第30話 ヒーロー運動会

 天高く馬肥ゆる秋、食べたら運動しようスポーツの秋。


 変身した俺達は、東京湾沖の人工島内にあるスタジアムにいた。


 巨大ロボが戦っても壊れない、満月寺ギガントスタジアム。


 百人余りが集うヒーロー達の運動会の会場に、相応しい場所であった。


 天気も良く、青空にポンポン花火が上がる。


 平日の昼、俺とレッドは普段なら授業だが選手で大会出場なので出席扱い。


 メジャーからルーキー迄ヒーロー達が集う中、宴が始まる。


 「宣誓、我々はヒーローシップに則り全力全開で戦う事を誓います!」


 何で俺が壇上に上がって、諸先輩方の前で選手宣誓をしなきゃならんのだ!


 万雷の拍手が響き、拳を突き上げての雄叫びによるレスポンス。


 「ほう、彼が噂の魔界の王子か? 元気のいい若者だな♪」

 「ああ、俺達も年だからと負けていられないな♪」


 何だろう、レジェンドな人達の声が聞こえる。


 傍で見ていた大先輩方に、きちんと一礼してから降りる俺。


 ヒーローも体育会的な業界だから、先輩への礼儀は守る。


 「凄いじゃない♪」

 「流石です殿下♪」

 「坊ちゃん、ご立派でござんしたよ♪」

 「我らがプリンスなのだ♪」

 「流石です殿下、女王陛下もお喜びですよ♪」

 「まさか、殿下がこのような大舞台に立たれようとは!」

 「ああ、ありがとう皆。 競技の前から疲れたよ」


 俺も、選手宣誓のヒーローの抽選に当たるとは思わなかったぜ。


 いや、抽選でやるなよ事前に決めて置けよと言いたいが言えない。


 二日かけて行われる、ヒーロー達のお祭りの始まりだ。


 安全にかけては保証済み、一番危険な所が一番安全な理由で。


 第一の競技、五色サッカーの振り分けが巨大モニターに発表される。


 五色のチームにヒーロー達を振り分けて、サッカーを行う。


 この競技では俺達のようなチームのヒーローは、ランダムで代表一人が選ばれる。


 「家の中では俺が代表で青チームか、頑張るぜ♪」

 「私達は客席で応援してるからね♪」


 レッドと拳を合わせてから、俺は試合に赴く。


 ポジションも自動で割り振られ、ウィングと言う端の方のフォワードだ。


 対戦相手は赤チーム、試合が始まりボールを取ったのは赤チーム。


 「ファイヤーッ!」


 ド派手に全身から炎出して突進して来る対戦相手。


 フェニックスのオーラを出しながら、赤い装甲の戦士が走って来た。


 だが、こっちのチームメイトも凄い。


 「甘いぜ、サイクロンスティール♪」


 緑の仮面の戦士が、人間サイズの竜巻となり迎え撃ちボールを奪い前に出る。


 俺も他チームメイトも援護すべく追いかければ、相手からも得点を防ごうと選手達が前に出てボールの奪い合い。


 皆サッカーのルールは守ってるけど、発光やら液体化やら普段は悪と戦う力を演出に変えて超人プレイで観客を魅了する。


 「俺も行くぜ、デーモンダイブ!」


 俺も負けじと忍者の如く、他の選手の影の中に出入りを繰り返しと進む。


 「ボール、いただき!」


 影から出た所でボールを奪い、ゴールへと向かう。


 「ひっ! 何で悪の幹部っぽい人がいるんですか?」


 相手チームのキーパーをしていたピンク髪の魔法少女が、俺の姿を見て硬直。


 「やかましい、こちとら真面目なヒーローだよ!」

 

