第33話 マカイピンクはパートタイム
「ピンクの勇者、マカイピンク! パートタイムで参上です!」
ピンク色のフルフェイスマスクとヒーロースーツを全身に纏った戦士。
恥ずかしそうに、忍者が術を使う時に印を結ぶ手のポーズで名乗りを上げる。
「お~っ♪ 可愛らしいですぜ、ピンクの嬢ちゃん♪」
ガンスがピンクを褒める。
「ガンスさんって、フランクな方なんですね?」
「堅苦しいよりは、よござんしょ♪」
ピンクに笑顔を見せる料理人姿のガンス、笑顔がチャラい。
「気を付けるのだ~? ガンスは、狼なのだ♪」
「いや、それを言うならザーマスだって駄目だろ?」
「私に振らないでいただけます? 姉上が恐いので」
「ザーマス殿、残念な人であります」
「我々も、残念な個性が多々あります」
仲間達がピンクの緊張を解こうとしていた。
「まあ、家はこんなチームだけどやる時はやるわよ♪」
「ああ、フォローしつつ現場では宜しく」
「はい、ありがとうございます皆さん」
紆余曲折あり、パートタイムの追加戦士となった藤林さん。
色はピンク志望との事で、パートで忍者な追加戦士が爆誕した。
魔界にある俺達の第二の基地、ゴールドパンプキン城に皆で集っていた。
仲間内でのスーツ姿のお披露目会と、藤林さんの為の施設の見学会も兼ねて。
「施設内の表記に日本語あるんですね?」
「まあね、魔界語もスーツ越しなら翻訳されるから安心して」
変身を解いた藤林さんが、後ろから俺に尋ねて来る。
「この城もロボになるらしいけれど、まだ条件がわからないのよね?」
俺の隣で勇子ちゃんが呟く。
「お城もロボになるんですか、こんな南瓜っぽいのに?」
「いや、日本も何でもロボにするじゃん?」
「そうそう、カボチャもロボになって良いのよ♪」
俺達三人は、他愛もない事を言い合い通路を進み第二格納庫へと到着する。
「でっかい鯱です!」
リュウギョオーを間近で見た藤林さんが驚いた。
「シルバーとホワイトと君で、三人乗りしてもらうから」
「いずれは藤林さん用のロボも用意するわ、素材採取は手伝ってもらうけど」
「素材の採取ですか?」
「魔界のモンスターを材料に使ってるんだ、俺達のロボット」
俺がロボの材料に、モンスターを使っていると語るとまた驚かれた。
「ひと狩り行きましょ♪」
「煙幕投げたりすれば良いんでしょうか?」
「後は尻尾を切ったりとかね」
「……お、お手柔らかにお願いします」
施設見学を終えて、藤林さんには身分証や軍服を支給してその日は終了した。
パートタイムとはいえ、しっかりと研修で訓練を受けて貰おう。
「我が勇者達よ、我が息子よ、母の試練を乗り越えて見せなさい♪」
空の上の戦艦の甲板から、母上がのたまう。
「ちょ! 何ですかこのパワハラわ~っ!」
「いや、俺に聞かないで! ピンクは痺れ玉投げて!」
「おば様、やけに楽しそうね!」
「まさか、女王陛下自ら手ほどきとは!」
「いや、手ほどきってレベルじゃござんせんよ!」
「陛下が、鬼GMなのだ~っ!」
「グリーン殿、不敬は大罪であります!」
「軍隊よりも厳しいですね」
藤林さんが、マカイピンクとしての研修初日。
俺達は魔界の荒野にて、母上が召喚したレッドドラゴンを相手に戦っていた。
「大丈夫、炎は私が受け持つから! ナイトは攻撃宜しく!」
「任せろレッド!」
俺とレッドは、正面から。
グリーンとピンクは後方、ブルーとイエローが左翼、シルバーとホワイトが右翼。
四方に散開してレッドドラゴンを包囲し立ち向かう。
「ヘイヘイピッチャービビってる~?」
レッドが同じく赤いドラゴンを挑発する。
野球は知らなさそうだが、舐めたら殺すの精神でレッドドラゴンが炎を吐く。
俺の前に立ち堂々とドラゴンの炎を浴びて吸い込むレッド。
「ハッ♪ もっと熱くなれよ! ドンドン来なさい!」
ドラゴンを煽りヘイトを集めるレッド。
