第七章:冬の闘争編

第47話  宝玉解放

 ドラゴン狩りでの資金稼ぎを行なった俺達。


 倒したドラゴンはその場で弔いを行った。


 「この者の魂は、私が天に持ち帰り生まれ変わらせましょう」

 「ありがとうございます」


 朝子さんがイエロードラゴンの魂である光の玉を抱きながら告げる。


 そして彼女は、光の柱を上げて天へと昇った。


 ドラゴンは、解体と加工を行い血肉は食材に皮や骨は素材に変えた。


 ドラゴンの素材で資金を集めて人間界へ戻った俺達。


 俺は勇子ちゃんと一緒に、横浜にある満月寺重工の応接室にやって来た。


 宇宙での戦いで、満月寺さんの会社の技術力はやはり凄いと感じた。


 だがメインでお世話になっている、伊賀ロボテックさんも無視はできない。


 なので、伊賀ロボテックの百地さんと満月寺さんの四人で話し合いだ。


 何とか合同で、両社と仲良く事を進めたい。


 「魔法少女として、魔界のロボットは大変興味深いですわ♪」


 満月寺さん、お嬢様と言うだけでなく会社の重役でもあるらしい。


 「我が社といたしましても、満月寺重工さんのノウハウも学べてと好条件です」


 そんなわけで相談だと、二人に情報を提供して興味を持ってもらう腹積もり。


 話を振った限りでは、両方から好感触を得らえた気がする。


 ゴールドパンプキン城を実際に満月寺さん達にも見て貰い、まずは伊賀ロボテックとの満月寺重工による合同調査からと言う事で話は付いた。


 百地さんが先に帰り、俺達と満月寺さんで茶飲み話になる。


 「しかし、良くこっちの相談に乗ってくれたわね?」

 「お友達が面白い話を持って来てくれたのと、ご縁ですわ♪」

 「ご縁って、どういうこと?」


 勇子ちゃんからの問い明けにご縁と答えた満月寺さん。


 俺は良くわからなかった。


 「私のお母様と進太郎様のお母様、チームメイトでしたのよ♪」

 「マジかよ、世の中狭いな」

 「本当ね、おば様のヒーロー時代の事は調べてなかったのもあるけど」


 本当に世の中は狭い物である。


 いや、俺が母上の昔の事を調べなかったのは母親が魔法少女だったと言うのがまあそのこっぱずかしかった。


 「キューゴートと言えば、当時は人気の魔法少女でしたのよ?」

 「いや、あまり聞きたくないんだが?」

 「進太郎、こういうのは聞いておかないと♪」

 「勇子ちゃん、こっぱずかしいよ」


 満月寺さんから、俺の母親が魔法少女チームで活躍してたと聞かされた。


 仕事も兼ねて友人と交流した帰り、臨港パークの通りを歩く俺と勇子ちゃん。


 「中華街で買った肉まん美味しいわね、進太郎♪」

 「ああ、海の見える通りって洒落た場所で食うと美味いね♪」


 都下である地元のO市は、山とか林とかだからな。


 ベンチに座り、紙袋に入った肉まんを食べてる勇子ちゃんは可愛い。


 「勇子ちゃん、スマホで写真撮るよ?」

 「え、変な所撮らないでよ?」

 「勇子ちゃんの笑顔に変な所なんてないよ♪」

 「こっぱずかしこと言うなあ~っ!」

 「いや、肉まんを投げようと構えるなって!」


 昼間から折を見てじゃれつく俺達。


 だが、俺達が青春ラブコメをしてる中でも事件は起こる。


 俺達二人のスマホが鳴り、画面には事件発生を知らせるアプリが起動する。


 「まったく、こんな時に!」

 「すぐ近くだ、行こう!」

 「肉まんパワーでぶっ飛ばすわ!」


 勇子ちゃんが肉まんを全部一気食いし、紙袋は灰も残らず燃やし尽くして変身。


 俺もデーモンナイトに変身して、二人で走り出す。


 「オ~コゼ~~~~ッ!」


 広場に現れたのは大口にギョロ目、突起の付いたヒレとオニオコゼの怪人だ。


 周囲で散歩などをしていた一般人達は、一斉に逃げ出す。


 「避難誘導の手間が省けたわね♪」

 「訓練は大事だね、行くぜ!」

 「「ダブルキック!」」


 俺とレッドは跳躍し、オニオコゼ怪人へ死角から飛び蹴りを叩き込んだ。


 牽制も兼ねた俺達の不意打ちで、オニオコゼ怪人は海へと落ちる。


 「何処の組織の怪人かしら?」

 「ごめん、調べる前に蹴り飛ばした」

 「大丈夫、海から戻ってくるから」


