十二の面が溶け合ったそれは、完全な球でも無く
さんかくとまるの、次にしかくがくるのだとして、私は、さんかくとまるについてのしかくのようなお話は、それらを超えたところで形をとっていると思うのだ。
四つ以上の平面多角形で囲まれているのかとか、そのうち正しいものは5種類しかないだとか、そういった法則や明快な真理はない、と信じている。
「僕は友達から進む機会をずっと伺っていた。今だってそう。」
両手を器のように広げた中にあった、私の美しい多面体が、揺らいだ!
私は、ひとつ鍵をもって開いて、その先にたくさんの課題をみた。やれば終わる、というやつではなく、(自問自答から逃げ続ける焦燥感を腹に溜め込むことを良しとする場合)誰もやることを強制しないものばかりだった。
(男女の友情は成立しうるのか)
(そもそも性愛は悪なのか)
(同性間の場合は?)
(友情とは)
(一方しか認めていない関係とは)
誰が所有しているんだかわからないため池に、賞味期限切れのパンの耳を投げ込んで、それを吸い込む鯉や鴨を眺める傍ら、貴方と話していた。
先のセリフは前の話題も覚えていない程自然な流れの中にぬるりと現れた貴方が吐き出した塊であった。
それは異物であった。
ため池の鯉も咳き込んでいるようにすら見える。
手の内で揺らぐ物体に対してなし得ない、と言ってしまうのは、まだ、はばかられる。
私は、彼の告解に対してどう思った?
「あなただから駄目だわ。」
パンの耳がなくなってしまった。私はただ、貴方に向き合う。
無数のあなたへ、されど、目の前にいる貴方へ、この言葉をあてがう。
「……少しだけ、気が晴れたよ。」
風が吹くので、曇り空はさらに冷え込んだ。
「大丈夫? マフラー貸そうか、私、家この近くだもの。」
憐れみをかけたのだろうか。今しがた力いっぱいにバットを振り下ろした相手に対して、自分のために私はこういうことを言ったのか。私はそういう人間なのか。
貴方はなびいていた前髪をくしゃっと片手でやって、私を睨みつけた。
「君は、君は……」
彼の中の葛藤を私は無視して打ち切る。弄ぶとか、そういう余裕がこちらにもないことだけは、どうか1人でも多くの皆様に理解してほしい。
「帰ろっか。」
春が遠い。一生来ないのではないかなどと思う。向き合うことで滞留した私たちの関係はきっと凍りついたままかもしれない。
「マフラー、返さなくて大丈夫だから。」
ごめん、というのも違う気がした。無論、また今度近いうちに、も同様に。
言ってくれてありがとう。とも言えない。性愛が友情よりも下等なものかもわからない。
せめて寒空の下に、寒さと貴方を感じることにする。私はそういう人間だった。
(壊れた友情のイメージは泣き出しそうな空と共に)
君が気づいた30のこと のーと @rakutya
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