仲間達がその間に攻撃を行い、ダメージを与える。
暴れ回るドラゴン、体ごと尻尾を回して俺達を吹き飛ばす。
「危ないっ!」
「サンキュー! ピンクは無事? 返事をして!」
俺は空中に吹き飛ばされたレッドを、空を飛んでキャッチ。
「イエローさんが、ドラゴンに飲み込まれました!」
無事だったピンクが報告する。
「マカイジャーのスーツは、ドラゴンの消化液にも耐えられるのだ♪」
「ですが、早めに助けた方が良い事には変わりません!」
グリーンが解説し、ブルーがサーベルでドラゴンを切りに行く。
「あば~~~っ!」
だが、ブルーのサーベルは鱗を削るも肉は断てず尻尾で弾き飛ばされた。
「殿下、マカイカノンの使用許可を!」
「砲撃で風穴を開けるであります!」
「わ、私も頑張りますからお願いします!」
シルバーとホワイトとピンクのの具申を許可。
白、銀、緑、桃の四戦士がマカイカノンを発射する。
砲撃した戦士達と同じ色が並んだ虹の光線が発射される。
だが、ドラゴンも火炎ブレスで対抗しマカイカノンの光線を押し返した!
吹き飛ばされた仲間達、生命反応は感知できたのでこっちは戦闘に集中する。
「ナイト、マカイカリバー貸すから決めて来て!」
「わかった、思いきり飛ばしてくれ!」
レッドの両手剣を借りた俺。
そのまま空中で彼女にジャイアントスイングで、俺はドラゴンへと飛ばされる。
「喰らえ合体技、マカイジャーサークルソー!」
俺自身も回転させて空飛ぶ回転鋸と化して、レッドドラゴンに突っ込む!
レッドドラゴンの方は回避する間も無く、俺によりその首を切断された。
討伐後、レッドドラゴンの胴体を切り裂いてイエローを救出した俺達。
「と、討伐は出来ましたがこれはどうするんですか?」
マスクだけオフにして素顔を出した藤林さんが尋ねる。
「勿論、料理して食うんでさあ♪」
先補迄、レッドドラゴンに食われていたイエローが答える。
「藤林さん、モンスター飯は初めてよね? これは大当たりよ♪」
「レッドさん、食べた事あるんですか?」
藤林さんが驚く、新鮮な反応だ。
「レッドドラゴンは、ステーキにしても鍋にしても美味しいのです♪」
ブルーが軽く解説する。
「これは今日は、ドラゴン五区のフルコース決定なのだ♪」
「高級食材、たまらないであります!」
「藤林さん、我々は仲間に不味い食事を振舞いはしませんよ♪」
グリーン達もウキウキで語る。
「大丈夫、味も健康も問題ないから♪ 栄養価の高い牛肉だから♪」
「ナイトの言う事は本当よ、安心して食べましょうね♪」
「……わかりました、皆さんを信じます!」
藤林さんが覚悟を決めた、魔界に対するレベルが上がったかな?
「……お、美味しいです~っ♪」
小一時間後、藤林さんはレッドドラゴンのすき焼きで魔界飯の美味さに堕ちた。
「ローストドラゴンは、ポン酢がおススメよ♪」
勇子ちゃんがゴールドパンプキン城の大食堂にて、ローストビーフならぬローストドラゴンの皿を藤林さんに持って来て勧める。
「レッドドラゴンの出汁で作ったラーメンも自信作ですぜ♪」
白いコックコート姿のガンスが、丼にラーメンを盛り付ける。
「あ、それは俺も食いたい♪」
「私も頂戴♪」
俺と勇子ちゃんは、珍しいラーメンに興味を惹かれた。
「ザーマス殿、レッドドラゴンのモツ鍋とは日本酒が欲しくなりますな♪」
「ギョリン殿、それは未成年組が帰ってからいただきましょう♪」
ザーマスとギョリンが語り合うのが聞こえる。
こいつら二人、実は飲兵衛なんだよな。
「今日は歓迎の宴会なのだ~♪」
「藤林殿はお疲れ様であります♪」
「あ、ありがとうございます♪ 私、がんばります♪」
同じ釜の飯を食い、藤林さんとも絆を結べたと感じたのだった。
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