第39話 奥多摩宇宙人街

 「しかし、宇宙人が建国に関わていたとは?」

 「あっしは、ただのおとぎ話だとばかり思っておりやした」

 「建国の伝説は真実なのだ、ゴールドパンプキン城を調べたのだ」

 「我々は伝説の後継者と言うわけですな」

 「昔話で聞いたくらいであります」


 大使館の居間に集った仲間達の反応。


皆どこか、今一つと言う感じだった。


 俺も皆の言う事は共感できる。


伝説は本当だったんだ状態だ。


 「まあ、こういう反応だよな」

 「仕方ないわね」


 俺と勇子ちゃんは、仕方ないよなと仲間達の態度に納得する。


 「しかし、現代では仲間は宇宙人でなくとも良いのでしょうか?」


 ザーマスが疑問を口にする。


 「確かに、俺達の代でも宇宙人がメンバーじゃなきゃいけない理由はないな」

 「大事なのは、ハート♪ 私達のスタンスに共感してくれるかよ♪」


 勇子ちゃんが良い事を言った。


 「人と魔族が手を取り合って進む未来、この場合の人は人間性のある存在で」


 人間らしさがあれば人属性を付与して人扱いするで。


 「神様もですかい?」

 「接触した時に、コミュニケーションできるならな」


 ガンスも問いかけて来たので答える。


 付き合っていけるかどうかだよな。


 「プリンス~? ちょっと有給使いたいのだ~!」

 「申請書をギョリンに出してくれ」

 「わかったのだ、ラボで書いて来るのだ」

 「では、私も同行しましょう」


 フンガーとギョリンはその場から退出した。


 「まあ、誰だろうとあっしは仲間になれば飯を食わせやすよ♪」

 「私もサポートは惜しみません」


 ガンスとザーマスも仕事に戻った。


 「さて、俺達も出かけようか?」

 「そうね、パトロールは大事だし♪」

 「あ、連絡してるんだね流石♪」

 「進太郎と仲良くねって、お祖母ちゃんから返事が来たんだけど?」

 「ありがたいよ♪」

 「あんた、家の家族と仲良いわよね?」

 「そっちこそ、大事じゃないか♪」

 「ええかっこしいよね、あんた」

 「そりゃあ、好きな人には格好良くありたいから♪」

「本当にこっぱずかしいわね」


 ピンクのジャージにジーンズの勇子ちゃん。


 黒パーカーに緑のカーゴパンツの俺。


 二人共ラフな格好で、夕方の商店街を歩いて見回り。


 聞き込みをしつつ悪魔や邪霊などオカルトチックな敵を探す。


 「取り敢えず、この辺りにはクライム悪魔とかメインの敵は出てないわね」

 「ああ、ありがたいよ宇宙人は魔力がない奴らもいるし」

 「そこは私の熱源探知に任せなさい♪」


 俺は勇子ちゃんの家の買い物もしながら敵を探す。


 いや、俺のスマホに勇子ちゃんのお祖母様から買い物を申し付けられたんだよ。


 義理のお祖母様になる人だし、俺の祖母の親友なので勝てない。


 「よ、ご両人♪」

 「あはっっは、ありがとうございます♪」

 「尻に敷いてます♪」

 「あ、山羊の兄ちゃんとレッドのお姉ちゃんだ♪」


 八百屋さんでは、ご夫婦だけでなく幼い息子さんもいた。


 「やあ少年、幼稚園とかで何かお化けとか出た?」

 「事件があったら、大使館よ♪」


 いや、一般人の事件は基本は警察の担当だよ勇子ちゃん。


 「お化けじゃないけど、UFO見た~♪ 奥多摩の方~♪」

 「そっか~♪ 調べてみるよ♪」

 「奥多摩も管轄だしね♪」


 俺達は目線を八百屋の息子さんに合わせて応答する。


 奥多摩、特に奥多摩湖は宇宙人達が利用してるんだよな。


 「進太郎、何かひっかかる?」

 「ああ、宇宙人はやはり気になるな勇士の末裔とかいるかもだし」

 「ないとは言い切れないわね、不思議な縁ってあるもんだし」

 「行ける面子で、奥多摩湖へ行こう」


 八百屋を出て歩きつつ、勇子ちゃんに語る。


 伝承では仲間に宇宙人がいたし、宇宙人の知り合いもできた。


 今後の為、宇宙に出る事も必要だろう。


 「奥多摩湖ですか、紅葉が素晴らしいですよ♪」

 「坊ちゃん達、デートしてくりゃ良いんじゃねえですか♪」

 「戦いも大事ですが、殿下と勇子様の仲を深めるのも大事かと」

