第31話 祭りの終わり

 ヒーロー運動会はまだまだ続く。


 「ナイト~♪ やったわね♪」

 「いや、角生えてて良かったよ♪」


 地面にへばった俺をレッドが労ってくれる。


 リレーで勝てたのは鼻の差ならぬ角の差。


 馬にできて、山羊にできないはずはない。


 「よ、王子様♪ 大丈夫か?」

 「ああ先ほどはどうも、ワールウインドさん」

 「紹介が省けたな、よろしくな♪」

 「こちらこそ♪」


 俺の次、二番手でゴールした緑の装甲の戦士が声をかけて来た。


 風を操る川越のヒーロー、ワールウインド。


 饅頭のローカルCMで見知った顔だ。


 ワールウインドと握手を交わして別れる。


 気が付くと掌に名詞が渡されていた。


 「さっきの、饅頭の人よね?」

 「そうだね、家も何処かとコラボしたいよ」

 「今後のオファーに期待ね♪」


 レッドと一緒に、地下の食堂へ歩く。


 カロリーをエネルギーに変えているので、補給しないといけない。


 我が忠勇なる臣下にして戦隊の仲間達は、第二レースで頑張っていた。


 地下の食堂のフードコートに入ると、俺達はマスクだけオフにする。


 「次は武道会だから、食い過ぎないようにしないと」

 「タンパク質とりなさいよ、私が取りに行く」

 「野菜も食おうぜ?」


 勇子ちゃんは肉好きだ、俺は食事はバランス型。


 「はい、中華セットと果糖よ♪」

 「いや、毒が裏返りそうなもん持って来たなあ?」

 「良いから食べなさいよ、私も同じの食べるから」


 勇子ちゃんが蕎麦屋の出前のように、料理が載ったトレイを持って来た。


 何でもありだなここのフードコート。


 俺と勇子ちゃんは同じテーブルに向かい合い、料理を貪った。


 食後のデザートは果糖水、カブトムシが好きそうな味でした。


 食事を終えた俺達は変身し直して、地上に上がる。


 フィールドには、リングが二つ設置されていた。


 男子のリングと女子のリング。


 男女それぞれのヒーロー新人王を決める舞台だ。


 「夢はでっかく、W受賞を目指すわよ♪」

 「どっちも副賞はハワイ旅行か?」

 「お祖父ちゃん達にプレゼントしたいわね♪」

 「だな、一丁祖父母孝行しますか♪」


 俺とレッドはお互いの手を打ち合い、それぞれのリングへと向かう。


 普通の恋人とは違う、戦う恋人達らしい気持ちの伝え方。


 うちのレッドならやれると信じる、向こうも俺を信じてくれる。


 後はお互い結果を掴むのみだ。


 「デーモンナイト対バーンマッスル、始め!」


 試合開始のゴングが鳴る、相手は黄色い瞳にマッシヴな赤いヒーロー。


 「マッスルファイト!」


 相手が筋肉を膨らませて突っ込んで来た。


 グラップラータイプかな?


 「悪いが付き合わないぜ、デーモンダイブ!」


 マットにできた相手の影の中に潜り込む、異次元殺法で行くぜ。


 金網に激突するバーンマッスルの背後から出て、彼をデーモンチェック。


 等身大化した巨大ヒーローか、なるほど。


 「マッスルアロー!」

 「デーモンホー!」


 振り返りざまに赤い槍を出して突いて来た、こっちは鍬でお相手だ。


 ガンガン来る相手の刺突を鍬の歯を動かして弾く。


 バーンマッスル、戦い方が家のマカイレッドと近いな。


 武器攻撃しつつ、目から火炎弾を射って来る。


 「ちょ、デーモンホール!」


 此方は虚空にブラックホールを開けて、火炎弾を吸い込む。


 すると相手は後退して、槍を仕舞い肉弾戦モードに戻った。


 相手が全身から炎を出して来たので、こちらも体から闇を出す。


 「マッスルアタック!」

 「デーモンチャージ!」


 火の玉と闇の錐がぶつかり合いすれ違う。


 バーンマッスルがマットに倒れる。


 立っているのは俺。


 「……家のレッド並みだったぜ」

 「勝者、デーモンナイト!」


 客席から歓声が上がる、女子の方も家のレッドが勝ったみたいだった。


 バーンマッスルさんに近づき、手を取り起き上がらせる。


 「マッスルファイッ!」

 「あ痛っ! ああ、激励ありがとうございます」

 

