第5話割烹料理屋早水
6人の席の前に、キンカンが並んだ。
「清水さん、これ何ですか?」
と、石川が尋ねた。山崎はフンと鼻で笑った。
「鶏の卵の産まれる前のもの。黄色い玉だから、キンカンなんだ」
若い衆は恐る恐るキンカンを口に運んだ。
「清水さん、山崎係長はいつもこんな美味しいもの食べていたんですね?」
と、総務課の寺島が言った。
山崎はビールを飲みながら、
「早く、こういう身分になりなさい」
「無理ですよ〜、だって検査課はエリートしか集まらないんですから。総務課じゃ、出世無理です」
「清水さん。オレって入社試験何点でしたか?」
「えーと、数学が80点台で、英語は満点で、小論文は笑えたな」
「ねぇ、清水君。小論文のテーマって何だったっけ?」
山崎はキンカンをくちゃくちゃしながら尋ねた。
「えーと、『私の職業』だよ。誰だ、入社試験を考えているやつは?」
「それは、人事部の加藤さんだよ」
「加藤さんねぇ。しばらく、飲んでないからなぁ。あの人、武闘派でよく会社で怒鳴っているよね」
「清水君、僕も入ったばかりの頃は加藤さんに怒鳴られていたよ」
「あの人も、検査課で何故か人事部に異動になったしな。あんまり五月蝿いから、当時の大久保課長がトバシたんだと思うけど」
女の子連中はキンカンを食べながら、レッドアイを飲んでいた。
「おい、石川。何を飲んでんだ?」
「コーン茶割りです」
清水、山崎のオッサン2人は、メニュー表を見た。
「お茶割りはあるけど、コーン茶割りねぇ。清水君は何を飲む?」
「赤ワインが不味かったから、僕は緑茶割りにするわ」
「じゃ、オレも」
山崎は店員に声を掛けた。
「緑茶割り2つ」
「かしこまりました」
清水は腕時計を見た。23時を表示していた。
今夜は早水で解散となった。
「清水さん、また、私たちを誘って下さい。LINEの交換しませんか?」
「いいよ」
寺島はこの6人のグループトークを作った。
11月の夜だが、酒のチカラで暑い。
また、タクシーで皆んな帰宅した。
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