 「青春して来ると良いのだ~♪」

 「行ってらっしゃいであります♪」

 「進太郎、気負い過ぎるな♪」

 「そうよ、戦いだけじゃ駄目よ♪」


 母屋に集った仲間達と祖父母から、デートして来いと言われる。


 仲間達に気を遣われた結果、俺と勇子ちゃんの二人で奥多摩へ来ていた。


 休日の朝は秋晴れで気持ちが良い。


 「で、現地に来てみたけれどどうなの?」

 「勇子ちゃんのアウトドアルックが可愛いかな?」

 「……あ、ありがと。 じゃ、なくって!」

 「まあ、中に入って見ないとわからないよ」

 「そうね、事件も起こる観光地だし」


 紅葉に彩られた山に囲まれた湖へ、軽いアウドアルックで向かう俺達。


 奥多摩周辺は、豊かな自然に惹かれた怪獣が出たり悪の組織から鉄橋に爆弾を仕掛けられるとかダムが襲われると事件が起こりやすい場所である。


 それはさておき、ピンクのパーカーに熊さんリュックの勇子ちゃんは可愛い。


 一緒にいて胸が鷹案るぜ。


 「進太郎、エッチな事考えてない?」

 「いや、コンプラとレーティングは守るよ?」

 「恋は世界を守りながらだからね?」

 「ああ、世界を守らないと恋もできない」

 「わかったなら、はい♪」

 「ではありがたく♪」


 人の邪魔にならない所で俺達は抱き合いキスをする。


 勇子ちゃんの温もりが伝わる、暖かい。


 「……進太郎の馬鹿」

 「馬鹿で良いよ、愛してる♪」

 「甘えすぎっ!」

 「おっけ、んじゃ行こうか」

 「マカイチェンジ!」

 「デーモンシフト♪」


 俺と勇子ちゃんは変身すると、湖に掛かった橋へと向かう。


 橋のある場所に辿り着くと、湖から円盤が浮かび上がる。


 「これが宇宙人街への定期便ね」

 「そうそう、UFOがバス代わりなんだよ」


 円盤からの牽引ビームで仲に入り、電子マネーで乗船料金を支払う。


 円盤が湖に沈む景色を眺めつつ到着したのは、湖底にある巨大な白いドーム。


 リトルグレイタイプの運転手が操縦する円盤はドームの屋根に吸い込まれた。


 「ここが宇宙人街ね、色々いるわね」

 「まあ、都内で宇宙人が擬態せずに過ごせる場所だしね」


 白い隔壁で覆われたドームの中は建物が並び街になっていた。


 「スペースコロニーってこんな感じなの?」

 「俺も良くはわからないけど、日本語と英語対応してるな」


 マスクだけオフにして、お上りさん状態で宇宙人街を進む俺達。


 宇宙人だけでなく地球人も普通に見かけた。


 「広場で何かやってるわね?」

 「ああ、行ってみよう」


 クレープの食べ歩きをしつつ広場へ向かうと、中央ステージでライブが行なわれていた。


 「ドグドグドグドグ~~~ウ~~~♪」


 自立稼働する土偶達のバンドの演奏で歌うのは、一人の少女。


 金髪ボブカットに白い肌、目元を遮光器で覆い衣装はセーラー服。


 俺達には理解できないセンスだった、宇宙は広い。


 「ど~もありがと~~~♪」


 少女が歌い終わると拍手が起こる。


 ついでに俺達も拍手をする。


 「あの土偶、ゴールドパンプキン城で使役しているのと似てるな」

 「そう言われてみれば、似てるかも?」


 少女の歌は良くわからなかったが、土偶達には見覚えがあった。


 「ドグー星の歌姫、プリンセス・グー子? 微妙なキャッチコピーね」

 「ドグ―星って、埼玉県とかの人かな?」


 掘れば遺物が出るらしいし、宇宙人キャラで売ってる人かな?


 お揃いの法被を着た固定ファン達が、オタ芸を始める。


 複数の種族の気持ちを纏められる、と言うのは凄いなと思ったよ。


 俺にとって一番大事な女性は勇子ちゃんである事には変わらない。


 俺の世界一の推しは、勇子ちゃんだけだから。


 「進太郎、考えてる事伝わって来て恥ずかしい」

 「勇子ちゃん、愛してるよ♪」

 「……わかってるわよ、馬鹿」


 こっちにも勇子ちゃんの気持ちが伝わって来る。


 これが俺と勇子ちゃんとグー子との初遭遇だった。

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