第7話居酒屋鳥ひろ

田中は恐る恐る、カエルの大腿部を口に運んだ。

「……結構、イケますね。清水さん」

「そうだろ?弓削ちゃんも食べてみなよ」

弓削はカエルの形が分からない部分を食べた。

「……あっ、これって、鶏の唐揚げにそっくりですね。小骨が多いですが」

「あのね、食用ガエルのエサとして、アメリカザリガニを与えていたんだけど、それが逃げ出しちゃって、どこにでもアメリカザリガニが増えたんだ。ザリガニ食べる?」

と、清水が説明すると、女の子2人はザリガニはさすがに嫌だと言った。

「フランス料理でも使われるのに」

と、清水は不満げだった。

石川は寺島と仲良く笑いながら話をしていた。

山崎は、辛い顔をしてアロエ焼酎を飲んでいた。不味いなら、よせば良いのに。

鳥ひろの大将の奥さんは60代だが髪が金髪だった。

昔は、この奥さんに清水、山崎はお世話になった。

金が無くても、ツケで飲ませてくれたのだ。

2人の出世の話しを聞くと、実の母親より、奥さんの方が喜んだ。


さて、3軒目はどこにするか、清水と山崎は話しあった。

様々な料理を食べて来たが、忘れていた店がある。

「丸八寿司」だ。

ここは、少し高いが味は抜群。

上寿司が、1080円。瓶ビールは770円。看板に書かれた、ツマミは時価。

清水は奥さんにお礼を言って、支払いした。9800円だったので、清水が1人で支払いした。

丸八寿司に向かう途中、山崎はコンビニのATMで金を5万円下ろした。

「なんだ、山崎君、お金あるじゃ無いか」

「シーッ、これはへそくりなんだ。昔は、スロット4号機時代に勝った時の金なんだ。今は打たないけど。競馬で少し儲けたら、この銀行に振り込んでいたのさ」

丸八寿司の店内に入ると、さすがに忘年会シーズン。

2階の宴会場からは、大きい声が聞こえる。清水と山崎は常連さんなので、座敷席を案内された。

これは、実は山崎が2ヶ月前に予約をいれていたのだ。だから、テーブルには「予約席」と、書かれたプレートが乗っていた。

6人は好きな位置に座り、上寿司6人前と日本酒にした。

久保田の千寿にした。

いい加減、6人は酔っ払っていたので、日本酒をスルッと飲んだ。

日本酒が水みたいに飲めるのは、酔っ払った証拠。そして、飲み過ぎてリバースコースなのだ。

日本酒はひやが一番美味しい。ひやとは常温の事だ。

「山崎さん、カラスミって何ですか?」

「おいおい、そんな事も知らないで寿司屋に来たのか?」

「すいません」

山崎は店員にカラスミを注文した。

「田中ちゃん、カラスミってボラの卵そうの塩漬けなんだ。日本三大珍味の一つでね。カラスミ、コノワタ、ウニなんだ。なんなら、コノワタとウニも注文するか?」

「はい。食べてみたいです」

「山崎君、えらい強気だね。まだ、飲めるの?」

清水は、突き出しの和え物を食べならそう言った。

「今日は、ヘパリーゼ飲んで来たんだ。鳥ひろじゃアロエ焼酎オンリーだったし」

しばらくすると、日本三大珍味がテーブルに運ばれてきた。

女の子達と石川は、初めて日本三大珍味と対面した。

清水と山崎は暫く静かに、日本酒を呷っていた。

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