街で過ごしながら、魔物を倒す ⑦
「うわっ」
えぐれた地面を見て、俺は声をあげ、青ざめる。
クラが俺を避けさせてくれなかったら、そのまま俺は死んでいた可能性が高い。
それにしても地面がえぐれているのは分かるのだけど、それを成し遂げた魔物が何処にいるのか分からない。
「咲人、フォンセーラ。魔力、凝らす。そしたら感じられるはずだよ」
そんな言葉と共に、また俺の服を咥えているクラが跳躍する。俺の体がふわりと浮き、驚く。それと同時に魔力を込めて、よく周りを見ると――霧に紛れて、見えない魔物がそこにいた。
というかフォンセーラの方じゃなくて、俺の方狙っているんだけど!?
何か狙われる要因でも俺にあるのか、どうなのか……。ああ、でもクラもフォンセーラよりも俺を優先して守ろうとするから俺を狙ってきているのはまだいいか。
それにしてもクラが俺の服を咥えて、動き回るので俺は振動が凄い。揺れているし、若干気持ち悪さがある。
霧の中に紛れている見えない魔物相手にどういう攻撃が効くのかは分からないけれどひとまず魔法を使ってみよう。
そう思い至って、魔法を行使する。まずは火の魔法を向けてみる。が、特にダメージを受けた様子は見られない。というか、霧に紛れているからダメージをどんなふうに受けているのかもいまいち分からない。
火がきかないのは、どういう特性なのだろうか?
そんなことを考えている間にもその魔物は迫ってくる。そう思っていると、魔力の流れが変わった。
「咲人も、フォンセーラもガード! あの魔力、食らわない方がいいかも」
クラからそんな風に言われたので、俺は体を自分の魔力で覆う。
霧の魔物が放出した魔力は、その場に充満している。その魔力は、見ているだけでも頭がくらくらしてくるぐらいに濃い魔力。
「凄い魔力だな」
「うん。濃くて周りに害を及ぼす魔力だよね。これだけ魔力を放出するとあの魔物も疲れそうなのに。それだけ咲人を取り込みたいのかも」
「……取り込みたい?」
「うん。魔物は強い存在を食らって強くなっていったりするから、咲人の魔力はあの魔物にとって取り込みたいものだから」
俺ばかりが狙われているのは、俺の魔力を狙ってのものらしい。
このまま捕まったら、俺が霧の魔物に取り込まれてしまうのだろうか。……絶対に嫌だな。
というか、母さんは例えば俺が魔物に取り込まれて原型を保てなくなったとしても復活させられるのだろうか。神であるならそのくらい出来るか……。
――その魔物は実体が見えないようなものである。霧に紛れている魔力の塊ともいえる魔物。
それをどのように倒すかと考えて、まずは霧の魔物を魔力で拘束し、閉じ込めてみることにした。
このまま魔物が自由自在に動いて面倒な事態になるよりも、行動を制限した方がずっといいのだ。
そういうわけでクラに聞きながら、魔力での拘束を試す。
魔力での拘束を受けたその魔物は、不愉快そうに暴れている。
そういう状況でも、相変わらず魔力が周りを立ち込めているため自分の魔力を解くわけにはいかない。
そのまま魔物に対して、魔法を繰り出してみることにする。
……その時、霧の中に別の魔物が生まれる。それは霧の集合体のような実体が知覚出来るものだ。あの霧の魔物の本体が生み出したものなのだろうか。それは多くの数を生み出せるわけではないらしく、数は少な目だ。
だけど明確に俺に対して敵意がある。その現れた霧の集合体の一匹は、本体の拘束を解こうとしているようだ。しかし、クラに教わって行ったその拘束が簡単に解けるわけがない。
クラの力でその魔物をどうにかすることは出来るだろうけれど、クラは俺に対応をなるべくやらせようとしているようなので自分で頑張ることにする。多分、俺が本当にピンチになったら助けてくれることだろう。
そして、魔法を行使する。
それで分かったのは、火や水といった所謂属性魔法のようなものよりも、ただ魔力の塊をぶつけて攻撃する方が良さそうということだった。所謂無属性魔法みたいなものだな。
「これ、ずっとぶつければ倒せるか?」
「倒せるんじゃないかな。咲人の魔力は量も多いし、特別なものみたいだから向こうも耐えられなさそう」
「……俺の魔力じゃなきゃやばかったりした?」
「あの魔物が取り込めるぐらいの弱い魔力だったら、そのまま力を増幅させただけだと思う。生きている咲人の魔力を取り込めないと判断したから、殺して取り込みたいって思ってそう」
クラにそんなことを言われる。
どうやら俺が生きている状態だと、あの魔物は俺の魔力を取り込むことが難しいらしい。
というかクラの話を聞く限り、魔力が弱いものだったら生きたままあの魔物に取り込まれた可能性があるってことか?
……街の人たちの何人かも既に取り込まれた後なのかもしれない。
そう考えると恐ろしい魔物だと思う。
考えていただけでぞっとした俺は、さっさとこの魔物を倒してしまおうと無属性の魔力をひたすらぶつけつづけた。
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