 レッドの言うとおり、海が波立ち怪人が飛び上がってきた。


 「デーモンチェック!」

 「ぐわっ! う、動けん!」


 魔力を使い、虚空に浮かんだ見開いた目の形をした紫色のエネルギー波を浴びせて怪人の動きを止めてから敵をアナライズする。


 レベルアップしたデーモンチェックは、敵の情報を抜くだけでなく動きも止める。


 敵の名はオコゼポイズン。


 分類は水棲怪人、所属は怪人結社リーパーで弱点は火炎。


 デーモンチェックで俺が得た情報は、マカイレッドにも伝わる。


 「解析ありがとう♪ 赤の宝玉よ、私に力を貸して!」


 レッドが叫ぶと左手首の変身ブレスレットから真紅の宝玉が現れる。


 宝玉は、彼女の個人武装である両手剣のマカイカリバーのナックルガードに嵌ると真紅の両手剣の刀身を炎で包んだ。


 「剣から情報が伝わる。 これが宝玉の力の一つ、能力のブーストね♪」


 レッドが剣を中段に構えると炎の燃える勢いが上がる。


 「くそっ! 毒液を喰らえ!」


 オコゼポイズンが掌を突き出し、紫色の毒液を噴射する!


 「汚いわね、消毒してあげる!」


 レッドがマカイカリバーを振るえば、毒液は炎により完全に消滅した。


 「おのれ~~~っ! ならば肉弾戦だ!」

 「俺の恋人に近づくな! 宝玉解放っ!」


 俺はレッドとオコゼポイズンの間に割り込み、変身ブレスを敵に向ける。


 黒い宝玉が飛び出し、オコゼポイズンを吹き飛ばして俺の手に跳ね返る。


 「俺も、宝玉の力が引きだせそうだ! デーモンガーデン!」


 俺が手に持った黒き宝玉から闇が生まれ、俺とレッドとオコゼポイズンを異空間に転移させる。


 「流石ナイト、これなら被害を出さずに戦えるわ♪」

 「弁償や請求書の心配なく戦えるって、ありがたいぜ♪」


 ヒーローにとって、怪人よりも被害の請求書の方が手強い敵だと思う。


 暗闇の荒野、デーモンガーデンに敵を引きずり込んだ俺達。


 こう言う空間は普通敵が自分が強い場所で戦う為に作る物。


 だが、ヒーロー側が作った場合は怪人の処刑場だ。


 「ええい、小癪なヒーロー共! リーパーの怪人魂をなめるな!」


 オコゼポイズンが地面に手を付け、巨大なオニオコゼの怪物へと変身する。


 ヒレの突起をチェーンソーのように高速回転させて、車輪代わりに大地を駆け回るオコゼポイズン。


 「おっと、危ない♪」

 「ちょっと、恥ずかしいんだけど!」

 「大丈夫、邪魔なのはあいつしかいないから♪」

 「いちゃつくのは、敵を倒してからにしなさいよ!」


 俺はレッドをお姫様抱っこで抱き上げて、敵の突進を避けて回る。


 レッドは不満そうだが、彼女をお姫様抱っこして移動した方が早い。


 ラブコメタイムでいちゃついていた時間を邪魔されたんだ、取り戻さないと。


 ジャンプしてお姫様抱っこ状態を解除し、二人並んで空中からのダブルキック。


 背びれの突起をぶち抜き、くるりと着地。


 「おっと、背びれ壊した位じゃ止まらないか?」

 「しっかり必殺技を叩き込めって事でしょ? 行くわよ、マカイカリバー!」

 「お任せあれ、ナナツサヤ!」


 俺とレッドが互いの必殺武器を取り出し、大上段に構える。


 「闇の中に光が生まれ、炎に予よって命が芽生えた!」

 「光と闇と炎を持ちて、新たな天地を切り開く!」


 俺とレッドが口上を上げる。これは必殺技の威力を高める魔法の呪文。


 空間内の景色も宇宙空間へと変化した。


 「「天地開闢、ビッグバン・バーストッ!」」


 俺とレッドの合体剣技の二本目、頭上で互いの刃を打ち合わせて生み出したエネルギーの大爆発を起こす対界の必殺技。


 オコゼポイズンは、白き光に包まれて消滅した。


 光が消えて空間内には俺とレッドの二人。


 「この技、味方がいる所とか外じゃ使えないわね」

 「ああ、エネルギーの消耗も激しいしね」


 エネルギーを使い過ぎて、変身も異空間も解除されて現実空間へと戻った俺達。


 宝玉も含めて、新たに手にした力の習熟に励もうと誓ったのであった。

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