♪」
「ごちそうさまでした♪」
食事を終えた俺達は、支払いを済ませて店を出る。
「進太郎、魔界にでも行った方が良いかな?」
「いや、そろそろ百パーセントになる感じだけど大丈夫だよ」
街中でドカンと巨大ロボが出るとかはない。
できれば何事もなく、年明けに動作テストとかしたい所。
「こんな時に敵が出て来たら、相手にとっては悲劇よね」
「まあ、強化装備のテスト相手にされるからね」
実戦に来て、こちらに試し切りの相手にされる敵には同情はしないな。
「敵に同情とかしないでしょ、進太郎は」
「まあ、俺達や人々の邪魔する奴に情けはかけないな」
こっちから狩りに行ったドラゴンは弔ったが、あれは例外だ。
基本的に悪に組織の奴らや敵に同情とかしない。
そんな事を思っていたら、案の定スマホが鳴り響く。
事件発生アプリが起動してるのを見て俺は溜息を吐いた。
「何の因果かな? 事件の方が俺達の所に来てる気がする」
「山梨都の県境に怪獣ですって♪ 良いじゃない、ぶっ飛ばしましょう♪」
恋人兼相棒の勇子ちゃんはやる気だっだ。
「デーモンシフト!」
「マカイチェンジ♪」
デーモンナイトとマカイレッドに変身した俺達。
突如、変身アイテムであるマカイチェンジャーから光が放たれた。
光が消えると、俺達の前にバイクサイズの黒い山羊のメカが二頭出現した。
「乗れって言って来てる、行こうか相棒♪」
「ええ、試運転よ♪」
俺はキングゴート、マカイレッドはクイーンゴートの背に跨り角をハンドル代わりに掴めば山羊メカ達は勢い良く空へと飛び上がった。
空を掛ける悪魔のマシンとでも言うべき、キングゴートとクイーンゴート。
俺達の脳内に、自分達が追加装甲やロボになる事を伝えて来る。
「待ってましたの高性能ねこの子達♪」
「魔力注いで育て甲斐があったぜ♪」
地上を見下ろせば、地面を割って巨大な人面蜘蛛の怪獣が現れた。
「ジャイアントスパイダー? あれは魔物だよ!」
「どっかで悪魔召喚やった馬鹿がいるのね?」
ジャイアントスパイダーもこちらに気付き、目からビームを射って来た。
敵の攻撃を避けつつ地上に降りると、キングゴート達は自動的にロボの着ぐるみのような追加装甲へと変形した。
「ふう、無事に着地だありがとう♪」
「これがゴートアーマーね♪」
俺達二人は、それぞれの胸部装甲となった山羊の頭を撫でる。
「デカい相手ならこっちもデカくなろうか♪」
「ええ、サイズ差合わせて殴り合いよ♪」
「「魔界合体っ!」」
俺が右、レッドが左にと結婚式の並びで立って叫ぶ。
俺達の追加武装、胸のゴートアーマーの山羊頭が嘶く。
俺とレッドは、追加装甲に吸い込まれれうように黒い山羊型メカに変形。
続いて、二十メートルほどに巨大化を始めて空中へとジャンプする。
四つ足から直立して背中合わせに合体し、手足を伸ばし人型に変形。
両肩に山羊の頭の肩鎧を付けた、黒く巨大なスーパーロボットが誕生した。
「「完成、ロイヤルゴート!」」
俺とレッドが、六畳間位のコックピットの中で叫ぶ。
横並びのシートに座り、目の前の台座のレバーを握る。
「それじゃあナイト、二人三脚で行きましょう♪」
「ああ、俺達の絆の力を見せてやる!」
山林を舞台に俺達の新ロボ、ロイヤルゴートの初陣が始まる。
「教習で戦車や戦闘機に乗った時みたいだね♪」
「あの教習、面白かったもんね♪」
こちらが巨大形態になると、食い応えがあると思ったのか積極的に攻勢に出たジャイアントスパイダー。
複眼を光らせて呪詛で動きを止めて、口から糸を吐いて捕えに掛かる。
「そんな呪詛が効くかよ!」
「巻き取られて上げる里油は無いわ♪」
敵の呪詛を無効化し糸攻撃は側転で避ける。
「お返しだ、ゴートストンプ!」
側転から起き上がり、大地を踏み鳴らして揺らすロイヤルゴート。
ジャイアントスパイダーも知恵があるのか、ジャンプして回避を狙う。
「甘いな、それが狙いだよっ!」
「行くわよ、ゴートサンダー♪」
レッドがレバー操作をすると、ロイヤルゴートの肩の山羊の角が高速回転。
空中にいるジャイアントスパイダーに対して、電撃を放出しヒットさせる。
感電して地上に落下するジャイアントスパイダー。
敵の落下で衝撃波が起こるが、俺達のロイヤルゴートは耐え凌ぐ。
「止めはこっちで操作するよ、ロイヤルゴートアッパー!」
俺の操作で機体が敵に近づき、両拳でのアッパーカットで天空へと打ち上げる。
打ち上げられた敵は、天空に発生した魔法の暗雲からの落雷で貫かれて絶命した。
「イエ~~~イ♪」
「やったぜ♪」
コックピットの中でハイタッチをする、俺とマカイレッド。
俺達の最後の個別ロボ、ロイヤルゴートの初陣を勝利で飾れたのであった。
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