第51話 マカイジャーのクリスマス

 宇宙から迫る脅威を退けた俺達、疲れた戦いだった。


 リミッターを外したおかげで、報酬の殆どがロボの修理代に消えたよ。


 「休みが欲しいのだ、有給使うのだ」

 「あっしも、三日ほど有休をいただきやす♪」

 「私も同じく、有給消化を三日ほど」


 フンガーにガンス、ザーマスの三名が有給の申請をして来たので押印。


 地球に帰ったら書類仕事が待っていたよ。


 「私は暫く、大使館業務に専念させていただきたいです」

 「ギョリンはそうだね、そっちは了解」


 ギョリンは事務仕事に戻った、断る理由がない。


 「自分は、山羊原家のメイド仕事に励むであります♪」


 エティはありがとう、有給使っても良いんだよ?


 藤林さんとグー子さんは帰宅、朝子さんも勇子ちゃんの家から天界へと戻られた。


 「しばらくは、地元のパトロールとか出掛けない業務がしたい」


 仕事後に母屋の自室で寝っ転がる、早く寝て朝稽古だ。


 「ふぉっふぉっふぉ、孫達との朝稽古は良いのう♪」

 「おっす、師範代♪」

 「勇子ちゃん、良い笑顔だな」

 「曾孫とも朝稽古をしたいのう♪」


 朝稽古、祖父ちゃんと勇子ちゃんの三人で空手着姿で近所を走る。


 祖父ちゃんの願いを聞いて、そんな未来の為にも頑張らねば。


 勇子ちゃんと家庭を持ちたい、楽しい家庭を作りたい。


 「進太郎、雑念出すな!」


 やば、勇子ちゃんにばれた。


 「思春期は良いのう♪」


 祖父ちゃん、あんたがネタ振りしたんだろ?


 とはいえ、俺と勇子ちゃんがこうして夫婦漫才ができるのはありがたい。


 今年のクリスマスも無事に迎えたいぜ。


 俺の願いの半分は天に届いたのか?


