第14話 愚将墜つ
不毛
真に不毛である。死体の海では立つ毛一本すらない。
冒輝く率いる騎馬群れが、項覇の軍を食い破る。多勢に無勢の中、項覇は縦深の陣を敷き迎え撃つ。平地のわずかな傾斜が疲弊する冒輝の軍にのしかかり、鈍り、ここぞとばかりに項覇の主力が押し返す。引くことが出来ない両者は共に数を減らしながら朝から晩まで戦い。
万の命を失った。
項覇は破れ歴史から去った。不毛な戦の敗者、世紀の愚将、劉堅と協調して当たれば被害はもっと少なかったと後世の者はいう。
項覇が消え、冒輝が残り戦は続く。
劉堅は四日と空けずに、冒輝と対峙する。
死者の埋葬など碌に進まぬ腐臭漂う平野にて戦いが始まる。
劉堅は乱世を望みこの時に備えていた。東の海への交易船、西方海賊の舟、数々の商船これら全てを戦船と変え、乾坤の一擲を冒輝に浴びせるべく大河を渡った。
古来より最強の武器は将がもつ巨大な鉾や戟、青龍偃月刀など重い馬上の武器であった。
南方の鉄は戦を変えた、雑兵が持つ槍である。槍は先に鉄の刃があり柄は木である、わずかな鉄で軽量で機動性に富む歩兵ができ、長い槍の密集陣形は騎馬に有効であった。
旧来の大量生産の鉄では槍の刃が割れ十分に突き殺すことが出来なかったが、南方の鉄は割れずに刺さるのである。産出される鉄の質、大量の木材燃料と木炭がなせる業であった。南方は高い質で大量に生産できるのである。
両軍は激突する。
冒輝二万に劉堅は一万
勝敗に半日も要しなかった。
南から北へ、冒輝に退路があったことも大きく影響した。
「ゴミを集める場所がなくなれば、国にゴミが残る」
劉堅は冒輝の命を有効に使う術を知っていた。
この機において王位の継承権など無意味、劉惇、嘉皇后、王都は無視された。
なお、劉堅は劉尚と会ったのち、史書に劉尚の名が出ることは無かった。
冒輝はここまで
北部の略奪に味を占めすぎた。
奪い巣に帰る獣では、人に勝てども治めることはできない。
劉堅が無勢で瞬く間に冒輝を退治したことで、民は王が誰かを思い知る。
劉堅は数年をかけて中原を覇して王となり、天の子として世を治め、永きにわたる太平の世を興すこととなる。
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