第六章:十勇士覚醒編

第38話 強化の条件

 演劇祭も終わり十月に入った頃。


 「殿下、ゴールドパンプキン城の変形の条件が判明いたしました」

 「マジで、やったぜ♪」


 大使館の居間で休憩していた俺にギョリンが吉報を持って来た。


 ギョリンから手渡された紙を見て、内容を読んでみる。


 「宝玉に目覚めた十人の勇士揃いし時、黄金の城立ち上がる?」


 つまり後二人ほど仲間がいるな、俺も勘定に入れて。


 自分が勇士と言う柄ではないが、なってやる。


 自分を除外する癖は止めろって、勇子ちゃんに言われてるし。


 「宝玉についても気になるな? どこかにあるのか生み出すのか?」

 「後二名の仲間の勧誘も必要ですね」

 「ああ、必ず探し出そう」


 勇子ちゃんとも情報を共有せねば。


 「良いじゃない、RPGみたいで♪」

 「好きだねえ、俺もだけど」


 勇子ちゃんはゲームではRPG好きだった。


 「十勇士ってのも、熱いわね♪ 八でも十二でも良いけれど♪」

 「時代劇も好きだよな、勇子ちゃん」

 「アメリカでも日本と言えば侍や忍者だったからね」

 「家の流派、そんな剣術は取り入れてないのにな?」


 山羊原流、沖縄の流れを汲んでいるが一応は刀も使う。


 「まあ、強化条件の解明に勤めつつ仲間集めもいたしましょう」


 母屋から大使館へと来たザーマスがまとめる。


 「魔界と人間界の為に、使える手は増やしやしょう♪」


 ガンスも乗り気だった。


 「……私としては、自分の開発品を古代技術で改造されるのは面倒なのだ」


 疲れ気味のフンガーは、ゴールドパンプキン城の調査にも関わっていた。


 家のチームの博士枠なので、負担をかけて申し訳ないと思っている。


 「まあ、フンガー博士もお疲れ様です」


 海軍から事務方に異動したはずのギョリンも、申し訳ない。


 「適材適所でありますよ、フンガー殿もギョリン殿も」


 白髪褐色チビッ子メイドのエティが呟く。


 鳴き声と共に、窓から鷹が大使館の中に入って来た。


 ご近所に驚かれそうとか思ったが、今さらだな。


 「ちょっと! 何でいきなり鷹が入って来たの?」

 「もしかして、藤林さんかな? 足に手紙が付いてる」

 「いや、あの子普通にスマホとか使えるでしょ?」

 「忍者キャラを忘れないようにしてるとか?」

 「そうね~♪ 個性を忘れないて大事よね~♪ って、あほかっ!」


 勇子ちゃんが俺にチョップでツッコむ、いつもの夫婦漫才です。


 ザーマスが鷹の足から手紙を取り、手渡してもらう。


 手紙を読めば当たりで、藤林さんからだった。


 『こちらでも残り二名の勇士探しをお手伝いします、ニンニン♪』


 「いや、あの子そんな忍者っぽいキャラ付けしてなかったわ?」

 「俺達と知り合った事で、キャラ付けが大事だって気づいたんだよ」

 「んなわけあるか~っ!」


 再び勇子ちゃんからツッコミチョップが来た、あざっす。


 「まあ皆、引き続き通常の業務と継続で頼む」


 俺は仲間達に頭を下げた。


 宝玉の力に目覚める方法も調べないと。


 後二人の追加戦士もどこを探せばよいのやら。


 「進太郎、一人で悩んでないで動きましょ♪」

 「具体的にどう動くのさ?」

 「詳しそうな人、進太郎のおば様に聞き行くのよ♪」

 「その手は、あんまり使うのは嫌なんだけどな」

 「頼り過ぎも駄目だけど、頼れるときは頼らないと」

 「わかったよ、聞きに行こう」


 勇子ちゃんに引っ張られて、俺は魔界の実家に向かった。


 「あ~、やっぱり自動でカボチャパンツに変わる仕様かよ!」

 「王子様の正装なんでしょ、諦めなさい♪」

 「クラスの連中に笑われたのは悔しいんだけど?」

 「おっし、じゃあそいつらぶっ飛ばす?」

 「いや、それはしないよ流石に」


 俺と勇子ちゃんは、王子様とお姫様内相に自動的に着替えさせられた。


 演劇祭の時の自分のやらかしを思い出して、ちょっと辛い。


 「ほら、行くわよ? ここは、あんたの家なんだから♪」

 「いや、そうだけどね?」


