魔法を使ってみたり、魔物を倒してみたり ①

 脳内家族会議後の翌日。

 俺はすっきりとした気持ちで目覚めた。


 はじめての異世界。

 思ったよりも自分が落ち着いていることに俺は驚いた。ただ異世界に放り出されると言う状況ならもっと焦ったかもせない。でも今回は家族も一緒だから、俺は穏やかな気持ちなのかも。




 今日は何をしようか。

 次に家族会議が行われる時に良い報告が出来るように動きたいなと思う。この世界では俺の年は、もう成人している。地球と異世界だと本当に常識が全く違うなと驚いてしまう。




 特に孤児などだと先行きが見えない人たちも多いらしい。この街は女神イミテア様を信仰しているからこそ、そういう孤児は少ないようだ。弱き者に庇護をといった考え方が浸透しているかららしい。

 よっぽど出来た神様なのだろうなと思うと同時に、そんな人が伯母のような存在なのか……といつか会うかもしれない時のことを考えると気後れする。




 母さんは自分のやりたいように生きていて、他人のことなんて全く考えてない。そういう神様と他人のことをよく考えている神様、どちらが多いのだろうか? そのあたりもいつか他の神様に会うことがあったら、分かるだろうか。








 太陽が昇っている時間帯に、一旦街の外に出てみることにする。

 目的は魔法を使ってみること。使い方は母さんから教わっているけれど……何事もやってみないと分からないから。




 街の外に出て、人気のないところを探す。

 ただあまり遠くに行きすぎても戻ってくるのが大変になってしまうかもしれない。それにどこに魔物がいるかも分からないわけだしなぁ。






 それにしても魔物か……。

 実物を見たことがないので、どんなものだろうかと想像してみる。漫画などで見かける魔物だと本当に色んな種類がいたけれど、こういう実際の異世界だとどういうものがいるんだろうか?

 もし対峙することがあるのならば、ちゃんと気をつけないと……。






 生物が周りにいないことを考えてから、俺は魔法を試してみる。

 体内にある魔力を感じ取るところから。うん、なんというか、こういう不思議な力が自分に宿っていると思うと凄く不思議な気持ちになる。

 この力が暴走せずに済んでいるのは母さんのおかげなんだな。






 魔力を、頭で想像している通りに形にしてみる。

 詠唱なんてものは必要ない。――母さんの知識から、この世界では詠唱をするのは割と一般的ではあるらしい。しかしそんなものがなくても魔法は使えるものだと聞いた。まぁ、詠唱破棄して魔法を使う人も数は少ないがいるらしいけれど。あと俺は神である母さんの血を引いているから、魔法は使いやすいみたいだ。


 


 確かに想像した通りの風の魔法が完成した。でも威力は思ったより強くてびびった。だって俺はちょっとした魔法を使ってみようと思っただけなのに、木々が倒れるほどだったのだ。俺が自分の魔力でそれだけのことが出来るなんて思ってなかったから、ちょっと顔が青ざめる。

 魔法って、怖いものだと思った。

 というか、俺の魔力って母さんに制御されているからこそ今はこの程度だけど制御出来なかったら……もっと大変な状態になるってことか? 俺でこれだと、神である母さんや半神である志乃姉や華乃姉の魔法ってどんんあものなのだろうか? 








 母さんが目の前で消えたのとかは、所謂転移みたいな魔法だよなぁ。ああいう魔法を俺も使えるのだろうか。

 でも母さんの知識を見た限り、その転移の魔法に関しては失敗すると大変なことになったりするっぽい。だからこそ、母さんみたいに本当に簡単に位置を移動するなんて出来る人は少ないのだろうなと思った。


 





「ええっと、次はどういう魔法を試そうか?」




 どういう魔法を試してみようかと、考えて一つ一つ試してみる。

 漫画や小説などで見たことのあるような魔法。それが形作られていくことには正直ワクワクした気持ちになった。






 取り返しのつかない失敗はしなかったというより、母さんが俺の魔力が完全に暴走しないようにしてくれているからなんだろうなぁとは思った。







 それにしても魔法の才能って、人族だとそれぞれによって違うらしい。使えない人も多いようだ。

 魔法に長けた種族もいれば、身体能力に長けた種族もいる。この世界には様々な種族の人が多いのだ。母さんを信仰しているような種族もいるっぽい。


 






 魔法の練習を進めた後、大きな岩に座って一息をつく。

 地球で運動をそこまでしていなかったけれど、不思議とそこまで疲れが出ない。これも異世界に来た影響なのだろうか? 母さんは俺の身体が人の枠組みから外れちゃうと言っていたから……この世界にきて俺の身体自体も変化しているのかもしれない。






 そんなことをつらつらと考えていると、がさごそと何かが動く音がする。

 そちらに視線を向けると、見たことのない小さな獣がいる。なんだかちょっと可愛いけれど……、でもこれって魔物?






 じっと見つめると、目が合う。

 次の瞬間、その魔物は俺にとびかかってきた。


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