 握手を交わしたら、背中を叩かれて気合を入れられた。


 デーモンチェックで会話できるのわかってますから、日本語喋って下さい。


 二回戦は誰だろうと思っていたら、アナウンスが流れた。


 『緊急事態です、お台場と幕張に巨大怪人が福数体出現しました!』


 「ナイト! 急いでお台場に行くわよ!」

 「だな、マカイジャー緊急出動っ!」

 「「了解!」」


 祭りの最中であろうとも、事件とあらば緊急出動。


 空のリングが沈み平地に戻れば、ヒーロー達が動き出す。


 メカを呼び乗り込んで飛び立つ者、巨大化して飛翔する者。


 参加者全員が、悪に立ち向かい人々を救う本業モードに切り替わっていた。


 俺達は混雑を避け釣る為、まずグリフォンを呼び出して乗り込み空へ飛び立つ。


 空中で各自のマシンを呼び出し、グリフォンから乗り換え合体。


 パンプキンオーとリュウギョオーのW出撃で、敵の対空攻撃を潜り抜けて着地。


 「リュウギョオーは消火に当たれ! 敵ロボットはこっちが抑える!」

 「了解です!」

 「イエッサーであります!」


 二足歩行のフグみたいなロボット軍団により、火の海となったお台場。


 リュウギョオーに鎮火を任せ、俺達はパンプキンオーで立ち向かう。


 敵は体の棘みたいな砲身から、バリバリ銃弾をぶっ放して来る。


 「させるか!」

 「フンガー、レッド、火器は抑えて下さいね!」

 「わかってるのだ! 電磁バリヤー!」

 「リュウギョオーのカバーに入りやす!」

 「パンプキンカナボウで殴るわ!」


 俺達は他の生身のヒーロー達と共にレスキュー活動中のリュウギョオーを守る。


 「マッスルファイト! 助けに来たぜ♪」


 防戦に回っていた俺達の元に、イケボな真紅の巨人が降臨した。


 「バーンマッスルさん?」

 「他にも来てるぜ♪」


 掛け声と共に、青や緑の巨人も敵のロボットを攻撃しつつ着地して来た。


 「ご協力ありがとうございます♪」

 「ヒーローは助け合いね♪」

 「あ、ありがたい♪ 頑張りますよ♪」

 「私達も負けてられないのだ♪」

 「おっしゃ、攻めて行きやしょう♪」

 「パンプキンオー、推して参る!」


 巨大ヒーローの増援が来た事で、仲間達も闘志を燃やす。


 「オラッ! 街を壊さないように空へ飛ばして倒すぞ!」


 バーンマッスルさんが、敵の一隊を担ぎ上げて一気に飛び立つ。


 「私達もかっ飛ばすわよ、パンプキンホームラン!」


 レッドの操作で、パンプキンオーが金棒をフルスイングして敵を打ち上げた。


 「ナイスバッティング、パンプキンファイヤーだ!」

 「アイアイサーなのだ♪」

 「射角オッケーです、殿下♪」

 「充填完了、行けますぜ♪」

 「撃たせてあげる、外さないでよ♪」

 「任せろ、発射っ!」


 打ち上げた敵を一気に消し去る為、必殺の熱線砲を空の敵へとぶっ放す。


 パンプキンオーの必殺技で、空に一つ花火が上がった。


 「シルバー殿、こちらも決めましょう♪」

 「ええ、ホワイトは新技をお願いします」

 「了解であります♪ イエティブリザード♪」


 リュウギョオーも、胸を開けてファンを回し冷気を放出して消火する。


 リュウギョオーが火を消した事で、他の生身のヒーロー達が人命救助に向かう。


 「消火完了であります♪」

 「ええ、では瓦礫撤去に参りますよ!」

 「了解であります、戦闘は殿下達にお任せであります♪」


 リュウギョオ組は独自判断で救助活動を継続した。


 「あっちも順調ね♪」

 「ああ、こっちもフィニッシュと行こうか皆♪」

 「残り一体、エネルギーはギリギリですが何とか行けますね」

 「決め時なのだ!」

 「勿体ぶらずに行きやしょう♪」

 「ちょっと待ちな、バーンチャージだ!」


 バーンマッスルさんが、パンプキンオーの肩に手を置く。


 「え、エネルギーが溜まって行くのだ!」

 「これならもう一発パンプキンファイヤーが射てるわ♪」

 「良し、じゃあ巨大ヒーローの皆さんと一緒に行くぜ♪」

 「ロボと巨大ヒーローの合体技、ロマンですねえ♪」

 「ド派手に参りやしょう♪」


 俺達のパンプキンオーとバーンマッスルさんや巨大ヒーローの皆さんとの合体技。


 虹色の光線が最後の敵ロボットを撃破して、状況は終了したのであった。

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