街を探して歩いていると盗賊に遭遇した ④


「お、お前は何なんだ!?」



 俺はフォンセーラに聞きながら、盗賊たちに対する対応を進めていった。

 魔法を行使して、盗賊たちを拘束する。それだけでも彼らにとっては未知のものらしく、足をバタバタとさせていた。

 次から次にやってくるのでどれだけ数が居るんだと思ったけれど、俺とフォンセーラの二人にとって問題なかった。




 それにしても何なんだと言われても、最近この世界に来たばかりの普通の高校生……としか言えない。いや、まぁ、母さんが母親な時点で普通とは程遠いかもしれないけれど。

 それだけ俺の魔法が普通とは違うのだなというのは改めて理解する。これでも周りが騒ぎになるような魔法はフォンセーラに言われて使ってないのだけど……。




 華乃姉と志乃姉も同じぐらい魔法が使えるのだろうか?

 俺と違って二人は昔から自分たちが神様の子供だという自覚があったという話だから、もっと魔法が得意なのだろうか?

 とはいえ、同じ母さんと父さんの子供といってもそれぞれ得意なこととか違うだろうから……どうなんだろ?

 次の家族会議の時に聞いてみようかな。










「フォンセーラ。捕まえた人たちはどうやって連れて行くんだ?」

「生かしたままにするなら、拘束したままこの場に置いておくか、連行するかのどちらかね」






 流石にこの盗賊たちを魔法で連れて行くとなると目立ちすぎるから、フォンセーラはそんな風に言っているのだろうというのが分かる。






 このままこの場に放置すれば魔物の餌食になる可能性はあるが、それはそれということだろう。

 盗賊たちは俺とフォンセーラの会話に青ざめた顔をしている。自分の意思で体を動かせない状況でこの場に放置されることの危険性を彼らはよく理解しているのだろう。










「ま、待ってくれ。街まで歩く……。だから置いていかないでくれ」

「このまま此処にいたら――!!」






 これだけ必死なのは、この周辺に危険な魔物などが出たりするからなのかもしれない。

 俺とフォンセーラはこの場所に飛ばされてきたから、このあたりの魔物の状況は詳しくない。けれどこのあたりで活動しているこの盗賊たちからしてみればそういう魔物がいることも把握出来ているのであろう。










「フォンセーラ、どうした方がいい?」

「ちゃんとついてくるのならば連れて行ってもいいと思うわ。ただし少しでも反抗の意思を見せるならば殺した方がいいわ。そのあたりはきちんと脅しておかないと駄目よ」




 フォンセーラはそういうと俺が捕らえているその盗賊たちに近づき、何かを囁く。その言葉を聞いて益々青ざめて、何故か俺の方を縋るように見てくる。脅してくるフォンセーラよりも俺の方が助けてくれると思ったのかもしれない。

 俺は今の所、盗賊たちのことを殺すつもりはない。とはいえ、舐められたままだと大変なことにはなりそうだ。とはいえ、どういう風にするのが対峙する者たちになめられないで済む方法なのか分からなかった。








 相手を威圧するというか、相手から付け入れると思われない態度ってどういうのだろう? 母さんは絶対にそういう態度をされることはないと思う。うん、母さんは怖いしなぁ。下手につついたら絶対に何倍もの報復が来るだろう。少しでも母さんと話せば逆らわない方がいい相手というのがすぐわかるだろう。

 俺も母さんからそういう態度を学ぶべきなのだろうか。なんて、そんなことを思う。


 












 さて、俺とフォンセーラは盗賊たちを引き連れて人の居る村か街に向かうことになったわけである。

 俺とフォンセーラは飛ばされてきたわけで、このあたりの地理に詳しいわけではない。そういうわけで情報収集も盗賊たちからした。盗賊たちからしてみれば「なんで周りの街の情報などを知らないんだ?」と怪訝そうにされた。そのあたりはフォンセーラが冷たい目を向けると黙り込んだが。










 俺たちがその後たどり着いたのは、一つの村である。そこはあくまで寄り道だ。というかこういう小さな村に盗賊を置いていくというのは危険である。その村から大きな街に、盗賊を連れて向かうという報告はしてもらった。

 この世界、伝達技術は地球ほど発展していない。とはいえ、伝書鳩のようなものや便利な魔法具といったものはある。あとは母さんみたいに直接、頭の中に情報を叩き込む系の魔法を使える人もいるのかもしれない。でもまぁ、それだけ魔法が使える人はあまりいないだろうけれど。








 盗賊たちの中で逃げ出そうとしたり、俺やフォンセーラに危害を加えようとした一人もいたのだが……、それに関してはフォンセーラが対処していた。その場に俺はいなかったので、詳しい状況は分からない。とはいえ、殺されそうになったから正当防衛を行うというのは当然のことである。

 村人たちは「そんな危険な盗賊は先に殺していた方がいいのでは?」とフォンセーラに助言していたぐらいだった。






 ただ俺が人を殺すことにためらいを覚えているのを分かっているからか、フォンセーラはそれに首を振っていた。






 ――それからその村を後にしてしばらく歩き、大きな街に到着した。

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