第50話 クリスマスを防衛せよ! 後編

 「くっそ、植物が種飛ばすみたいに沸いて来るな!」

 「ガンガン魔力ぶっ放すわよ、ナイト!」

 「ああ、俺達と皆のクリスマスの為に!」


 俺とレッドの体から出た、黒と赤のエネルギーの光が水晶玉に注がれる。


 『魔力が回って来やしたぜ、皆の衆!』

 『敵が来ますよ、弾幕増やして行きましょう!』

 『魔力連装砲、フルオートなのだ!』


 別室でイエロー、ブルー、グリーンが操作し機体の手首から生えた砲身が唸る。


 『パンプキンマイン、発射であります!』

 『実弾もエネルギー兵器も使って行きましょう!』

 『デブリは自動的に吸収、弾薬製造に回します!』


 ホワイト、シルバー、ピンクは実弾兵器担当だ。


 『こちらに来たナイトとレッドのイチャイチャを変換します!』

 『ば、バリヤーに当たった敵が消えて行きます~!』


 オレンジとゴールドは防御担当。


 俺達は今、十人で一台のロボを分担操縦していた。


 敵の進路だと言う宙域に陣取った、俺達マカイジャーを含むヒーローチーム。


 宇宙空間に黒い穴を開けて出て来たバケモンの群れを相手に奮闘中。


 使い魔の土偶達が動き回り、俺達に食事やらポーションやらを与えてくれる。


 「プレイヤーから、体力とか行動力の回復アイテムを投与されてるソシャゲのキャラの気分だよ!」

 「私達が馬鹿な話をしてられる余裕を皆がくれるんだから、頑張ってロボのエネルギーを作らないとね!」

 「了解♪ 魔力をドンドン作って、機体の各部に行こう♪」


 俺とレッドの今の仕事は、燃料である魔力を生み出して各部に回す事。


 必殺技と白兵戦も担当だが、今はガンガン砲撃や射撃で敵を撃つターンだ。


 空間の穴と敵の群れが消えたと同時に通信が入る。


 『お疲れ様でした、次のフェーズ迄十八時間のベンチタイムです』


 満月寺さんの言葉に安堵するヒーローチーム。


 超ド級巨大ロボ、ギガムーンライザーに集い整備と補給と休息タイムに入った。


 今回ほど、休息の重要さを噛み締めた事はなかった。


 「取り敢えず、お風呂入りたい」

 「俺も、そうする」


 ギガムーンライザーのドッグに収納されたゴールドパンプキンオー。


 ロボになっても城の居住機能はなくなってない。


 ギガムーンライザーは艦内に街があるとか聞いたが出かける気分じゃなかった。


 俺も勇子ちゃんも自分達のロボの中で、車中泊ならぬロボ中泊で過ごす事にした。


 それぞれが風呂を楽しんだら食堂に集い、まともな飯の時間。


 長テーブルが一つと調理場のみの簡易食堂に集ってカレーを食う。


 「お待たせしやした、ガンス特性カレーでやすよ~♪」


 料理人姿のガンスが土偶達を引き連れて料理を運んで来る。


 「くうううっ! ガンスさん、魔界カレーですか♪」

 「いや、普通のビーフカレーでやすよ!」

 

 藤林さん、食いつく所はそこなのかい?