 イヴまでは、地元の警備や魔界での魔物退治程度の業務で済んだ。


 俺の誕生日でもある、クリスマスイヴ当日。


 「メリ~・クリスマ~ス♪ そして、殿下はお誕生日おめでとうございます♪」


 ザーマスが司会者みたいに俺を祝う。


 「進太郎、お誕生日おめでと~♪」

 「「おめでと~♪」」


 勇子ちゃんに家族に仲間達。


 皆が俺の家の母屋に集ってお祝いしてくれた。


 魔界では夜に行事があるので、人間界で昼間の内にお祝いだ。


 「皆ありがとう、今年は色々あり過ぎたけどこれからも宜しく♪」

 「進太郎も私も藤林さんもグー子さんも、赤点はなかったもんね♪」


 勇子ちゃんが俺の隣で、コーラの入ったグラス片手に微笑む。


 「ああ、皆で平和を守りながらの冬休みだ♪」

 「乾杯♪」


 コーラで乾杯する俺と勇子ちゃん。


 「イチャイチャが尊いです♪ お神酒が進みます♪」

 「まあまあ、神様♪ 泡盛も如何です♪」

 「孫の誕生日は酒が美味い♪」


 朝子さんは、年齢不詳の大人だから祖父ちゃん達と飲んでる。


 「それでは、お二人でケーキ入刀をお願いしま~~~す♪」


 グー子さんがマイク片手に叫ぶ、結婚式じゃないんだから。


 「夜も魔界でやるけど行くわよ進太郎♪」

 「ああ、二人でせ~の♪」


 俺と勇子ちゃんが、結婚式の如く二人でケーキを切る。


 ケーキを切り終えたと同時に、スマホからアラートが鳴り響いた。


 「何ですと、このめでたい日に無粋な!」


 ザーマスが事件発生に憤慨する。


 「おっしゃ、良い事してクリスマスプレゼント貰っちゃいやしょう♪」


 ガンスが拳を握る。


 「パーティーの邪魔は許さないのだ~!」

 「十分ほどで片づけてやるであります!」

 「不届き者は許しません」


 フンガーもエティもギョリンも怒る。


 俺の誕生日だから休暇なのに邪魔されたからな。


 「市内の小学校に悪魔の群れ?」

 「子供達と地域の人達がクリスマス会をされてるのでは?」


 藤林さんとグー子さんが、スマホで事件の内容を見る。


 現場に一番早く駆け付けられるヒーローは、俺達しかいない。


 「皆、こうなったら楽しく悪者退治だ♪」

 「魔界でのパーティーのご馳走の為に、カロリー消費よ♪」

 「と言うわけで、マカイジャー全員出動♪」


 俺達は宴を中断して、事件現場である市内の小学校へと向かった。


 クリスマスリースで飾った巨大グリフォンに全員で乗り、空を行く。


 現場上空から見下ろせば、校庭に飾られたツリーの周りで暴れる悪魔達が見える。


 俺達十人は輪になって空に躍り出る。


 新規の共通武装の拳銃、マカイブラスターを空いた手に持ち人々に迫る戦闘員級の悪魔達だけを銃撃しつつ降下。


 「皆さん、助けに来ました!」

 「校舎へ避難して下さい!」

 「お姉さん達が護衛しますからね~♪」


 シルバーからオレンジまでの追加戦士組に人々の避難誘導と護衛を任せる。


 「ありがとう、マカイジャー!」

 「怪人達をやっつけて~♪」

 「頑張れ、マカイジャー♪」


 避難する子供達が俺達を応援してくれた。


 「任せて、皆のクリスマス会は取り戻すわ♪」


 レッドが子供達の声に応える。


 大人も子供達もこちらに声をかけながら、校舎へ避難して行く。


 当然、敵の戦闘員達が見逃すわけもなく襲って来る。


 「そうはさせませんよ、ブルーテンペスト!」


 ブルーが嵐の如きサーベル捌きで迫り来る敵兵を切り捨てる。


 「名乗りも聞かないとは、失礼な奴らなのだ!」


 グリーンがはたき込みで戦闘員を転がして倒す。


 「手前ら、何チキンをシャケに変えようとしてやがる!」


 イエローが会場の料理に手を加えようとする戦闘員を銃撃。


 「さて、敵がビビって止まった所で名乗るわよ皆♪」


 レッドが名乗りを宣言する。


 「ゴートランド王国王子、デーモンナイト!」


 今日の一番名乗りは俺からだと名乗れば、十人全員が集合していた。


 「「魔界勇者隊、マカイジャー!」」


 個別の名乗りは無しで、全員でチーム名を名乗ると変速パターンだった。


 「おのれ~~っ! このサーモン様のクリスマスシャケ化計画を邪魔するな!」


 シャケの皮と骨と赤身で出来た甲冑を纏った悪魔が唸りを上げる。


 何か生き残った戦闘員達が、何処からかイクラが載った巨大なクリスマスケーキとか出して来て食い出した。


 敵の目の前で物食い出すとか、馬鹿だろこいつら。


 「人々の楽しい時間を先に邪魔したのはあんたらでしょ? ふざけんな!」


 レッドが怒りを燃やす、俺も許せねえ。


 「何を小癪な、イクラ爆弾攻撃を喰らえ~~っ!」


 サーモンと戦闘員達が笊に乗ったイクラ型爆弾を投げて来た。


 「させないのだ!」

 「我らの守りは鉄壁であります!」


 グリーンとホワイトが前に出て壁となる、爆弾は二人に当たるが二人は無傷だ。


 「魚系魔族の評判を落とす輩は許しません、シルバートライデント!」

 「ドグ―パンチを喰らいなさい!」


 シルバーが槍で、ゴールドは土偶型のアタッチメントを着装した拳を構えて突進。


 怪人を庇った戦闘員達を粉砕した。


 「よし、それじゃあ止めと行くかレッド♪」

 「ええ、さっさと決めて帰りましょう♪」


 俺とレッドは同時にジャンプする。


 「「ダブルバーニングキ~~ック!」」


 空中で炎に包まれた俺達は流星の如く落下し、鮭の悪魔を焼き尽くして倒した。


 「これにて一件落着♪」

 「私達の大勝利よ皆♪」


 俺とレッドのハイタッチで戦闘終結を宣言。


 体育館に避難して俺達の戦いを見ていた人々から、万雷の拍手を戴いた。


 俺達で素早く校庭を片付ければ、人々は戻りパーティーを再開した。


 こうして、事件はあった物の無事に解決。


 俺達も家に帰ってパーティーを再開した。


 「皆、お疲れ様♪ 一緒に戦ってくれてありがとう♪」


 仲間達に礼を言い、お疲れ会を兼ねて乾杯する。


 藤林さんとグー子さんは夕方になると、家の門限で帰宅した。


 夜になると、祖父ちゃん達も含めて魔界の王城へと移動する。


 俺が王子服にカボチャパンツ、勇子ちゃんがオレンジのカボチャドレス。


 二人で並んで国民達に手を振れば、大歓声が沸き起こる。


 「さあ、夜はパレードだ♪」

 「ハロウィンみたいで楽しいわね♪」

 「どんな行事やってもハロウィンになるんだよな♪」

 「楽しければどっちでも良いのよ♪」


 魔界の夜空の下、俺と勇子ちゃんはカボチャの馬車に乗り様々な種族のモンスター達で構成された国民に祝われながら城下町を祝賀パレードで巡行するのであった。

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