第44話 レッドと神様の謎
「無事に地球へと戻って来られたぜ」
「グー子さんにとっては残念だったわね」
「ああ、仲間の夢に止めさしたのは気が重いぜ」
「私達、取り戻せなかったわね」
「俺達で守ろう、失わないように」
学校帰りの会話にしては、良い気分の話じゃない。
ブラックハニワ打倒後、俺達は無事に地球へと帰還できた。
元ドグ―星だった巨大ロボも、宇宙に来たドグ―星人達と一緒に破壊。
自分達の星だったのを自分達の手で壊すって、言葉にしがたいもんがあるよな。
地球では、学校の仲間達や他のヒーロー達が頑張ったお陰で戦勝気分だ。
勝ったけど、嬉しいと言う気はしなかった。
「けど、勝ててなかったらアウトだった」
「うん、俺達にはメンタルのケアが必要だな」
「賛成、福利厚生期待してるからね♪」
「そういや、勇子ちゃんの神様って誰?」
ここは斬り込み時だと、俺は判断して尋ねる。
「神様? 家で拝んでる人、進太郎の事も気に入ってるって♪」
「いや、そりゃ嬉しいけれどきちんと面談したいんだが?」
勇子ちゃんに味方してくれるのはありがたい。
だが、仲間である俺らとも交流していただきたいです。
「実は、ヨミコとの戦いの時に神様の姿が見えたんだよね」
「そっか、私達繋がってるからね」
「できる限り早めにお話しできるようアポとか取れる?」
「うん、家でお願いして見る」
「ありがとう、神様とは仲良くしときたいから」
「進太郎、心配し過ぎ♪」
「いや、魔族と神様ってマフィアと警察みたいな関係なのよマジで?」
魔族が人に悪さすりゃ神様が退治に来る。
それは遥か昔から変わらぬ節理。
天界は敵に回しちゃ駄目って、母上も言ってた。
「大丈夫よ、進太郎が悪い存在じゃないって神様も言ってる♪」
「マジで? 書面と電磁記録双方で書類もらわないと領収証も切れないよ?」
「そう言う、契約とかに拘るのは悪魔らしいのね?」
「まあ、権利確保はシノギの為に大事だから」
契約とか大事、魔族もマフィアも筋は通すから。
取り敢えず神様との面談は、勇子ちゃんにアポイント取ってもらおう。
「神様ですか、おっかないですねえ?」
ザーマスが苦い顔をする。
帰宅して大使館に来た俺は、仲間達を集めて会議を始めた。
藤林さんは、リモート参加。
グー子さんは、故郷の星その物が無くなったので賞与と有休を贈呈した。
「あっしら人狼も、月の神様はおっかねえです」
ガンスも、狼が月の女神の眷属であるがゆえに恐れてる。
「私達、何も悪さはしてないのだ」
フンガーが訴える、俺に言うなよ。
「やはりここは一度、その神様にお供えをした方が宜しいかと?」
ギョリンの意見はありがたい。
「自分も神様のご機嫌は取るべきだと具申いたします!」
エティもギョリンに同意した。
『そうなると、お酒やお米は必要ですね』
藤林さんはリモートで会議に参加してくれている。
「料理なら、あっしの出番ですぜ♪」
ガンスが発言する。
「勇子ちゃんとも相談して、儀式の祭場設営するのだ」
「自分も設営をお手伝いするであります」
フンガーとエティなら大丈夫だ。
「米と言えば、ヒーロー協会東北支部から山形県で開催される芋煮会への出演依頼が届きました。 このオファーは、如何いたしましょうか?」
ギョリンが米と言う言葉に反応して発言する。
「良し、それだ! 福利厚生も兼ねて山形へ行くぞ!」
お供え物に良い米や酒が手に入るだろう。
勇子ちゃんにも連絡を入れる。
『了解、ド派手に行きましょう♪』
勇子ちゃんはノリノリだった。
「芋煮会ですか? お受けいたします、美味しいお仕事ですね♪」
翌日、教室で会ったグー子さんに話を振ると乗って来た。
「いや、メンタルは大丈夫なの?」
彼女のテンションの高さに、俺は不安になった。
「心のダメージはしっかり癒さないと駄目よ?」
勇子ちゃんも、グー子さんを心配していた。
「乗り越えられます、地球を新しい故郷として生きて行くと決めましたから♪」