 城の廊下をメイドや家臣達に頭を下げられては手を振り進む。


 「お帰りなさい、二人共♪」

 「お久しぶりですおば様♪」

 「戻りました」


 プライベートルームで待っていた母上に勧められてテーブルに着く。


 「演劇祭、どっちのパターンも面白かったわ♪」

 「いや、その事は置いておいてください!」

 「おば様、宝玉と十勇士ってご存じですか?」

 「流石勇子ちゃん、ズバッと行くな」

 「あんたが、おば様に対して素直じゃないだけよ♪」

 「そうよね、進君はもっと甘えて良いのよ♪」

 「そこは父上のポジションですから」


 話が脱線する、宝玉の話だ。


 「はい、ゴートランド十勇士のお話よ♪」


 母上が一冊の本を虚空から取り出した。


 本が空中で自動的に開き、周囲に映像を映しだす。


 「昔々、ゴートランドができる前の魔界は戦国の時代でした♪」


 母上が語り出す、初代国王がゴートランドを建国した時の物語。


 「え、人間だけじゃなく宇宙人や神様も仲間にいたの?」

 「人間が仲間にいたから、家の国は人間界と付き合って来たのか」


 俺と同じように山羊の角を生やした王子が、伝説の黒山羊に導かれて様々な仲間と出会い冒険をする物語が展開される。


 黒山羊の王子、吸血鬼の吟遊詩人、人狼のメイド、フランケンの戦士に半魚人の商人は今のゴートランドのメイン種族だ。


 イエティの力持ち、人間の侍に巫女と言うか天女っぽいのが神様か? 


 宇宙人は、宇宙服っぽいの着てる。


 十人の勇士達は、旅の中で大きな金のカボチャと出会う。


 ついに知りたかった情報がわかる、カボチャが勇士達に宝玉を吐き出していた。


 「そうか、宝玉は城が作り出していたのか!」

 「身分証みたいな物かしらね?」

 「旅をしてきた勇士達の最後の敵は、巨大で邪悪でした」


 母上の語りが入ると同時に、ムービーも勇士達が乗り込んだカボチャが巨大ロボへと変形して真っ黒な敵との巨大戦に入る。


 勇子ちゃんは映像を見ながら涙を流していた。


 俺は自然と彼女の涙を拭うべく手を伸ばした。


 熱い、涙が熱湯だよ。


 だけど俺はこの熱さを受け入れる、熱い涙も彼女の心だ。


 デーモンパワーで回復させつつ、俺は両手で彼女の涙を拭う。


 小学生の頃、俺の涙を彼女が拭ってくれたように今度は俺がやるんだ。


 「勇子ちゃん、戻って来て!」

 「……え、ちょっと進太郎っ! あんた、火傷してどうしたのよ?」

 「良かった、勇子ちゃんが戻って来た♪」


 俺は彼女が戻って来た事に安堵する。


 勇子ちゃんが正気に戻り、慌てて俺の手を取り癒しの光で照らした。


 「いや、勇子ちゃんが泣いてたから涙を拭ったんだよ」

 「ごめん、私にも何だかわからない」

 「魂に響いたんだろうね、涙流してる勇子ちゃんは綺麗だったよ♪」

 「ちょっと、おば様の前で恥ずかしいでしょ!」

 「いやあ、良い物みられました♪」

 「進太郎の、馬鹿~っ!」

 「馬鹿で良いよ、俺は勇子ちゃんが大好きな馬鹿だから♪」


 俺は荒ぶる勇子ちゃんを抱きしめた。


 「あらあら、二人とも素敵よ♪ 写真撮りましょうね♪」


 俺達を見物していた母上が、デジカメを取り出して撮影を始める。


 「ちょ、母上?」

 「おば様っ!」

 「十勇士のお話でヒントは見つかったでしょ? ママに付き合いなさい♪」


 俺と勇子ちゃんは、王子様&お姫様ルックでの撮影会を命じられた。


 「ふう、大変だったがヒントは得られたぜ」

 「後は、ゴールドパンプキン城の調査ね」


 俺は黒いパーカー、勇子ちゃんはピンクジャージと私服姿で戻って来た。


 「進太郎、あんたもっとおば様達と触れ合いなさいよ?」

 「勇子ちゃんもじゃね?」

 「家はもう、パパとママが弟連れてアメリカだもん」

 「ああ、無事生まれたねえ♪」

 「良かったわよ、どんなヒーローになるかしらね♪」


 大使館の居間で、ソファにもたれかかり駄弁る俺達。


 パワーアップのヒントは得られた。


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