 キーパーがビビってる間に、ヘディングでゴールにボールを叩き込む。


 ボールを取り損ねた為に、先制点の一点をゲットできた。


 その後、互いに積極的に動きつつ俺達は時間いっぱいまで守備を粘り勝利できた。


 「やったな、デーモンナイト♪」

 「ナイスファイト♪」

 「良い根性してるじゃねえか♪」

 「次もこの調子で行こう♪」

 「ど、どうもありがとうございました」


 臨時のチームメイトとなった初めて会うヒーロー達が、試合後に労ってくれた。


 次の試合は黄色チームに一点差で負けたので、残りは客席で仲間達と観戦した。


 「残念だったわね、得点決めたのに」

 「まあ、目立ったし良いかな?」


 客席では変身を解く決まりなので、勇子ちゃんとコーラ飲みつつ試合を見る。


 次の競技、巨大綱引きは頑張りたい。


 ヒーロー達が再びフィールド上に集まる。


 今度は第二競技、紅白ヒーロー巨大綱引きだ。


 「今度は一緒ね、気張りなさいよ♪」

 「任せてくれ♪」


 俺とレッド達マカイジャーは、紅組に振り分けられる。


 縦二メートル、全長二百メートルの巨大綱を引き合うヒーロー達。


 龍の様な綱を掴み、足を踏ん張り俺達は引っ張る。


 こっちもグリーンやホワイトがいるから安心していたが、甘かった。


 「ぐぬぬぬ~っ! あっちもパワーは半端ないわね!」

 「ああ、向こうもヒーローだからね」

 「負けてたまるもんですか!」

 「おお、その意気だぜレッド♪」


 パワーとファイトが火花を散らす綱引き、出せる力と重さに団結力が物を言う。


 「ナイト、ダブル魔王印ブーストで行くわよ!」

 「わかった! マカイジャー総員、魔力開放っ!」


 他のヒーロー達も、全身から色取り取りのエネルギーを放出して勝負をかける。


 俺とレッドも魔王印の力でブーストするも、相手側も同じようにブーストを掛けているので力量差は互角だった。


 俺達全員のパワーが綱にも流れ込み、両方のチームのエネルギーがぶつかり合う!


 綱の耐久力が限界を越えて中心で切断され、両者引き分けと言う結果になった。


 「悔しい~~~っ!」

 「うん、やり過ぎたんだ俺達は」

 「残念ですが、我々もエネルギーが切れました」

 「お腹減ったのだ~」

 「昼飯前にこうなるって、計算されてる気がするであります」

 「腹が減っては戦はできぬ、飯にしやしょう」

 「壮絶な競技でした」


 レッドは悔しがっているが、マカイジャーの面々は疲労し切っていた。


 昼の休憩時間、地下にある選手用の食堂は盛況だった。


 あちこちのテーブルで変身を解いたヒーロー達が、食事に勤しむ。


 まさに食うのも仕事だと言わんばかりの気迫で、料理を食べたりしている。


 「炭酸抜きコーラとおじやの人もいるのね」

 「肉だけ食べてる人とかもいるな」

 「表の顔が料理人のあっしとしては、興味深いもんばかりでござんす」

 「無料なのだ、食べるのだ♪」

 「フンガー、バランスよく上品に食べなさい」

 「ザーマス殿は健康志向ですな」

 「ギョリン殿は海鮮丼でありますか♪」


 うちの面々は何処であろうとマイペースだ。


 「進太郎、ステーキあげるかっら唐揚げと交換して♪」

 「等価交換とは言い難いが受け入れよう」

 「仕方ないわね? はい、あ~ん♪」

 「価値が爆上がりしたよ♪」

 「私もしたんだから、あんたもしなさいよ?」

 「ああ、喜んで♪ はい、あ~ん♪」


 俺と勇子ちゃんは、ランチの食べさせ合いといちゃつく。


 「殿下も成長なされましたね♪」

 「バカップルなのだ」

 「これが砂糖製造でありますか!」

 「季節が秋から春に戻ったでござんす」

 「臣民としては、王家の安泰を喜ぶ所でしょうか?」


 仲間達の視線が生暖かい。


 俺達は後半のリレー競技や格闘大会に向けて、力を蓄えた。


 食事を終えた俺達は、フィールドに描かれた陸上コースに驚く。


 芝生になったり、陸上のコースになったりと変幻自在だな。


 「私がぶっちぎって来るから、バトン落とさないでよ?」

 「落とさないよ、俺が決める」


 アンカーが俺、第三走者がマカイレッド。


 最愛のパートナーから渡されるバトン、落としてたまるか。


 第一走者から第二走者になり、マカイレッドがコースに入り走り出す。


 レッドの相手は。ファンシーな衣装の魔法少女に金色の狐モチーフスーツなど個性あふれる面々が鎬を削る。


 「カロリー全開、マカイジャーダッシュ!」


 俺がコースに立つと宣言通り、一番で突っ込んで来たレッド。


 「受け取った! 俺が決める!」


 カロリーを使い切ったレッドからバトンを受け取り、俺も走り出す。


 空に使い魔を飛ばして上から俯瞰しながら走る俺、迫って来るのは緑の戦士。


 三番手は赤い馬モチーフの装甲の戦士、負けてたまるか!


 俯瞰は止め、まっすぐ前を向いて突っ走る。


 緑の戦士が追いついて来た。


 「雨にも風にも負けてたまるか!」


 山羊が山野を跳ぶ如く、残りの力をつぎ込みダッシュ。


 俺は角の差で見事、一着で走り抜けられたのであった。

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