第34話 マカイジャーVSはぐれ魔獣

 八人で戦えるようになった、俺達マカイジャー。


 「山羊原君、赤星さん! 魔物狩らせて下さい!」

 「ちょ、何言ってるの藤林さん?」

 「もしかして、魔界メシに目覚めたの?」


 俺と勇子ちゃんは学校の教室で、その八人目である藤林さんに詰められていた。


 「はい、あの時食べたレッドドラゴンは美味しかったですし♪ 他の魔物も、どんどん食べて行きたいです♪」

 「いや、魔物狩るのがメインの仕事ではないんだけど?」

 「進太郎、ここは責任を取って付き合いましょう♪」

 「君もか! この食いしん坊共! わかった! 放課後、魔物肉を狩りに行くぞ!」


 藤林さんの仕事へのモチベと、彼女の忠誠度の維持の為にもやるしかなかった。


 「行きますよ、分身千本手裏剣っ!」


 綺麗に黄色く晴れた魔界の空。


 草原に現れた獲物を見下ろし、マカイピンクが宙を舞う。


 空中で無数の分身を生み出し、全員が光の手裏剣の雨を降らせた。


 「まさに南無阿弥陀仏だよ」


 俺は今、伊賀忍者の恐ろしさの一端を垣間見た。


 「私達はどうやら、とんでもない仲間を得たわね」


 レッドは感心していた。


 「忍者、恐るべしなのだ」


 グリーンは恐怖した。


 「……これは、乱獲にならないのでしょうか?」

 「ブルー、魔界に動物の保護法はございやせんよ」


 ブルーとイエローは呆れていた。


 草原の周りには、ピンクに倒された一つ目の黒い水牛もどきの群れ。


 「これは、回収する方が面倒でありますな?」

 「ピンクさん、もう十分ですよ!」


 ホワイトがげんなりし、シルバーがピンクを止めた。


 「ふう♪ この強化スーツ、忍法も強くなるんですね♪」

 「ピンク、ハイになってるのだ!」

 「そんな事ないれすよ~♪」


 グリーンが指摘した通り、ピンクは酔っぱらたように倒れかける。


 「あぶねえっ!」


 イエローが駆けつけてピンクを抱き止める。


 水牛もどき、カトブレパスの死体の群れはひとまず放置。


 俺達は全員集結し、ピンクの介抱をした。


 イエティ族であるホワイトの膝枕で、ピンクこと藤林さんの頭を冷やす。


 「も、申し訳ございませんでした!」


 小一時間後、回復した藤林さんが俺達にあやまる。


 「いや、これはスーツが藤林さんを過剰に強化してた事が原因だから」

 「むしろ、データ収集の協力ありがとうなのだ♪」

 「力に溺れないよう、精進いたします」

 「大丈夫よ、レベル上げ頑張りましょう♪」

 「はい、もっと魔物を狩って強くなりますね♪」


 藤林さんのスーツは、調整がいるな。


 カトブレパス肉を回収した俺達は、城下町に戻り加工してもらった。


 加工されたカトブレパスの肉は、カレーに変わった。


 ビーフカレーと変わらないカトブレパスカレーを、本国の城の食堂で皆でありがたく食べたのであった。


 交換編入が終わり、教室で藤林さんと勇子ちゃんが握手をする。


 「美味しかったです、カトブレパスのカレー♪」

 「また魔界で狩りをする時は、宜しくね♪」

 「勿論です、日本に魔物肉を持ち帰れないのが残念です♪」

 「いや、それは密輸でアウトだから」


 藤林さんにツッコむと、教室内が大爆笑の渦に包まれた。


 明日から藤林さんは、伊勢にある三重分校に戻る。


 まあ、学校は離れても仲間なのでいつでも会えるさ。


 彼女もマカイジャーだし、渡したマカイチェンジャーには転移機能もある


 気楽に構えていたら、三日後に再会する事となった。


 「殿下! 三重県山中に魔物が出現! 出動要請が!」


 ザーマスがとんでもない事を言い出した。


 「誰だよ、日本に魔物を召喚した奴は~~っ!」


 そうそうホイホイ、召喚魔法とかできる奴いるのかよ!


