魔法を使ってみたり、魔物を倒してみたり ②

 慌てて避ける。

 その魔物の爪がえぐった個所が、凄まじいことになっている。

 あれ、俺が食らったらやばいのではないか? と一目瞭然なものである。

 あんなに可愛い見た目なのに、魔物って恐ろしいのかもしれないってそんな悠長に考えている暇はない。




 目の前の魔物の対処をしないと、死ぬまではいかないかもだけど確実に怪我をする。

 俺はなるべくそういう怪我をしない方がいいのだ。父さんに心配をかけることになれば、母さんが暴走する可能性が高い。

 そうならないためにも、きちんと自分で対応できるようにならないと。




 母さんに一人で異世界を見て回りたいと言ったのは俺自身なんだから。



 そういうわけで、その魔物をじっと注視しながら魔法を形成する。



 飛び掛かってこられると、集中力が切れてしまう。

 でもやるしかないので、魔法をなんとか完成させる。




 毛皮のある魔物なので、ひとまず燃やしてしまえばなんとかなるのでは? という単純な思考で燃やしてみた。

 悲鳴をあげながらのたうちまわる様子は落ち着かない。……そのまま魔物が、燃えて灰へと変わる。

 何も残らなかった。その事実に自分の行ったことだったけれどぞっとした。


 




 あと俺の放った炎がなかなか消えなかったことにも怖かった。母さんから魔法の消し方も埋め込まれていたからなんとかなったけれど、そうじゃなかったら大惨事である。

 魔法ってなんというか、ある意味大災害を起こしても仕方がないことなのだと思う。だって普通の火事とかでも大事なのだ。それが人の手で火を出せたりするので本当に気をつけて使わなければならないことなのだと思う。








 というか、あれか?

 こうやって全部燃やし尽くすよりも、素材を取れるようにしていた方がこれからのためになる気がする。冒険者にならないにしても、魔物を倒してそれを売れば旅の資金は手に入るだろうし。

 そういう素材を駄目にしない戦い方ってどうやってやるんだろう?

 最初はひとまず死なないことが第一だから倒せればいいと思うけれど、慣れてきたらちゃんと素材を取れるようにしないと。








 旅をしていくなら料理とか、身の回りのことは自分で出来た方がいいだろうし。……俺、結構、母さんや華乃姉、志乃姉任せになっていたからなぁ。というか母さんは父さんのために料理を毎日作っていて、ちゃんとその辺はやってくれてたし。

 俺はちょっとしたものなら作れるけれど、この世界で自分で一から魔物の解体をして料理をするってなると色々違うし。

 俺が一つの街で永住していくのならば、今まで通り買ったものを調理するでもやっていけるだろうけれど……。

 折角異世界に来たわけだし、一つの所に滞在というより色々見て回りたいからなぁ。

 そう考えるとやらなければならないことも沢山ある。






 街の料理屋とかで、一時的に雇ってもらうのとかもありか?

 でも料理人って下積みが長そうだからなぁ。料理を覚えたいのに皿洗いだけをひたすらやるとかだと、時間がかかりすぎるし。






 そう考えると本などを読んで、旅をするのに適した料理などを覚えていくべきか? こういう異世界って本ってどのくらい流通しているんだろうか? そのあたりもちゃんと調べておかないとなぁ。




 母さんに言えばなんでも知識をくれそうだけど、全部母さんに与えられているのもアレだしなぁ。






 ひとまず、今日はもうしばらく魔法の練習をしておこう。昼ご飯は用意していないから、一度昼には街に戻るとして、午後もまた外で魔法の練習とかしようかな? 

 そう決めた俺はまずお腹がすくまで魔法を使ったり、襲い掛かってきた魔物を倒したりした。

 魔物は魔法を使えば案外すぐに倒せた。しかしまぁ、それはこのあたりにいる魔物が俺でも倒せる程度のものだからというのもあるだろう。








 母さんが与えてくれた知識によると、手を出すと大変だよという魔物がいくつかいるっぽい。なんだろう、人の言葉を喋れるだけの知能があってその名が広まっているような魔物みたいだ。母さんにとってはそういう特別な魔物も他の魔物と変わらない認識っぽいが、異世界に来たばかりで色々と経験が足りない俺だと多分瞬殺されるのでは? と思う。

 一応俺も母さんの子供だから頑張ればなんとかなるかもしれないけれど、そういうのと対峙することはなるべく避けた方がいいだろう。……というか、俺に何かあって母さんが飛んできて、特別な魔物と女神である母さんが戦うとなると大変な事態になりそうだし。




 俺はまだしも、もし父さんがこの世界で誰かに危険な目にあわされたら……母さんの暴走は本当にやばい気がする。父さんもそのことを自覚しているから、危険なところには飛び込まないだろうけれど。




 そんなことをつらつら考えながら過ごしていたら、お昼時になった。

 なので、一度街へと戻ることにする。街に戻ったついでに本屋か図書館のようなものがあるか探してみることにした。








 本屋は一応あったけれど、結構な高額だった。

 あと滅茶苦茶重そう。魔法を使えば漫画とかでよく見る所謂アイテムボックス的なものも使えるっぽい。あとそういう道具もあるっぽいので、まずそれを使えるようになる方がいいのかもしれない。





 昼ご飯を食べて、早速それを試してみたら――上手く制御出来ておらず自分の腕が飛んでびっくりした。なんていうか、切断された。慌てて知識の中の回復魔法を使ったら接着したけれど、本当に心臓に悪い。




 ……と言うか本当、こういうことがあっても俺が冷静なのってやっぱり母さんが俺に何かしたのかもと思った。俺がこの世界で生きやすいように、感覚を麻痺させているというか。




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