 「戦隊と言えばカレーですよね♪」

 「日本の軍隊がカレー食べるのと同じ、伝統食よ♪」


 グー子さんと勇子ちゃんが語り合う。


 笑顔でカレーを食ってる勇子ちゃんが可愛い♪


 俺は彼女の笑顔を見ただけで飯が食える。


 「殿下の思春期、良いですなあギョリン殿」

 「ええ、尊いものです」


 ザーマスとギョリンが何か言ってる。


 「美味いのだ~♪ 脳に効くのだ~♪」

 「カレーは、良い文化ですね♪」


 フンガーと朝子さんもカレーに舌鼓を打つ。


 食後は、男女で別れて仮眠室へ向かい六時間で三日分の睡眠を取った。


 まだ九時間ほど待機時間はある。


 目覚めた時に時計を見て、そう思っていたら警報が鳴り響いた。


 「起きろ皆、スクランブルだ!」


 寝ている仲間達に叫び、俺は一人操縦席へと向かう。


 「進太郎、何があったの?」

 「多分、待機時間が終わったんだよ」

 「それじゃあ変身して、頑張りましょう♪」


 勇子ちゃんと俺は同時に変身して操縦席に座る。


 遅れて仲間達も変身した姿で駆けつけて、配置に着いた。


 「行くぞ、ゴールドパンプキンオー!」

 「私達が、戦場に一番乗りよ♪」


 俺達の機体がギガムーンライザーのドッグから飛び出す。


 宇宙空間に現れた怨霊。紫の炎が燃え盛る髑髏にも見える巨大な彗星。


 「で、私達だけなの?」

 「他のヒーロー達、まだ回復してないんじゃない?」

 「つまり、タイマン上等って奴ね♪」

 「ああ、デーモンガーデン展開だ手柄は貰うぜ!」


 本当に戦場に一番乗りした俺達は、エンヴィラーとゴールドパンプキンオーだけを特殊空間を展開して現実空間から切り離した。


 唸りを上げて突っ込むエンヴィラー。


 だが、奴が強者でいられたのはさっきまでだった。


 「リミッター解除、行くぜレッド!」

 「二人で殴りましょ、ナイト♪」

 「「バーニング・ストレ~~~~トッ!」」


 背中に太陽を背負った、ゴールドパンプキンオー。


 背負った太陽を右の拳に装着して、振り抜く。


 太陽の拳は、奴が纏ていたバリヤーを消滅させた。


 キシャ~~~~ッ! って鳴き声と共にエンヴィラーの本体が姿を現す。


 とげとげしい甲羅を背負い、馬のように伸びた爬虫類風の頭。


 太い手足に鋭い爪、尻尾は鎖鉄球。


 臍にも口みたいな物がある、あんこ型の体躯の青い巨大怪獣であった。

 

 ゴールドパンプキンオーとどっこいのサイズ、上等だよ。


 「尻尾振って、鉄球が来た!」

 「この角度、ホームランコースね♪」


 そっちが鉄球ならこっちは金棒だと、巨大金棒を振って打ち返す。


 相手は打ち返された勢いで後方へとすっころんだ。


 こっちはロボを操作して金棒で大地を叩いて、衝撃波を起こす。


 起き上がりかけた所に衝撃波で再び転倒する怪獣エンヴィラー。


 怨嗟の鳴き声を上げて立ち上がり、臍の口からどす黒いビームを撃って来た!


 「ナイト、お願いできる?」

 「任せろ、ナナツサヤ!」


  ゴールドパンプキンオーが、虚空から光り輝く七支刀を召喚して両手で握り敵の光線を受け止め霧散化させる。


 「光と闇の力を持った俺に、闇の力が効くかよ♪」


 ちょっと、格好つけて見た。


 「それでこそ私のパートナーね♪」

 「う、その言葉に胸がときめくぜ♪」


 好きな人のデレは心に染みるわ~♪


 モニター越しに怪獣が、苦しんでいる気がするが気にしない。


 「何だかあの怪獣、苦しんでない?」

 「愛の力に弱いんだろ?」

 「つまり、私達は奴に対して特効もちなのね♪」

 「そうみたいだね、ならばここで決めようか♪」

 「ええ、合体剣技三本目の太刀って奴を決めましょう♪」


 俺がナナツサヤを自分の手に、レッドがマカイカリバーをコックピット内で召喚。


 敵が苦しんで動けない内に互いの剣の切っ先を交え、呪文の詠唱を開始する。


 「「光と闇、男と女、矛を回して新たな天地を生み出さん!」」


 俺とレッドで叫ぶように唱えれば、ゴールドパンプキンオーの手には黄金に輝く巨大七支刀が握られる。


 「「必殺、スパイラルピア~~~ス!」」


 七支刀を中段に構えれば、刀身がドリルの如く回転する。


 黄金の光の巨大ドリルとなったゴールドパンプキンオーは突進し、エンヴィラーの巨体を貫きその魂すらも光の粒子へと変えて昇天させた。


 「決まったぜ♪」

 「えへへっ♪ やったわね、進太郎♪」


 敵を倒した事を確認すれば、レッドがマスクをオフにして素顔を晒す。


 勇子ちゃんの笑顔は可愛い。


 「ああ、後は地球に帰ってクリスマスだ♪」


 俺もマスクだけオフにして素顔になり、勇子ちゃんとハイタッチで勝利を祝う。


 それと同時に、機体の戦闘機能がロックされ現実空間へとゴールドパンプキンオーは戻って来たのであった。


 『マカイジャーの皆様、お手柄でしたわね♪ 祝勝会は如何です♪』


 満月寺さんが通信を入れて来た。


 「楽しそうだけど、お祝いなら地球に帰ってからにするわ♪」

 「そうそう、地球が一番落ち着くよ♪」


  一足先に地球へ戻ると、俺達は満月寺さんに告げる。


 かくして、迷惑な宇宙怪獣を始末する仕事は終わった。


 俺と勇子ちゃんは仲間達を連れて、地球へと帰還したのであった。

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