 「三重県って、藤林さんのホームよね?」

 「皆、藤林さんに召喚魔法とか教えてないよな?」


 勇子ちゃんの言葉に疑惑がよぎる。


 集った仲間達は俺の問いかけに否定する。


 「マカイジャー、緊急出動だ! リュウギョオーで行くぞ!」


 藤林さんが犯人でない事を祈り、俺達は出撃した。


 変身して空飛ぶ銀色の鯱ロボに乗った俺達は、現場へと急行する。


 「目標発見! クラーケンです!」


 ブルーが機内モニターで外の様子を映す。


 今日の敵は、巨大な白いイカの怪物クラーケンだった。


 「センサーに反応アリ、ピンクの嬢ちゃんでさあ!」

 「ピンク殿、木々を飛び回りながら、クラーケンと渡り合っているであります!」


 イエローとホワイトがモニターを見て叫ぶ。


 ピンク色のヒーロースーツを纏った戦士がいた。


 山林を跳んだり駆けたりと動き回り、丸い爆弾を投げて黄色い爆発を起こして獲物の動きを止めては巨大な十字手裏剣を振り回してどこかのゲームの狩人のように一人でクラーケンと戦っていた。


 「よし、シルバー達は変形させてクラーケンを取り押さえてくれ!」

 「私とデーモンナイトでピンクを助けるわ!」

 「了解です、リュウギョオー変形開始!」


 鯱型から人型にロボを変形させて着陸。


 俺はレッドを抱きかかえて北から飛び出し、マカイピンクの援護に向かう。


 「あ、皆さん来てくれたんですね♪」


 俺達を見つけたピンクが通信で語りかける。


 「いや、どういう状況だよ!」

 「わかりません、私も校内放送を聞いて駆けつけました!」


 彼女もヒーローが校の生徒、ヒーロー学校は知己の事件の情報がいち早く伝わる。


 「良かった、ピンクがこいつを召喚とかしたんじゃなくって♪」

 「え、召喚して魔物を日本で買て食べて良いんですか♪」

 「いや、駄目に決まってるだろ!」


 俺達は、ピンクと合流して触手を振り回して暴れるクラーケンと対決する。


 俺達が敵の触手を避けつつとぼけた会話をしている間に、仲間達が操縦する巨大ロボットのリュウギョオーがクラーケンを背後から組み付いて取り押さえに掛かった。


 「やったわ、そのまま抑えてて♪」

 「レッドさん、ナイトさん、触手を切ってイカ焼きにしましょう♪」

 「イカ飯にパスタに何でもできるわよ♪」

 「二人共、食うのは後で考えようぜ!」


 仲間が取り押さえている間に、俺達は散開して飛び上がりクラーケンの触手を各自の武器で切り落とす。


 山林が魔物の血で汚れてしまうが、そこは勘弁して欲しい。


 クラーケンの方も、巨大ロボに取り押さえられ触手は切られて苦しんでいた。


 「ち、こいつもこんな所に来たかったわけじゃないだろうにっ!」


 正直、何者かに召喚されたであろうクラーケンは哀れであった。


 「ナイトさん、可哀想ですけど退治して食べて供養しましょう♪」

 「倒して美味しく食べる事が、こいつへの救いよ!」


 ピンクとレッドがひどいけど、倒すしかないのは事実であった。


 クラーケンを取り押さえているリュウギョオーの燃料も無限じゃない。


 「ごめん! その命、ありがたくいただくぜ! デーモンブリザード!」


 俺は心の中で詫びつつ、空を飛び全身から魔力を解放してクラーケンに向けて鍬を回転させて冷気の竜巻を起こして浴びせる。


 リュウギョオーは、俺の必殺技が発動されたのと同時に敵を離して退避した。


 「すごいです、超巨大な冷凍イカの出来上がりですね♪」

 「流石はナイト、民を食わせる名君ね♪」

 「いや、まずはこのクラーケンに手を合わせて弔おうね?」


 俺の言葉にピンクとレッドは頷き、手を合わせて祈る。


 何者かが魔界の生き物を人間界に召喚したに違いない。


 現場からは犯人の気配は辿れなかったが、いつか探し出してとっちめる。


 人間界と魔界の平和を守る為のヒーローとして、俺は自分自身に誓った。


 それはそれとして、倒したクラーケンの後始末は結局は解体して食肉加工。


 ゴートランド本国からもスタッフを集めて、日本政府や地元の人達とも協力しての魔界料理体験会を開催する事となった。



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