街で過ごしながら、魔物を倒す ③
「サクト、あの魔物を倒してみましょう」
今日は魔法の練習も含めて、魔物討伐をすることになっている。
フォンセーラとクラも一緒だ。街から出る時に門番に魔物討伐に行くことを告げたら、クラを連れて行くのを心配された。クラは愛らしい猫なので、魔物討伐に連れて行くべきではないのではないかと心配されたのだ。
クラが一度「にゃあん」と鳴けば、結構な確率で周りの者たちが魅了されていた。愛らしく鳴くだけ鳴いて、全然撫でさせたりはしないのがクラらしいところだ。
家に遊びにきた友人たちも可愛らしく鳴いて人懐っこく見えるのに全然撫でさせてもらえないって嘆いていたっけ。クラのことをか弱い生物だと思っている人たちは、クラが母さんの神獣でありとてつもなく強いというのを知ったらどれだけ驚くのだろうか。
今、俺の目の前にいるのは行動は遅いが、見た目が硬そうな魔物だ。亀に似ているかもしれない。
「一定確率で魔法を無効化する能力を持つわ」
「魔法効かないってこと? それ倒しにくそう……」
「一定確率でよ。常にではないわ。どのタイミングで、どの割合で無効化するのかは解明はされていないわ。言ってしまえば数で押し切ればいけるわ」
「魔法を連続して使えない人がたまたま放った魔法を無効化されたらたまったものじゃないなぁ……」
「それは運が悪かったというだけよ」
運が悪かった。その理由で防がれて、それで命を落とすということもあるのだろう。そういうのはやりきれないことだと思う。でもそういう理由で亡くなる人というのはありふれているらしい。
……運が悪いと思える事象に遭遇しても力をつけておけばどうにでもなるだろう。そう考えると改めて頑張りたいなと思った。
フォンセーラの言う通り、その魔物は多くの魔法を繰り出せば問題なく倒せた。事前情報通り一部は無効化されていたけれど。
その魔物が三体ほどいたので倒したのだけど、個体によって無効化した魔法は異なった。一つの属性の魔法だけを無効化するのではなく、一定確率でどんな魔法でさえも無効化するというのだろうか? それはそれで凄まじい体質の魔物だと思う。
例えば、母さんの使った魔法でも一部無効化出来たりするんだろうか。
「咲人、考え事?」
「こういう魔物だと、一定確率で母さんの魔法もはじけるのかなって」
「無理だと思うよ! 博人みたいにきかないのは本当に珍しいって乃愛言ってたもん。神様の使う魔法って本当に防げないものだって乃愛、言ってた。だから、僕と咲人がそういう自分の力ではどうしようもない神様の力に遭遇したら、呼んでって言ってた」
やっぱり父さんだけが本当に特別な存在らしい。
この魔物は一定確率で魔法を無効化するけれど、父さんに関しては常時それらしいから。
……というか父さんはそれだけ特別な体質を持ち合わせているのに、地球生まれというのが面白い。最初からこういう魔法が当たり前の異世界で生まれていたら、その特別性からこの世界で活躍していたのだろうか? いや、正直想像してみたけれどあの父さんがそういう活躍を進んでいるとは思えないな……。
母さんに出会わなかったら、父さんは父さんはそのままただの人間としてそういう無効化する体質とか知らずに死んでいったんだろう。
そういうのが何もかも効かないというのは、この世界で特別なことで。
それだけじゃなくておそらく母さんが作っている父さんの体は特別なものだろうし……。母さんの最愛の夫ってだけでこの世界では本当に特別だろうしな。それでも父さんは調子に乗ったりせずに普段通りなんだよな。
俺は母さんの力に抗えないし、他の神様の力でどうにかなっているものには抗えるかどうか分からない。
だから本当にそういう俺ではどうしようもないものに遭遇した時は素直に呼ぼうと思う。
「神様の力ってそんなに遭遇するもの?」
「普通ならしないって聞いた。でも咲人は博人と乃愛の息子だから、そういうのと遭遇しやすいかもしないって」
「あー……なるほど。まぁ、母さんの息子ってだけで俺、かなり注目浴びているだろうからなぁ……」
母さんがどこまでもこの世界にとって特別な存在だから。遭遇しやすいのかもしれない。母さんに好意的な人ならばいいけれど、そうじゃない神様と出会ったら大変そうだ。
地球よりもこちらの世界の時の流れは速く、こちらでは何倍もの時間が経過している。その間、母さんはこの世界とあまり関わりがなかったわけで、もしかしたら母さんを侮っているような神様もいるのだろうか?
「母さんのことを知らずに侮っている神様っているのかな」
「さぁ? でも乃愛曰く、神様にとっての数百年はあっという間の時間だって言ってた。新しく神様はその期間じゃ生まれないって。だから咲人たちが一番新しい神様になるんじゃないの?」
俺にとっては永遠に思えるような長い時間でも、神様たちにとってはあっという間らしい。
母さんを侮っているような神様があまりいないのならばよかったと思った。
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