第3話 タマシイの賞級
『おお秋、勝負してくれるのか。儂は嬉しいぞ。そしたらその台の前に座って、ハンドルの前に手をかざすのじゃ。ハンドルが魂の大きさを測って、魂を削った分球を排出してくれるぞ。』
秋は台に座り、ハンドルに手をかざす。
すると、球がお皿の前に溜まっていった。
お金を入れずに球が出てくる感覚に、秋はゾクゾクとした。ただ、忘れてはならない。
これは秋の魂であり、一球一球も無駄には出来ない。
秋も思い出した様で、気を引き締める為に
頬をバチンと叩いて、自分に喝を入れた。
ただ一つ違和感に気づいた。
ディスに尋ねた。
『ディスも球使うけど、お前の対価は何なんだ?』
ディスは説明不足だったことを陳謝し、秋に話し始めた。
『ん?儂の対価は“魂”。秋と一緒じゃ。
ただ魂の大きさは言わずもなが儂の方が大きい。そして、秋に万が一儂が負けた時、魂を削り過ぎて能力も渡せない様な状態になる事は、避けたい。だから魂は一時的に秋と同じサイズには小さくしているが、魂が削られる分、神としての力は少しづつ落ちていく。
あまりにも削られ過ぎると神の地位は無くなり、人もしくは天使への転生か降格処分が下るから、雇われ神様も楽じゃ無いんじゃよ。
でもな儂自身もイカサマなしで秋と勝負したいんじゃ。』
秋は、神様にも雇われとかそんな人間界チックな単語があるのかと少しディスを憐れんだ。
『ま、兎にも角にも俺が先に確変引いて、
ディスが魂削りすぎないように配慮してやるよ!』
と、負けず嫌いな秋が、宣戦布告した。
『ふん。出来るものならやってみるのじゃな。』とディスも強気なセリフで応酬。
そして、2人の対決が始まった。
『あぁ、この台平均的に15発に一回のペースでヘソに球が入ってるな。まあ現世よりはマシか。ヘソ一発あたりの賞球も一発だから、今流行りの仕様って所だな。』
秋のスタートとしてはまずまずの様だ。
草原の中で2人が台で遊ぶ姿というのは非常にシュールである。
試合開始から1時間経過した。
ディスも秋もいまだに当たりは引けていない。
『演出自体は飽きの来ないものだけど、
こうも赤保留や激アツ演出をスルーするのはきついな。てか、俺の魂の大きさ的にあと何回回せんだろ。一回ディスに確認してみるか。』
秋はディスに尋ねた。
『ディス、あと俺の魂の大きさ的に何回回せる?今で150回転なんだけど。』
『え?やばいね。あと、50回転前後で秋は
消滅するよ。早く当たり引かんとのぉ。』
ディスは余裕綽々と言った様子で話してきた。
『うわぁ、やべぇじゃんかよ。あと50回転で1/319当てるって...。転生先でも俺の引きの悪さは変わらないってか。』
秋は自分の引きの悪さに悲しくなり自虐的になっていた。
けども、ここで野垂れ死ぬのは嫌だ。
心の底から秋を鼓舞する何かが湧き上がってきた。
『よし、俺なら出来る。もうここまで来たらやるしかねえ。』
秋のハンドルを握る手が熱くなってきた。
すると、ハンドルを灯す光が出てきた。
その光はどんどん大きくなり、台ごと光で包まれていった。
ディスはその様子を見て、ニヤリと微笑んだ。
『来たな秋。お前が隠し持っていた真の能力が解放されておる。後はお前次第じゃ。』
『何だこれ。すげえ温かい。まるで日向ぼっこの時に当たる太陽の光みたいだ。気持ちいいな。』
光に包まれた秋はその心地よさに眠気さえ感じてきたが、寝ると消えてしまいそうなので
自分の頬をバシンと叩いた。
すると光の中である声が秋に語りかけた来た。
『秋、いいかい。これからハンドルを回す時に呪文を唱えるんだ。“エミトライセプス”。
これを、唱えれば大当たりまでは濃厚だ。
ただ、確変を取れるかどうかは君の思いの強さが必要。でも今の君なら、出来そうな気がするよ。幸運を祈るよ。』
その言葉を最後に光の中の声は消えてしまった。
『どういう事だ...。今のは誰だ。』
でもそんなこと考える悠長な時間もない。
秋は、早速呪文を唱えることにした。
『いけ、エミトライセプス!!
俺の想い、確変に届けー!!!!!』
すると呪文を唱えた途端、台のへそに球が吸い込まれるように入っていった。
そして、台の中のラスボスを激アツ演出で倒し、大当たりを獲得した。
『本当だ。あれだけさっき外れた激アツ演出で大当たりしてる。さっきの声はほんとうだったのか。』
そして大当たり後の確変突入チャレンジ。
これはラスボスをボタン連打もしくは一撃で倒す仕様になっていて、一撃の方がアツい演出になっている。
秋は台の動きを固唾を飲んで見ている。
『いけ...いけ...アツい演出来い!!!』
秋のアツい思いに反応するかの様に台の演出も激しくなっていく。
そして...
ボタン一撃で倒せ!!が出てきた。
『うぉおおおお!!!行けえぇ!!!』
秋のボタン一撃で、虹色に光る台。
確変を取ることに成功したのだ。
続く
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