グー子さんは微笑んだ、彼女の精神の強さは見習おうと思った。
時は流れ週末。
俺達マカイジャーは全員で、山形県Y市で行われる世界一芋煮会に参加した。
「パンプキンオーとリュウギョオーで料理するとは思わなかったよ!」
ロボの中でモニターを見ながら叫ぶ。
「良いじゃない、これも平和への貢献でしょ♪」
レッドは豪快に笑っていた。
「しかし、巨大ロボを調理器具に使うとは驚きですな」
ブルーは手順を確認しながら呟く。
「いくら万能なロボでも、想定外だったのだ」
「いやあ、あっしにとっては面白い仕事でさあ♪」
グリーンがぼやき、表の顔が料理人のイエローは喜んで操作する。
『こちらシルバー、日本人の発想のスケールに驚きです』
『シルバー殿、追加の米沢牛を鍋に入れて欲しいであります!』
『魔界でもこの芋煮会を取り入れてみませんか?』
『巨大ロボによる調理、配信する側に回りたかったです♪』
通信が繋がっているリュウギョオーからも楽しそうな声が聞こえてきた。
俺達マカイジャーの仕事は、巨大ロボを使い巨大な鍋で芋煮の調理。
昔は重機で作業していたらしいが、巨大ヒーローや巨大ロボに依頼して町おこし。
俺達のロボで、調理の為の巨大な竈づくりに鍋の搬入や洗浄と下準備から行った。
機内からモニターで外を見れば、イベントは盛り上がっていた。
「では、殿下とレッドはそろそろ変身解除しての見回りをお願いいたします♪」
「イチャイチャして来るのだ~♪」
「味見の方をお願いいたしやす♪」
ブルー、グリーン、イエローが俺達に気を回す。
「ありがとう皆、勇子ちゃん行こう♪」
「まったく、進太郎は仕方ないわね♪」
変身を解除した俺と勇子ちゃんはロボから降りて会場を回る。
「うん、芋煮のカレーうどんも美味しいわね♪」
「ああ、勇子ちゃんと一緒だから更に美味いよ♪」
「まったく、あんたって調子良いんだから」
「いやあ、勇子ちゃんのお陰だよ♪」
仲間達の援護を受けた俺は、愛する勇子ちゃんとお祭りデート。
俺は黒のパーカーに緑のカーゴパンツ。
勇子ちゃんは、ピンクのスタジャンにジーンズとラフな格好。
俺達が作った大鍋の芋煮以外も出店が出ていて、食べ歩きする。
「この芋煮も、例の神様のお供えにできないかな?」
「そうね、喜ぶと思う♪」
「可愛い勇子ちゃんの姿を見られて神様に感謝だよ」
「あんた、またそう言う恥ずかしい事を言って」
勇子ちゃんが俺の腕を肘でつつく。
天地神明に誓って嘘は言ってない。
美味しそうに食べる勇子ちゃんの姿が見られて嬉しい。
「本当にもう、気が緩みすぎよ?」
「福利厚生も兼ねてるから、リラックスしてていいんだよ♪」
恥ずかしがる勇子ちゃんは可愛い。
「本当にあんた、馬鹿になってるわね」
「馬鹿で結構だよ、山羊だけど」
「セルフでボケないの!」
「いや、相方がいるからね♪」
いつも通り、俺と勇子ちゃんで山形グルメを味わいつつ夫婦漫才。
愛する人と平和な時間を過ごせるって、大事だな。
「じゃあ、食べ歩きも楽しんだしステージを見に行きましょう♪」
「ああ、地元のヒーローさんのショーだっけ?」
「そうよ、同業者の仕事は見ておかないと」
「他山の石だね、行こう♪」
ステージへと向かう勇子ちゃんの背後に、日本の神様なのかわからないが羽衣を背負った巫女服の女性のビジョンが見えた気がした。
「勇子ちゃん、もしかして神様降りて来てない?」
「え? どういう事?」
「いや、何か見えたんだけど?」
勇子ちゃんを止めて尋ねる、本人は気づいていないのか?
「……お、降りて来てませんよ? 顕現もしてませんよ」
「あの、隠れ切れてませんよ?」
「あ、神様だ♪ 進太郎、あれが神様よ♪」
勇子ちゃんが木陰に潜み切れてない神様らしい、高身長の巫女さんに手を振る。
これが俺の、神様との初遭遇であった。
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