第6話居酒屋千代

前回の飲み会から1ヶ月後の12月の第2金曜日に検査課と総務課の連中と合同で、忘年会が開かれた。

店は、広い和室のある居酒屋千代。

この日は、何組か忘年会を開いていた。

総務課長の前田は、誰も聴いてない1年の反省と来年の抱負を語り、乾杯の音頭は検査課の清水だった。

「スピーチとスカートは短い方が良い。乾杯

!」

検査課の連中は笑っていたが、総務課のお局さんはムスッとしていた。

このお局さんは、若い衆に嫌われていた。

前菜に、オバケが出てきた。

オバケはミンククジラが一番美味しい。

オバケはクジラの尾びれの皮下脂肪だが、それに酢味噌をたっぷり付けて食すと旨い。

それを、ヌタと言う。

検査課と総務課の仲は良くない。

総務課の連中は、酔い方が下品なのだ。

直ぐに管を巻いてるのは、前田。

コイツは清水の後輩だが、飲むと俺の方が課長だ!と言って清水の頭をポンポンと叩く。

清水は、前田の胸ぐらを掴み、

「勘違いすんなよ!前田。検査課に嫌われた総務課長の行き先は清掃課だぞ。駒田常務にお前を推薦してやるから、そのつもりでいろっ!」

前田は顔色変えて、清水に平謝りしたが清水は無視して瓶ビールを飲んでいた。 

お酌するのは、後輩の石川。

石川はニヤニヤしていた。彼も前田を嫌っていたのだ。

居酒屋千代は先代が千代と言う婆さんで、今は孫のりんが板さんの夫と経営していた。

凛の人柄に惹かれて、リピーターが多い。


しゃぶしゃぶがメインだった。

清水はしゃぶしゃぶが嫌いなので、1人川魚の刺し身を食べながらビールを飲んでいた。 「山崎君、そんなにガツガツ食うなよ。今夜は後2軒はしご酒するんだから、飲めなくなるぞ。若い訳でも無いんだから」

と、清水がチクリと言うと、

「清水君、肉は貴重なんだ。うちは、最近肉料理を作ってくれないから、ここで食べなきゃ、どこで食えばいいの?」

「知らねぇよ」

20代の石川に負けないほど、肉を食べた。豚肉なのだが。豚肉はヘルシーだ。

総務課の例の女の子達と、石川、山崎、清水は次の店はどこにするか、話しあった。

哀れ、前田とお局さんは2人で飲んでいた。

日頃の行いが飲み会では、結果が顕になる。さて、1次会のシメは山崎の挨拶で、一本締め。

そこから、キャバクラ班や直帰組がいたが、前回の6人は、鶏料理専門店の「鳥ひろ」にした。

この店から歩いて15分だ。

「前田課長、キャバクラに行きましたよ!清水さん」

と、寺島が言った。

「馬鹿だよな。キャバクラは若い奴らの店だっーの。キャバクラは20代で卒業したよ」

「清水君。オレは先週も゙キャバクラだったよ」

「山崎君、大人になろうよ」

「やなこった。女の子が好きなんだ!」

「それって、セクハラになりますよ!」

と、言ったのは弓削なつき。

「私も弓削さんの言う通りだと思います」

と、田中瞳が言った。山崎はシュンとなった。でも、石川とキャバクラ談義に華を咲かせた。

鳥ひろに到着すると、座敷席は満席で、カウンター席に6人は座った。 

ここは、店主特製の「アロエ焼酎」がある。飲み過ぎの身体に効くらしい。店主の話しに乗せられて、6人はアロエ焼酎を飲んだ。 ほぼ、薬であった。しかし、事もあろうか山崎はお代わりした。他の5人は好きな酒した。

「山崎君、どうしてこんな苦い焼酎を飲むんだい?」 

「最近、胃痛が酷くてね」 

「じゃ、3杯目はオレンジジュースだね」

「……酒飲みたい」 

この夜は、隣同士になった石川と寺島こずえが仲良く喋っていた。清水は邪魔しない様に小さな声で話しをした。

「清水さん。カエルの唐揚げって美味しいの?」

と、田中が尋ねた。

「小骨が多いけど、鶏の唐揚げと変わりないよ。美味しいと感じるはず」

清水は店主に、カエルの唐揚げを注文した。

石川と寺島以外は、カエル料理を待っていた。

「うわっ」

と、田中が言う。

「どうした?」

「カエルの足が、モロ足の形してますね」

「食ってみな」

田中と弓削は恐る恐る、カエルを口に運んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る