第2話 ディスvs秋
『秋、儂とパチンコ勝負してみないか?
儂が勝てばお前が望む能力を授けてやろう。
ただ、お前がもし儂に負けたら...地獄で勤労200年コースへ転生じゃ。』
さすがにこれは無いだろうと思い、秋も激怒した。
『おい、それはおかしいだろ!味方のお前となんで俺は今戦うんだよ。神様ならパパッと能力授けられるだろ!』
ディスは不敵な笑みを浮かべてこう言った。
『いつ儂がお前の味方と話した?確かに儂はお前が哀れになって、あの様な処置はした。
だが、それはお前の運命も試してみただけの事。お前がただ運の悪い人間であれば能力を授けた事も無駄になる。自分で全部決めるのじゃ、掴むのじゃ。神様だからと言って甘えるで無いぞ。生前のお前に足りない物、即ち“掴む力”。ここで運を“掴んで”、自分の未来を切り開くのじゃ。』
秋は悔しいが納得するしかなかった。
『...分かったよ。で、勝負する機種はどれ?」
するとディスは手を挙げ何か呪文を唱え始めた。
数秒後、パチンコ台が2台出てきた。
『秋、勝負するのは“pインサイトモーグ”じゃ。この台は通常確率は1/319じゃが、確変機だが突入は50%、100回の時短が必ずつくので、約27%の確率で引き戻しも可能。この台で先に確変を引いたものを勝者としようではないか。』
『へぇ、オーソドックスな台選んできたじゃん。良いぜやってやろうじゃん。』
秋は生前良く勝利を収めていた(いっても一円パチンコで軽く勝ってたくらいだが)、この台で勝負を仕掛けてきたディスを不憫に思いつつ、勝利を確信した態度を取っていた。
そんな秋の態度を見越してディスは最も重要な事を話し始めた。
『ただし、この世界におけるパチンコの対価は金ではない。魂じゃ。
魂には大きさがあって、生前どれだけの徳を積んだか、どれだけの人に愛されたか、慕われてたか等、人それぞれ大きさにも差は大きくある。ある国の首相は、国民の貧困を救った事が大きく評価され、死後の魂の大きさも非常に大きかった。ある一方、何百人もの人間を殺傷してきた犯罪者は、死後の魂はそれはもう鼻のゴミくらいで見てられんかったわ。この台に球を注ぎ込めば注ぎ込むほど、魂の大きさが小さくなり、最終的には消滅し、天国への道も地獄への道すらも無くなってしまう。平均的にこの台の大当たり時回転数は400回転を超えており、魂の大きさ的にも普通の人間ならば消滅してしまう。お前はましてやヘビーパチンカー。家族にも沢山の迷惑を掛けて挙げ句の果てに死に、悲しませている。魂の大きさ的にも普通の人間の半分の大きさじゃ。
それでもやるなら儂と勝負しようではないか。』
秋はディスの長々しくも重みのある言葉に愕然とした。
さっきまでの勝気な態度ならもう、捨てた。
この物語は俺が主人公なのに、それが薄くなるくらいディスがずっと話している事もそうだが、こんな世界に来ても負けゲーを挑まなくてはいけない自分の不甲斐なさに、涙すらも出ないほど呆れ返っていた。
『俺の魂の大きさは普通の人間の半分...
200回転する頃には魂も消滅って事かよ...。
1/319で200回転での勝率なんて46.6%。
ハマる確率の方が高え。
どうする俺、ここで無能力のままボスを倒すって無理ゲー過ぎるしこのまま野垂れ死ぬか...?
いや、そんな事するわけねえ。
俺はもう過去の逃げまくってた自分が嫌なんだよ。失敗するかもって思っても、何も無い所から何かを生まないといけねえんだよ。
今度こそ生まれ変わって、逃げてた自分とはおさらばしたい。
おい!ディス、この勝負受けて立つ!
負けても泣きべそ書くなよ、パチンカス神様!』
続く
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